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創業90周年のご挨拶

平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。おかげさまで、弊社は5月10日に創業90周年を迎えました。大正7年(1918年)創業以来、様々な困難に直面しつつも独立を維持し、今日という日を迎えることができましたのも、ひとえに皆様のご支援とご愛顧の賜物と心より感謝を申し上げます。90年もの永きに亘り完全独立を貫き通してきた会社は金融業界では極めて数少ない存在であり、その中の一社に加われたことを誇りに思っております。

弊社は桑名出身の松井房吉が大正7年に日本橋兜町で松井房吉商店を創業したのが始まりで、弊社の屋号である○の中に六(マルロク)は、創業前に房吉が株仲間六人で匿名組合を設立していたこと(他の五人の株を買取り、創業)、六が末広がりで縁起が良いこと、などに由来しております。戦前は東京株式取引所有数の株仲買人として名をあげましたが、戦争で全てを失い、1949年取引所再開からの正会員として二代目社長松井武の下に再興を果たしました。戦後は好不況の入り混じった相場の中でも一貫して堅実な経営に徹し、規模に比し純資産が極めて厚く、健全で安定性の高い老舗証券会社として評価されておりました。武は戦後40年間ずっとオーナー社長として松井証券の発展にその人生を捧げました。

弊社が大きく飛躍する転機は、バブル崩壊以降の日本経済が危機的な状況にあった90年代に遡ります。他証券会社がバブル期の負の遺産処理に呻吟している中で、世界の趨勢から護送船団行政の終焉を予想し、事業の抜本的リストラクチャリング(再構築)を先駆的に実行したことが、現在の飛躍に結実したと考えております。具体的施策としては、外交セールスの廃止に伴う電話通信取引の確立(93年)、業界初の株式保護預り手数料無料化(96年)、業界初の店頭株手数料半額化(97年)、日本初の本格的インターネット株取引の開始(98年)、業界初の手数料自由化にあわせた株式委託売買手数料提示及び一日定額制手数料体系(ボックスレート)導入(99年)、業界初のアカウント・プロテクション(欧米で一般化している預り資産保護の為の民間保険)導入(99年)などがあります。全て弊社独自に日本初・業界初で発案したものであり、他社の真似事は一切しませんでした。その背景には『お客様が望まない業者の論理にもとづいたサービスやコストを排除する』すなわち顧客第一主義ではない顧客中心主義の経営理念があり、この姿勢を貫いてきたつもりであります。この結果、多くの個人投資家からご支持をいただき、弊社は個人の株取引で所謂地場の中小証券から大手の一角を占める位置に一気に昇りつめ、01年には東証1部に直接上場することができました。新興市場が次々に生まれた頃ではありますが、上場のハードルが高い東証一部に拘ったのはグローバル・オファリングをしたかった為です。海外の機関投資家を株主に加えることにより、上場後、より広範なファイナンスが可能と考えたからです。上場直前期の経常利益30億円、純資産90億円だったものが、上場後増収増益を重ね、最高益は06年3月期の経常利益371億円です。直近08年3月期は相場低迷で経常利益は207億円に減ったとはいえ、純資産は810億円まで拡大することができました。その間、増資は上場時の公募200億円のみで、上場後の純資産増500億円強は全て利益で積み上げたものです。経営成績の基準であるROE(株主資本利益率)も、この数年は15%〜35%、平均25%前後で推移しており、上場企業平均の9%前後を大幅に上回り、欧米企業と比べても遜色ない数字と自負しております。これもひとえに弊社を支持していただいているお客様あってのものと深く感謝申し上げます。

弊社が先鞭をつけたオンライン株取引は当初の予想を遥かに上回る勢いで拡大しました。弊社に追随したオンライン証券他社がこの数年、拡大路線、多角化を指向する中、弊社はそれとは逆の方向、すなわち得意分野に傾注する戦略をとってまいりました。相場は良い時もあれば悪い時もあるからこそ、多角化や規模拡大は経営の安定上必要であるという見方もありますが、弊社の90年の歴史から学び取ったことは寧ろ逆で、経営の安定に最も必要なことは『選択と集中』だということです。組織から個、供給者から消費者、に中心が移る21世紀型ネットワーク社会では、この考え方が益々意味を持つものと考えております。勿論単に脇を絞めるだけではいけません。何よりも企業の社会的有用性責任を果たさなければお客様から支持されません。それこそがCSR(企業の社会的責任)の基本だと考えています。イノべーティブでない企業、他社の真似をする企業は短期的には存在し得ても長期的には存在し得ないと考えております。その会社が世に存在する価値があるかどうかはお客様が決めることであり、利益はお客様からいただくものと定義するなら、その会社の利益率、利益額こそが社会的有用性責任を果たしているかどうかのリトマス試験紙だと考えております。

松井証券は、『顧客中心主義』の経営理念のもと、イノベーティブなサービスを他社に先駆けて提供していくことを経営の基本方針としてきました。90年代以降の弊社の飛躍も、この基本方針に沿って、業界の慣習を打破するような仕組みを提示してきた結果であると確信しております。5月12日からは日本初、おそらく世界初の株式即時決済取引を開始します。これまで個人投資家には認められなかった同一銘柄の一日複数回取引が可能になる画期的なものです。これからも、既存の枠組みに疑問を持ち続け、新たな世界を構築するようなサービスを継続的に提供すべく一層の努力を重ねて参りますので、益々のご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

平成20年 5月
代表取締役社長 松井道夫
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