【投資環境の見通し】 2018年02月
~右肩上がりは一旦お休み~

各市場の見通し

対象インデックス 基本シナリオ 今後3~6ケ月の見通し 2018年の見通し 長期的見通し
国内株式 一旦ピークアウトの可能性
先進国株式 一旦ピークアウトの可能性
新興国株式 先進国を上回る成長続く
国内債券 日銀低金利政策で横ばい続く
先進国債券 米金利上昇の調整後に妙味か
新興国債券 金利水準高く、長期投資向き
国内リート 出遅れた分、投資妙味高まる
海外リート 海外金利上昇一巡後に妙味
コモディティ 金価格は当面ボックス圏か
外国為替 若干の円高リスクに警戒 円高→横ばい 横ばい 横ばい→円高

出所:松井証券予想

★基本シナリオ:短期調整リスクも、中長期は新興国>米国>欧州>日本>ロシアで変わらず。一方、リートに妙味出てきた

【短期】2018年2月上旬に日米株価が急落したが、前年12月以降に新たな材料もない中でも一本調子に上昇した反動ともいえる。2017年の原油価格は1バレル45~55ドルの範囲で推移していたのが急に同65ドルまで上昇したり、リスクオン時は下落しやすい金価格も同時に上昇するなど、1月は多くの市場で過熱感のサインも出始めていた。「過熱して上がり過ぎた分の調整」とみることもできる。そう考えれば、何か想定外の大きなイベントでも起きない限り、日米株価や原油価格が1月の高値に戻る可能性は低いだろう。

一方、米国と中国を中心に世界経済の安定成長が続いており、国内景気、日本企業の業績ともに拡大基調が続いている。日米ともに、このまま一方的に下落し続ける可能性も低いだろう。
結果的に、2月以降しばらくは、一進一退のボックス圏での動きが続くのではないか。

ただし、米国と中国の新車販売やスマホ販売の減速など、景気拡大ペースが一旦減速となる兆しが出始めている。国内では人出不足による人件費の上昇が企業収益を圧迫する事例が出始めているが、今後さらに増えるだろう。「過半数の企業が増収増益」だった2017年よりは、一歩後退となる可能性があり、その面でも株価に再び勢いが付く可能性は高くない。内容によっては、もう一段、株価水準が切り下がる可能性は否定できないだろう。

上記シナリオに対する変動要因(違う展開となる可能性)で考えられるのは以下の項目だろう。

★北朝鮮動向:これまでと違った動きや紛争につながる事件などが起きれば、市場にマイナスショックが走るリスクがある。シリア等の他地域での紛争も極端に悪化すると市場心理に影響することがあるので注意を要する

★米利上げ動向:現時点では2018年3~4月に次の利上げと年2~3回の利上げが期待されているが、利上げ先送りなどが起きると株価下落、金利低下、円高をもたらすリスクがある

【中長期】前回レポート(17年3月)から変更なし。中長期的には、経済規模が世界最大の米国経済がけん引する形で、経済成長率の高い順に、『新興国>米国>欧州>日本>ロシア』という順番に変化はないだろう。2018年3月時点で米国の経済成長は9年目と長期にわたっており、一時的に成長が鈍化する局面はありえるが、基本的に移民を含めた人口増加が続く限り、米国経済の堅調な成長は続くだろう。中国経済は引き続き波乱要因ではあるが、完全な市場経済ではない国家であり、実態がどうであっても、政府がコントロールして現在の年6%程度の成長を維持することは可能だろう。米国と中国の経済成長が続けば、貿易その他のやり取りを通じて他の先進国や新興国にもプラス影響が波及し続け、世界全体の成長が続くだろう。そして新興国は人口増加率が高い上に、新興国全体でみれば所得水準の上昇や産業の高度化なども進むため、先進国を上回る経済成長が続く可能性が高いだろう。

上記の前提に基づき、中長期的には、経済成長率の高い地域の株価上昇傾向が続くのがメインシナリオ。市場金利は、米国が上昇、日本と欧州が横ばい、新興国は成長率が落ち着くことで下落するものの先進国より高い水準を維持するとみる。

株式市場の見通し

★株式市場: 当面は日本と先進国の株価に調整リスク、新興国株は底堅いか

中長期的には、その国の経済成長率に近い動きになると考えられるため、新興国株>米国株>欧州株>日本株>ロシア株という選好順位は、前回レポート(17年3月)から変更はない。短期的には、1月の過熱的な動きの反動もあり、当面は調整色が強まる展開が予想される。米国経済の減速懸念を始め、米国や中国の新車販売やスマホ市場で減速の兆しが見え始めていること、人件費上昇による国内企業業績の圧迫など、市場心理がマイナスに向かうニュースが増えそうなことも考えれば、しばらくは株価回復を期待しにくい。ただし、日本も欧米各国も経済や企業業績は安定した拡大基調にあることから、まだしばらくは世界全体に株価の下値不安は小さいものの、北朝鮮動向を中心にどこかでテロや紛争などの懸念が浮上して株価急落するリスクが常にあるのは2016年、2017年と変わらない。

国内株式

国内経済の成長率の低さを考えれば、中長期的にみた上昇期待は持ちにくい。国内経済の変化が小さい分、海外のマクロ動向の影響を受けて米株価やドル円相場、原油価格が変化するのに合わせて、上昇と下落を繰り返す相場がこれからも続くだろう。数ヶ月から数年単位で「上がったら売り、下がったら買う」取引を繰り返すのが国内株式投資の基本シナリオと考える。

2018年の展望:2016年の米大統領選挙以降、2017年は米国株の上昇に連動する形で上昇が続いてきた。ただし、上昇率は業種ごとにかなりのバラつきがあり、基本的には収益拡大、株主還元引き上げとなった業種・銘柄が上がり続け、収益横ばいまたは低迷+株主還元据え置きとなった業種・銘柄は出遅れ続けた印象が強い。具体的には、原油価格や資源価格の上昇を受けて業績回復が見られた資源株や商社、化学、紙パルプに非鉄、さらには世界的な需要拡大を受けた半導体、ロボット、電子部品、工作機械などのハイテク製造業の上昇率が目立った。東京五輪やリニア中央新幹線、あるいはインバウンド需要拡大に伴うホテル建設など旺盛な建設需要を背景に業績拡大が続く建設株やインバウンド需要を取り込んだ空運の上昇率も高かった。一方で原油高が業績にマイナスとなりやすい電力・ガスを始め、医薬品、陸運、銀行などの金融株と不動産、そして自動車は上昇率が相対的に低かった。

2018年は景気面でも業績面でも安定拡大基調に変化はないと見られるが、2017年実績を上回るペースでの業績拡大は期待しにくい。一方で2月急落後の株価水準も過去十数年からみてかなりの高値圏のままである。為替は2016年平均の1ドル108円→2017年平均112円台と円安に動き輸出関連産業の増収増益に貢献したが、2018年2月現在は再び110円を割り込んでいる(2/16時点で106円台)。金融政策において、市場では日本のマイナス金利政策は変わらず、米国は年2~3回の利上げが想定されているが、その前提で今の為替水準である。景気面でも日米ともに「安定成長」ではあるが「17年よりも加速」という傾向は観察されない。現時点では再び1ドル112~116円の円安に戻る可能性はまだ低く、為替レートが企業業績ならびに市場心理にプラスに働くことも当面ないだろう。米株価につられて再び上昇する可能性は否定しないが、国内材料主導でのさらなる株価上昇はあまり期待できない。数年単位で見れば「上がったら売り」のステージが続いているとみている。

先進国株式

中長期的には潜在的成長力があるが、当面は欧米ともに調整リスクがある。

米国株は2016年11月の米大統領選前の時点で既に史上最高値圏にあったが、2017年はそこからさらに一段と上昇した。その後に、2018年2月上旬に大きく下落したものの、下落幅は1月上昇分が消滅したところで下げ止まっている(2/13時点)。2018年の米国市場では3~4月に次回の利上げがあり、年2~3回の利上げが想定されているが、そのシナリオに変化があるかどうかが当面の注目ポイントだろう。市場想定通りに3~4月に利上げがあれば2017年からの安定成長シナリオに変化なしとして、米株価は安定するだろう。4月以降の企業決算で法人税減税効果が確認されれば再び上昇基調に戻る可能性もありうる。逆に利上げが先送りされたり、利上げしても年2~3回の利上げペースが減速するようだと、株価はもう一段の調整となる可能性もありうる。また、米新車販売やスマホ販売の減速がさらに進む可能性もあり、その場合も株価が一進一退となりやすいだろう。

欧州は、経済成長率でみて「米国>欧州>日本」と緩やかながら安定成長が続いており、米市場に比べて波乱要因は少ない。欧州の中央銀行であるECBは米FRBと同様に資産圧縮の動きを始めているが、景気が安定成長を続けており市場に波乱要因が無いことが前提のはずであり、彼らの金融政策に変化がないことは安心材料と言える。2016年に株価の波乱要因となったイタリアやドイツの銀行不安、英国のEU離脱、難民問題なども現時点では再び問題化する兆しは見られない(もちろん北朝鮮動向と同様、再問題化すればいつでも株価下落要因となるリスクは残されている)。減速懸念のある米国や、米国株につられて上昇していまだ高値圏にある日本株に比べ、下落リスクが相対的に小さいという側面が指摘できよう。

新興国株式

前回レポート(17年3月)から基本シナリオに変更なし。新興国は中国始めいくつかの国で減速懸念があるが、人口増加を背景に先進国よりも高い経済成長が続いており、中長期的には大きな株価上昇が期待できよう。ただし、新興国株式市場は市場規模が小さく流動性も低いのが最大のリスク要因となる。米国を筆頭に先進国市場に資金が集まる局面では、一時的に資金流出が起きて株価が一斉に急落することがある。2016年秋の米大統領選挙後も、米国への期待が高まったことで、新興国売り→米国買いという形の資金シフトが起きて新興国株は一旦下落した。しかし、2017年以降は回復基調にある。日本株と米国株に調整リスクがある中では、相対的にも投資妙味があるのではないだろうか。

★債券市場:国内横ばい、米利上げ、新興国は緩やかな金利低下

国内債券

前回レポート(17年3月)から変更なし。国内金利は、日銀のマイナス金利&長期金利0%誘導政策のため、短期金利も長期金利もほぼ横ばいの推移と見る。複数回の米利上げにより、国内長期金利に若干の上昇圧力がかかるが、日銀金融政策の長期金利ターゲットを市場が-0.1~+0.1%と認識し、実際の長期金利もその範囲内で動いている。日銀のオペレーション能力(金利誘導圧力)を考えれば、もうしばらくは長期金利が大きく動く可能性は低い。銀行など金融機関はこの数年間の低金利で有価証券運用を減らし、銀行だけを見ても直近5年間で余剰資金を200兆円以上も積み増している。債券利回りがプラスとなれば、すぐに買い圧力がかかり、再びゼロ%近辺に押し戻されることが想定される。債券投信価格としては、米金利の動きにつられて短期的に上下するリスクがあり、安全度は決して高くない上に、結果としての横ばい圏の動きが長期化する可能性が高く、投資妙味は極めて低い。

先進国債券

代表的な世界国債インデックスの構成比率は米国30~35%、日本20%強、欧州主要5カ国(独、仏、英、イタリア、スペイン)が30~35%。 日本を除くインデックスなら欧米がほぼ半分ずつで、豪州、カナダや北欧など他の先進国の比率は極めて小さい。したがって、米金利と欧州主要国の金利がどうなるかを見ることが重要となる。

最大の注目点は米利上げペースとなる。米FRBの方針通りに年3回ペースとはならないかもしれないが、年1~2回ペースの利上げは実施されるだろう。一定ペースでの利上げが続くのであれば、長期金利も含めて金利上昇期待が続くことになる。欧州も米金利につられる形で若干の上昇となる可能性が高い。金利上昇=債券価格下落=投信含み益の縮小となるため、先進国債券投信の投資妙味は短期的には低いということになる。ただし、日本と違って欧米の市場金利はゼロ金利ではない(一部の国でマイナス金利はあるが)。債券を保有すれば一定のクーポン収入が見込める。米金利の上昇が一段落すれば債券価格下落も底打ちする可能性が高く、その段階で投資妙味が出てくると考えられる。

新興国債券

前回レポート(17年3月)から変更なし。新興国では、2016年以降、高い経済成長に減速リスクがあることでインド、ブラジル、インドネシアなどで利下げの動きが見られた。2016年秋の米大統領選後に米国への資金集中に伴う資金流出で一時は調整していたが、2017年は回復基調となった。引き続き、人口増加を背景とした経済成長に伴う旺盛な資金需要が続き、金利も高い水準が続くだろう。先進国は低い経済成長と大規模な金融緩和で低金利が長期化している。日本は短期マイナス、長期0.1%が上限、先進国で金利が一番高い米国でも短期1%台、長期も3%を超えていないが、新興国は短期も長期も5%を超えている国が多い。債券投信にとってはそれだけ高い利息収入が加算されるのは大きいメリットだろう。為替リスクや短期的な振れ幅があるが、中長期的に投資妙味が高いという見方は引き続き変わらない。

★リート市場:国内は投資妙味が回復、米利上げは海外リートに下落圧力

リート価格は、保有物件の賃料が上昇するか、高収益物件の追加取得による利回りの上昇、さらには市場金利とリート配当利回りとの利回り差によって決まる。日米ともに不動産市況は堅調だが、どちらも長期金利上昇が足かせとなり足元では価格下落が続いている。国内リートは金利上昇が無い分、価格下落リスクが小さいほか、需給面でのマイナス要因が払しょくされてきており、投資妙味が回復してきている。一方の海外リートは金利上昇が続いている間は価格低迷が続きそうだ。

国内リート

国内の不動産市況は良好な状況が続いており、時価で年間900億円分のリート買い入れを続けている日銀の需給下支え効果も大きい。また、リート全体の配当(分配金)利回りは4%台と、株式(東証1部銘柄平均で1%台半ば)や国債(短期マイナス、長期0.1%以下)よりも高い水準であり、価格下落リスクが小さくなれば投資魅力が高いとみている。

国内住宅市場は、首都圏のマンション販売が2016年から減速しており、新設着工戸数は持ち家、分譲ともに2012~13年の頃の勢いはなくなっている。賃貸住宅市場も首都圏の成約件数・賃料がともに下落基調となる中、貸家の新設着工戸数は高い水準が続いており、市況悪化リスクがある。オフィス市場は全国主要都市の空室率の改善が続き堅調だが、賃料上昇が緩やかで、かつ一部に留まる中、物件価格上昇の動きが目立っている。賃料が上がらずに物件価格のみが上昇すれば、その物件の利回りは低下する。各リートにとっては、首都圏の物件を取得すれば平均利回りが低下するリスクがあり、地方物件取得を増やせば首都圏より空室リスクが高まる。リート利回りの上昇期待は持ちにくくなってきている。ただし、日銀の金融緩和政策により国内金利が横ばいに留まるため、リート利回りとの格差は広がらず、リートの理論価格は下がらないとみている。

2017年の東証リート指数は-10.8%と2ケタの下落となり、日経平均やTOPIXが19%台の上げ幅となったのとは対照的な動きだった。業種別インデックスで見ても33業種中下落したのは電力・ガスのみであり、リートの下落は目立つ動きだった。実は国内リートの不振には上記の需給懸念に加え、もう1つ大きな理由が考えられる。2016年以降、銀行や証券会社の投資信託等の金融商品販売について、金融庁は手数料の高い商品が多いことに加え、毎月分配型の投資信託の販売についても問題視してきた。このため、各金融機関は販売を自粛しがちになり、そうした報道を見た消費者も購入を手控えるようになったと考えられる。結果として、毎月分配型投資信託は解約=資金流出が続いたが、多くの商品は配当利回りが高いリートを多く組入れており、リートの市場売却が増えていた可能性がある。その結果、リートの投資口価格の下落が長期化したと考えられる。しかし、年明け以降は日経平均を相対的に上回る動きが続いている。投資妙味が回復してきた印象がある。

ちなみに毎月分配型は毎月の配当支払いがあるため元本が増えにくく、これから資産を増やそうとする人にはあまり向いてない。しかし、退職金などのまとまった資金を保有している高齢者などで「もうこれ以上増やさなくてよい代わりに、元本をなるべく減らさず賢く使いたい」というニーズにはマッチした商品だと思う。

海外リート

海外リート指数では米国リートの組入れ比率が一番高いため、米国リート市場動向が最重要となる。米国不動産市場は順調な拡大が続いているが、リート自体は米利上げにより配当利回りと長期金利の利回り差が縮まるリスクが高く、価格下落基調が続きそうだ。欧州も長期金利が上昇するのであれば、価格下落懸念が生まれる。海外リートは既にかなり下落しているが、反転の可能性はまだ当分持ちにくい。

★コモディティ市場:当面は下落方向

前回レポート(17年3月)から変更なし。米金利上昇は、原油価格と金価格の両方に下落圧力がかかりやすい。各国の経済が現状維持で、商品需給に変化がないとすれば、価格上昇よりは価格下落のリスクが高い。

原油

基本的な見方に変化はない。原油価格は、2016年11月末のOPEC減産合意を受けて1バレル50ドル台を回復した。しかし、実際に減産が実施されても、原油価格が1バレル50~55ドル程度まで上昇すると、米シェールオイル業者が増産に動き、需給が緩んで再び価格が下落するリスクが常にある。2017年も1~2月は1バレル52~54ドル前後で推移していたが、3月に入り米石油リグ稼働数の増加(シェール増産を示唆)と米原油在庫量の増加が確認されると、原油価格は1バレル50ドルを割り込み、その後は1バレル45ドル~55ドルの範囲内で推移した。その後、17年12月以降、一部のパイプライン停止や米寒波による需要増が意識されて短期的に1バレル60ドルを超える水準まで上昇した。しかし、春になれば暖房需要も一巡するし、米国を筆頭に世界中の稼働リグ数が時間差をおいて緩やかに増加し始めている。引き続き、産油各国の減産合意の行方や米国の需要とシェール増産の動向、あるいは中東産油国の生産動向などに一喜一憂しながらも、需給バランスが回復することで、再び1バレル45~55ドルのボックス圏で推移する可能性が高いだろう。

金

金価格は「安全資産」と考えられており、さらには「有事の金」とも言われ、紛争や経済危機などがあると買われることが多い一方、株式市場や不動産市場が上昇局面にある「リスクオン」時は逆に売られることが多い。ただし、ここ数年のリスクオフ時は金だけではなく「円」も買われる傾向にある。また、金価格は金利上昇時に売られやすく、金利下落時に買われやすい点も特徴だろう。また実需面では、大消費国のインドと中国の需要が強まる可能性は現時点ではまだ低く、最大の買い手である各国の中央銀行の金積み増しの動きも確認されていない。

2016年に英国のEU離脱問題や日米金融政策の不透明感などを背景に逃避資金が流入して上昇した後、11月の米大統領選挙後は典型的な「リスクオン」となり金価格は下落した。しかし、その後は北朝鮮のミサイル実験や核実験のたびに細かい上下動を繰り返しながらも、1トロイオンス1,250ドルを中心に50ドル前後の範囲内での動きが続いた。それが2018年は、年明けから急上昇し、2月時点では同1,350ドル前後の動きが続いている。米長期金利が17年末の2.4%前後から2.8~2.9%まで急上昇したが、景気回復等を背景にしたプラス印象の金利上昇ではなく、財政悪化懸念が浮上しておりマイナス印象の金利上昇と捉えられた可能性があり、ドル売り(=円高)も誘発されている。市場は「リスクオフ」に傾いているため、金価格も上昇基調にあると考えられる。しかし米財政赤字は以前と変わらず、景気拡大も続いている。3~4月に米FRBが利上げに動けば「景気拡大の持続性」への安心感から、金価格も2017年の1,200ドル台に戻る可能性があるだろう。ただし、北朝鮮を始めとする紛争懸念は解決したわけではない点に留意が必要だろう。

その他

2016年秋以降、石炭や銅などの産業用資材価格の上昇が続いている。理由として中国の大量買い付けが挙げられている。中国の経済成長率に変化はないが、依然として年率6%台の高い成長率をキープしている。米国などの先進国やインドや東南アジアなどの経済成長も続いている。かつての「爆買い」とも称された中国の大幅な資源輸入が再燃することはないとしても、各国の資源輸入量が急速に冷え込む可能性も低い。まだしばらくはこのまま高値圏での推移とみておいた方がよさそうだ。

★為替市場:当面は円安に戻る可能性は低そう

外国為替市場は様々な要素で動くが、景気の勢いの差、金利の差が最大の決定要因となる。基本的には、景気が良い方、金利の高い方の国にマネーが集まる=その国の通貨が買われ、景気が弱い国、金利の低い国の通貨が売られる。2016年米大統領選以降の日米を比較すると、米国の景気拡大の勢いが止まらず、米FRBが2015年以降、複数回の利上げを実施、長期金利も2016年9月の1.8%台が2017年は2.0~2.4%台の推移に上昇したのに対し、日本はGDP成長がプラス圏とはいえ0%台の低い成長率に留まり、金利水準も日銀金融政策の影響で短期金利はマイナス、長期金利も0.1%以下の極めて低い水準に留まっている。結果として、米ドルが買われ日本円が売られる形となり、為替レートは2016年夏の1ドル100円前後の円高から米大統領選(16年11月)以降は1ドル110円台の円安が定着していた。

しかし、2018年は風向きが変わったようにも見える。米長期金利が17年末の2.4%台から一気に2.8~2.9%まで急上昇、日米金利差の観点から言えば円安に動くはずだが、逆に1ドル105~106円台の円高に動いた。株価や原油価格も下落し、市場は「リスクオン」から「リスクオフ」に傾いたように見える。過去の「リスクオフ」局面では円が買われて円高に動くことが多く、今回も「日米金利差の観点」よりも「リスクオフの意識」の方が為替市場により大きい影響を与えたと見ることができよう。リスクオフに転じた背景は、1月の株価等の上昇ペースが速くてやや過熱感が生じていた可能性と、米財政赤字拡大に対する懸念の2点だろう。米財政赤字は過去から何年も変わらず、財政赤字拡大の主因となる大幅減税は昨年のうちに決まった話だ。それが1月末になって急に心配になった訳で、事実の変化ではなく市場心理の変化の要素が大きそうだ。そう考えると、市場心理が2017年の状態にすぐ戻るとは考えにくい。

また、中国人民元の緩やかな元安ドル高傾向も続いているが、中国は財政主導での経済成長が続き、2016年夏のような急激な元安株安となるリスクは低いだろう。中国発リスクオフに伴う円高リスクは、現時点では低そうだ。欧州については、緩やかな経済成長が続き、変化の無い間は欧州ECBも金融緩和を続けると予想する。2016年は英国の欧州離脱のマイナス影響や難民に関する懸念などがポンド安、ユーロ安につながったが、その後は特に悪化方向には向かっていない印象がある。変化する要素がない分、今の為替水準が当面維持される可能性が高そうだ。

松井証券ストラテジスト 田村 晋一

京都大学経済学部を卒業後、太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)に入行。米国MBA 留学、外資系大手コンサルティング会社勤務等を経て、UBS 証券、ドイツ証券、バークレイズ証券にて銀行セクター担当アナリストとして豊富な経験を積み重ねる。

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