【投資環境の見通し】 2019年03月
~前半は行きつ戻りつ、後半に期待~

各市場の見通し

対象インデックス 基本シナリオ 今後3~6ケ月の見通し 2019年の見通し 長期的見通し
国内株式 行きつ戻りつ、後半に期待
先進国株式 行きつ戻りつ、後半に期待
新興国株式 先進国を上回る成長続く
国内債券 日銀低金利政策で横ばい続く
先進国債券 米利上げ終了意識で上がらず
新興国債券 金利水準高く、長期投資向き
国内リート 投資妙味もうしばらく続く
海外リート 米利上げ終了で投資妙味復活
コモディティ 金価格は当面ボックス圏か
外国為替 円高リスクに警戒 円高 円高 当面は円高

出所:松井証券予想

基本シナリオ:短期は上下動を繰り返しつつもじり貧を予想。中長期の選好順位は、新興国>米国>日本>欧州(日本と欧州を入れ替え)。リートはもうしばらく投資妙味が続きそう

【短期】2019年前半の市場は厳しい展開を予想

2018年後半、特に12月の日米株価の下落は、米国・中国の景気減速懸念、米中通商摩擦が世界経済をさらに減速させる可能性、米利上げ終了が近づいたこと、数多くの地政学リスクがいずれも解決の方向性が見出せないことなどが主な要因だろう。1月は米アップル下方修正や米FRB議長の発言などを背景に、各市場で乱高下が見られたが、これらも昨年の延長線上の動きと言える。また、2月後半に入り、株価が上昇し、日経平均は21,000円台を回復したが、背景にあるのは米中通商協議の進展への期待。米中経済を始めマクロ面では何も変わっていない。期待のみで上昇した株価は、期待通りにならない場合には再び下落する可能性が高いことを忘れてはいけない。
当面の市場を見る上でのポイントは、中国関連を中心に景気減速を示す統計や企業決算などが出始めていることに加え、前述の懸念事項がいずれもすぐに変化がもたらされる可能性が低いと考えられること。米利上げの終了が意識されることも、市場心理を低下させやすい。2月後半に期待値が上昇している米中通商協議については、部分的な合意や協議延長により期待値が高止まりする可能性がある。しかし、摩擦そのものが簡単に解決に向かう可能性は低く、しばらくすると「実質的には摩擦が解消してない」ことが再認識されて、再び不透明感が強まるリスクがある。また、仮に完全合意されたとしても、既に減速傾向にある米中両国経済の減速が解消される訳ではない。減速幅が縮まるだけだろう。
2019年前半は、新たな変化が出てこない限り、引き続き各国の政府関係者の発言や関連報道に敏感に反応し、乱高下しつつも、徐々にじり貧方向に向かうシナリオを予想する。

※上記シナリオに対する変動要因(違う展開となる可能性)

  • 中国の財政出動:リーマンショック直後のように、中国政府が大規模財政出動をする可能性。経済成長の持続が政権維持の絶対条件である上に、中国の財政状態は日本や先進国と比較して財政出動余地があり、経済成長が現在より減速すれば可能性が高まる
  • ハイテク業界の成長継続:昨年より中国市場とスマホ市場の減速傾向から半導体、電子部品、工作機械・ロボット、さらには自動車関連なども業績下降懸念が台頭している。しかし、データ流通量の拡大、自動車への車載電子部品の増加、世界の工場の自動化ニーズなどは中長期的に続く。タイミングはまだ分からないが、いずれは再び成長路線に向かう可能性がある
  • 消費税増税(10月)前の駆け込み需要:増税後の反動減を懸念する見方があるが、その前の駆け込み需要が実績値として出てくることをキッカケに、市場心理も回復する可能性
  • ラグビーW杯開催→連想で東京五輪関連需要への期待高まる:関連銘柄物色の可能性
  • インバウンド:2018年7~10月に自然災害の影響で低迷した反動で、2019年の7~10月は前年同月比が大幅に増加する可能性がある

【中長期】前回レポート(2018年2月)から日本と欧州を入れ替え

現在は、短期的に米国と中国の景気減速が意識されているが、どちらもマイナス成長に陥る訳ではない。中長期的には、経済規模が世界最大の米国経済と第2位の中国経済がけん引する形で、経済成長率の高い順に、『新興国>米国>日本>欧州』という順番となるだろう。前回(2018年2月)から日本と欧州の順番を入れ替えた。日本は成長率が低いが安定しており、引き続きインバウンド需要や東京五輪需要の下支えが期待できる。一方の欧州は、景気減速傾向が見られる上に、どういう形で決着するにしろ、英国のEU離脱が欧州経済全体にマイナス影響を及ぼす可能性が高い。イタリアの財政問題も少なからず足を引っ張る可能性が高いだろう。日本と欧州の相対比較では、マイナス材料の少ない日本が相対的に優位とみる。

株式市場:日米欧ともに2018年より調整モードが本格化。新興国は長期向けに推奨継続

中長期的には、その国の経済成長率に近い動きになると考えられるため、地域別の選好順位は、新興国株>米国株>日本株>欧州株となる。

国内株式

2019年前半は、材料不足でじり貧の傾向となる可能性が高い。前述の通り、米国・中国の景気減速、ハイテク市場の減速はしばらく続く。4~5月の次回決算発表では、下方修正と慎重な来期会社予想(20/3期)が多いとみられ、株価反転のキッカケはつかみにくい。米中通商協議への期待から2月後半に上昇した株価も、米中減速傾向や企業業績に変化が無いと再認識されれば、再び19,500円から21,000円前後のボックス圏での推移に戻る可能性があろう。
2019年後半は、早ければハイテク市場に回復の兆しが出る可能性や、10月の消費税引き上げ前の駆け込み需要(導入後の反動減があるとしても、消費実績が上がれば、一旦は市場心理が好転しやすい)、10月ラグビーW杯が盛り上がり来年の東京五輪への期待も上昇など、企業業績も市場心理も改善に向かう材料がある。インバウンド需要も、昨年夏以降に自然災害の影響で低迷していた分、特に9月以降の前年同月比が大幅にプラスとなる可能性がある点も材料視されるかもしれない。ただし、いずれかの兆しが見えるまで待つ必要があるだろう。

先進国株式

中長期的に、国内市場を上回る潜在的成長力があるとの見方は、以前と変わらない。ただし、当面の株価は、米国は米中協議、ハイテクIT銘柄と米金利の動きが足かせとなりやすく、欧州は英国のEU離脱が足かせとなりやすい。期待先行で上昇しては、具体的に減速傾向を示すデータを見ては失望売りを繰り返す展開となるかもしれない。
米国株は、2018年中は上下動を繰り返しつつ、12月に大きく下落した。しかし、2019年1月以降はほぼ一本調子で回復基調となり、大きく上昇した2017年の終値(24,719ドル)を既に回復し、2/22には26,000ドル台に到達した。経済と企業業績の減速懸念が台頭したものの、米FRBが利上げを先送りしたことで過度な金融政策への懸念が後退し、米中通商協議の進展への期待も株価を押し上げている。しかし、米利上げの先送りは米国経済が当初想定よりも減速していることが理由であり、米中通商協議は、完全合意の可能性が低い上に、仮に米国に有利な形で合意しても米国経済の減速基調は変わらない。そうみると2月後半の株価は期待で押し上げられている面が否定できない。短期的には調整リスクがあろう。しかし、景気減速といっても、IMFも世界銀行の経済見通しでも、日米欧の先進国3地域で一番高い年率2.9%成長(2018年予想)が、2019年に2.5%に減速するという話である。引き続き日米欧で一番高いままだし、そもそもプラス圏のままである。2017年ほどの上昇とはならないかもしれないが、中長期的にみて、先進国で一番魅力ある市場である点は変わらない。
欧州株は、英国のEU離脱が、実体経済面においても市場心理面においても当面の株価の足かせとなり続ける可能性が高い。米FRBが16年から利上げを始め、17年には量的緩和縮小に動いているが、欧州ECBも18年から量的緩和縮小を始めている。金融緩和政策を縮小しているのは好景気が背景にある訳で、日銀がマイナス金利+異次元緩和を続ける日本よりも欧州の方が景気は強めというのが前回(2018年2月)までの見方だった。直近のIMFと世界銀行の経済見通しは、引き続き年率成長1%前後の日本に対して、欧州は1%台後半と日本より高めのままである。しかし、日本の企業業績は増益ペースが減速したとはいえ過去最高益水準を維持しており、日本独自のマイナス要因は少ない。10月の消費税引き上げも、駆け込み需要+反動減のセットで考えれば悲観するほどではないし、東京五輪、インバウンド、国内インフラ需要(補強、建て替え、リニアモーターカー、五輪関連)を考えればトータルでマイナスは少ない。一方の欧州は、景気減速が顕在化しつつある中、出口の見えない英国のEU離脱とイタリア財政問題という懸念を抱えている。中東からの難民問題も解決までの道筋は遠い。短期的には英国のEU離脱問題、中長期的には日本よりも懸念事項があるという点で、相対順位は「米国>日本>欧州」とみている。

新興国株式:前回・前々回(2017年3月、2018年2月)から基本シナリオに変更なし

新興国は先進国に比べて経済や政治の安定度が低く、一部の国に懸念が生じることが多い。しかし、人口増加や生活水準向上による需要拡大に加えて、低い人件費を背景にした「世界の工場」となることで、先進国よりも高い経済成長が続いている。IMFと世界銀行の経済見通しによると、2018~2020年の成長率予測は、先進国が2%台から2020年に2%割れの予測となっているのに対し、新興市場・発展途上国の成長率は4%台が続く予測となっている。先進国では米中通商摩擦や米国の関税引き上げ、あるいは中国経済減速の影響が懸念されるが、新興国、特に東南アジアは自国の経済成長の押し上げ効果が大きく、先進国経済の減速要因の影響はさほど大きくないと考えられる。中長期的には、大きな株価上昇が期待できるとの見方に変更はない。
ただし、新興国株式市場は市場規模が小さく、流動性が低いことが最大のリスク要因となる。米国を筆頭に先進国の注目が高まった時や、どこかの新興国に懸念が発生したときには、その新興国の経済や株式市場に問題がなくても、一時的に資金流出が起きて株価が一斉に急落する現象が時折発生する。2016年の米大統領選挙後の米国期待上昇時にも起きたし、2018年も、8月にいわゆるトルコ・ショックがあり、トルコと関係ない国も含めて、多くの新興国通貨が売られ、新興国株式も下落した。また、中国経済の減速や米中通商摩擦のマイナス影響が顕在化し始め、中国・香港株は2018年を通じて減速基調となった。
しかし、その後のトルコ情勢の落ち着きや米長期金利低下(マネーは金利の高い市場に戻る)があり、主として米国市場にシフトしていた市場マネーは、徐々に新興国市場に戻りつつある。中長期的にみれば、短期的なショックは逆に新興株式市場の押し目買いの機会となりうることを示している。 2019年の短期的なリスク要因は、米中通商摩擦動向、トルコ・アルゼンチン・ベネズエラの動向、トルコ・ショック時のような米国へのマネー一極集中現象など。しかし、いずれも一度は顕在化したことがある要素であり、今後、何がしかの変化があっても、市場価格へのインパクトは過去よりも小さくなっていると考えられる。世界景気も減速見通しと言ってもマイナス成長に陥る訳でもなく、新興国が先進国を上回る成長を続ける可能性はかなり高いだろう。短期的にみても、下落リスクよりは上昇可能性の方が大きいとみる。

債券市場:国内横ばい、米利上げ終了で長期金利頭打ち、新興国の高金利継続

国内債券:前々回(2017年3月)、前回(2018年2月)と変更なし

国内金利は日銀のマイナス金利&長期金利0%誘導政策のため、短期金利も長期金利もマイナス圏か0%をほとんど上回らない水準でほぼ横ばいの推移とみる。米金利が上昇すれば、国内長期金利にも若干の上昇圧力がかかるが、日銀金融政策の示唆する長期金利ターゲットを市場が-0.2~+0.2%と認識し、実際の長期金利もその範囲内に留まっている。日銀のオペレーション能力(金利誘導圧力)を考えれば、日銀が金融政策を変えない限りは、長期金利が大きく動く可能性は低い。米欧が金融緩和縮小に動き始めているが、日本は米欧よりも経済成長率が低いままであり、日銀が金融緩和縮小に動く可能性はまだ相当低い。
銀行などの金融機関は、この数年間の低金利で有価証券運用を大幅に減らし、銀行だけを見ても、日銀が大規模緩和に踏み切った13年4月以降から直近18年12月までに余剰資金(主として日銀当座預金を含む現金預け金)を200兆円以上も積み増している。債券利回りがプラスとなれば、すぐに銀行などからの買い圧力がかかり、再びゼロ%近辺に押し戻される展開が予想される。債券投信価格としては、米金利の動きにつられて短期的に上下するリスクがあり、安全度は決して高くない上に、価格自体は横ばい圏の動きが長期化する可能性に変化は無い。短期的、中長期的のいずれの面からも投資妙味は極めて低い。

先進国債券:低利息ながら元本割れリスクの低い安定運用向けの環境に

株式でもそうだが、金融市場の世界シェアは、GDPや人口とは全く異なることを念頭に置いておく必要がある。債券市場の残高シェア上位は借金大国、すなわち米国と日本が上位となり、欧州でもGDPでは英独仏より小さいが債務が多いイタリア・スペインのポジションが大きくなっている。代表的な世界国債インデックスの構成比率は、米国30~35%、日本20%強、欧州主要5ヶ国(独、仏、英、イタリア、スペイン)が30~35%、日本を除くベースの世界国債インデックスならば欧米がほぼ半分ずつ。他の先進国である豪州、カナダや北欧などの比率は極めて小さい。したがって、米金利と欧州主要5ヶ国の金利がどうなるかを見ることが重要となる。
一番影響の大きい米金利については、米景気の減速傾向を受け、米FRBが15年12月から段階的に進めてきた政策金利の引き上げを当面見送りする方向となっている。その結果、2018年中に3%を超えたこともあった米長期金利は2/27現在は2.6%台まで低下してきている。米景気減速といってもマイナス成長となる訳ではないし、過度に懸念する必要はないとみるが、金利が上がりにくくなっていることは留意しておくべきだろう。
欧州でも景気減速が顕在化している。ECBは2018年に金融緩和の規模縮小に動き始めたが、景気減速が見えている以上、さらなる緩和縮小には動かないだろう。利上げ・金融緩和の縮小は、金利上昇をもたらしやすいが、現時点(18年2月後半)では、その可能性は低いだろう。
しかし、投資魅力が全く無い訳ではない。基本的に債券市場は株式市場よりも価格変動が小さく、大幅な上昇は期待できないものの大幅な下落のリスクも株式に比べれば小さい。そして、日銀の金融政策により短期金利がマイナス圏、長期金利も0%前後(振れ幅0.2%程度まで)にロックされている円市場と比べれば、欧米ともに金利がプラス圏で、円金利より高い金利水準が続く可能性が極めて高い(一部の国でマイナス金利があるが、欧州全体の平均値は日本を上回るだろう)。金利がプラス圏ということは、債券を保有すれば一定のクーポン収入が見込める。債券投信においては、一定の配当が見込める点も投資魅力となろう。

新興国債券:前々回(2017年3月)、前回(2018年2月)と変更なし

新興国は人口増加と生活水準向上を背景とした経済成長に伴う旺盛な資金需要が続き、中長期的に高い金利水準が続くとの見方に変更はない。先進国は低い経済成長率と大規模な金融緩和で低金利が長期化している。日本が短期マイナス、長期も上限0.2%、先進国で金利が一番高い米国でも長短期ともに2%だが、新興国は短期金利も長期金利も5%を超えている国が多い。債券投信にとっては、高い利息収入が加算されるのは大きいメリットだろう。中長期的にみれば、債券投信の中で一番魅力が高い投資対象との見方に変化はない。
ただし、新興国債券市場は、株式市場と同様に先進国債券市場と比べて市場規模も流動性も極めて小さいことが最大のリスク要因となる。政情不安や財政不安を抱える国が多く、一旦懸念が生じると、関係ない国も含めて新興国債券市場全体から資金流出が起きたり、新興国通貨安となったりすることが起きやすい。直近の事例では、これも株式市場と同様だが、2016年の米大統領選挙後や2018年8月のトルコ・ショック時の米国市場への資金シフトが挙げられる。しかし、どちらのケースでも、新興国債券指数は数ヶ月以内に回復している。先進国を上回る金利水準をベースとした潜在的成長性を示すエピソードだろう。
2019年の新興国債券市場について、現時点(2018年2月末現在)での想定を超える波乱要素は無いだろう。もちろん、昨年までに市場に影響を与えてきた、北朝鮮、ベネズエラ、アルゼンチン、あるいはイランやシリアなどの中東動向、ロシア、中国などのいわゆる地政学リスクは、どれも解決の見通しは見えていない。しかし、過去に想定された最悪シナリオにも至っていない。そして新たな地域の問題が出現する兆しもない。既に市場に認識されている懸念は、既にそれなりに市場価格に反映されている可能性が高く、その観点からみれば、短期的な新興国債券価格の波乱リスクは小さいだろう。

リート市場:国内は投資妙味続く、海外リートは米利上げ打ち止め意識で妙味復活へ

リート価格は、保有物件の賃料が上昇するか、高収益物件の追加取得による利回りの上昇、さらには市場金利とリート配当利回りとの利回り差によって決まる。日米ともに不動産市況は堅調だが、2018年までは長期金利上昇(期待を含む)が足かせとなって、投資口価格が低迷してきた。しかし、国内リートは最大の需給マイナス要因だった2017年の毎月分配型投信解約ラッシュが一巡して、2018年以降は投資口価格の回復が続いている。海外リートは、米FRBが2015年12月以降、年数回の利上げを続けていたことで敬遠される傾向にあった。しかし、2018年後半以降は米長期金利が3%前後をピークに下降し、2018年2月後半は2.6%台に留まっているし、米利上げも先送りされつつある。そのため、海外リートの投資妙味も回復しつつあると考えられる。
ちなみに、業績変化のある企業業績と比べて、リートの収益は変化がかなり小さく、投資口価格の変動も株式と比べれば小さい。したがって資産を大きく増やそうとする人は、あまり魅力を感じないかもしれない。しかし一方で、分配金利回りは、国内・海外ともに株式の配当利回りよりも高く、退職金などのまとまった資金を保有している高齢者などで「もうこれ以上増やさなくてよい代わりに、元本をなるべく減らさず賢く使いたい」というニーズにはマッチした商品だと思う。

国内リート:中長期的魅力は健在。短期では株式低迷時の代替投資としても活用を

国内の不動産市況は良好な状況が続いており、時価で年間900億円分のリート買い入れを続けている日銀の需給下支え効果も大きい。また、リート全体の配当(分配金)利回りは安定的に4%台と、株式(東証1部上場銘柄平均で2%前後)や国債(短期マイナス、長期0%近辺)よりも高い水準であり、価格下落リスクが小さいことも含め、投資魅力が高いとみている。
東証リート指数の年間騰落率は2017年が-10.8%と下落したが、2018年は+6.7%と日経平均とTOPIXが2ケタの下落となる中でも上昇した。リートの業績は安定しており、2017年も2018年も緩やかな増収増益傾向にある。国内リートが国内株式と異なる動きとなった理由は、2017年に毎月分配型投信の解約ラッシュがあり、それらの投信に多く組み込まれていた国内リートに売り圧力がかかり続けた影響が大きい。そして2018年は、その解約ラッシュが一巡したことで、反動から投資口価格が回復したと考えられる。
国内リートの運用対象不動産の中で、一番比率が高いのがオフィスビルだが、特に東京中心部の比率が高い。オフィスビル大手といえば、三菱地所、三井不動産、住友不動産を連想するかもしれないが、彼らはオフィスを保有する大手であり、オフィス賃貸相場の情報を発信している訳ではない。東京都心5区の市況をメインに、全国主要大都市(人口100万人以上)のオフィス市況をチェックするには、オフィス賃貸仲介大手の三鬼商事、三幸エステート、外資系のCBREのレポートをチェックするのが基本となる。メディアの記事も彼らの月次レポートを報道している。大都市のオフィス市況はここ数年好況が続いており、空室率は過去最低水準のままである。賃料の上昇は海外に比べれば緩やかだが、少しずつ上がっている。まさに順調、堅調という状況が続いている。全国の人口は減少しており、都市部でも減少しつつあるが、より快適かつ効率的な職場環境を求めるニーズは継続しており、オフィススペース需要の拡大はまだしばらく続きそうである。
リートの運用対象不動産は、オフィス以外にも住宅、商業施設、ホテル、物流施設などがある。最近は病院や介護老人ホームなどのヘルスケア施設も組み込まれるようになった。住宅市場は首都圏マンション販売が2016年から減速しており、新設着工戸数も持ち家、分譲ともに2012~13年の頃の勢いは無い。賃貸住宅市場も、全国の住戸の空き家率が10%を大きく超える状況では、なかなか期待は持ちにくい。ホテルはここ数年のインバウンド需要の急拡大をみて、各地で一気にホテル新設ブームが起きており、東京地区では需要増加ペースを上回るホテル部屋数増加により、稼働率が必ずしも好転しない状況が続いている。商業施設はテナントの売上に連動する賃料契約も含まれており、消費動向の影響を受けるが、国内消費は堅調なものの力強さは感じにくい。物流施設はネット通販や事業会社の物流アウトソーシング拡大に伴い、大型かつ高機能の物流施設の新設が続いているが、作り過ぎを懸念する声や、最新の物流施設へのシフトで既存の古い施設の空室懸念もある。
不動産市況全体を見ると、オフィスと物流施設以外はじり貧傾向にあるように感じるが、リートに関しては、別の見方をする必要がある。各リートは、数多くある物件の中から、空室率が低く、収益性の高い物件を選別して取得するため、例えば同じ東京都心部のオフィスを比較してもリート所有物件の平均の方が市場平均より空室率が低く、運用利回りも平均より高くなる傾向にある。したがって、不動産市況が悪化しても、利回りや空室率などの条件が悪化しにくい。もし大規模な不動産不況が来たとしても、リートの利回り低下はかなり遅行する可能性が高い。その観点からみると、国内リートはもうしばらく安定的に推移する可能性が高いとみている。

海外リート:中長期的な投資魅力が回復。米不動産市場が堅調なうちは魅力大

海外リート指数は、米国リートの組入れ比率が一番高いため、米国リート市場動向が最重要となる。米国不動産市場は順調な拡大が続いているが、米国リートは2015年12月に始まった米FRBの利上げと米景気拡大を背景にした米長期金利上昇が続き、投資口価格の低迷が続いていた。しかし、米景気減速や米利上げの先送り傾向などが見られたこともあり、2018年秋には3.2%台まで上昇した長期金利も徐々に低下、2月後半は2.6%台で推移している。米国の不動産市況の好調さは変わっていないことから、リートと長期金利の逆相関を考えれば、米国リートの投資妙味は回復基調にあると考えられる。不動産市況の堅調さと長期金利低下は欧州市場も同じ傾向にあることから、世界リート全体としても、投資妙味回復が続くとみている。

コモディティ:当面は落ち着いた動きか

商品指数の対象資産の構成割合は指数によりかなり異なるが、大きく分けて原油などエネルギー(30~60%)、金や産業用鉱物を含めた金属(15~35%)、農産物(20~35%)で構成されている。
原油価格は世界景気とOPECなど産油国の生産動向、金価格は需給よりは米金利、米ドル、そして世界の市場心理で動きやすい。産業用金属は世界最大の輸入国である中国の景気動向、農業は生産国の天候にも左右されるが、こちらも農産物輸入が急拡大しつつある中国の景気動向の影響を受けやすい。

原油

基本的な見方に変化はない。現在の主な原油価格の材料は、価格上昇要因側が産油国の減産、米国と中国の好景気継続による需要拡大期待。価格下落要因側が、原油価格が上昇すると増産に動く米シェール業者の稼働リグ数、米国の経済制裁を受けていたイランの輸出再開、米国と中国の景気減速による需要減退、参考としての米国原油在庫量の増減。
原油価格(米WTI)は、2016年11月末のOPEC減産合意以降に、1バレル50ドル台を回復した。その後は上記の上昇側要因と下落側要因が綱引きする形で推移してきた。2018年は年前半に上昇したが、米中両国の景気減速や米中通商摩擦によるさらなる景気落ち込み懸念から11月以降に下落した。しかし、2019年に入ると回復傾向にある。1バレル50ドル台は多くの産油国にとり、不満の少ない水準と見られ、この水準を維持するために産油国の減産合意は継続されるだろう。一方で、米中両国がけん引する世界経済は想定以上の急減速となるリスクは小さいが、再び回復基調となるには時間がかかるだろう。結果として、需給バランスが保たれることで、再び1バレル45~60ドルのボックス圏で推移する可能性が高いだろう。

金価格は「安全資産」と考えられており、さらには「有事の金」とも言われ、紛争や経済危機などがあると買われることが多い一方、株式市場や不動産市場が上昇局面にある「リスクオン」時は逆に売られることが多い。また、金価格は米ドルと米金利との逆相関の関係が知られており、米ドル高/金利上昇時に売られやすく、米ドル安/金利下落時に買われやすい。また実需面では、大消費国のインドと中国の購買意欲と各国の中央銀行の外貨準備としての保有増減が影響する。
2018年の金価格は、米金利上昇を背景に下落傾向にあり、8月のトルコ・ショックで米国市場へのマネーシフトが起きてさらに安値となったが、11月以降はマネーシフトの一巡と、米長期金利上昇の一服(逆に下落)により、上昇基調となっている。中国・ロシアの中央銀行が米国リスク回避から米債売り、金買いを進めているとのニュースも価格上昇要因となっているだろう。
これらの要因・背景は短期的に落ち着いており、当面の金価格も大きな変動は予想されない。ただし、米国景気減速がさらに進めば、米ドル安・米金利安から金価格がもう一段上昇するリスクがあるかもしれない。

その他

かつては「爆買い」と言われた中国による輸入拡大で資源価格の高騰が続いていたが、中国経済の減速傾向から2015~16年は下落、そして2017年以降に中国の輸入が再び増加すると資源価格も上昇していた。2018年後半は再び中国の景気減速観測から価格が少し低迷している。中国を含めて世界減速が緩やかに減速傾向を示す中では、資源価格が再び急騰する可能性は低いだろう。しかし中国経済は依然として年率6%台の高い成長率をキープしている。インドや東南アジアなどの経済成長も続いている。したがって各国の資源輸入量が急速に冷え込む可能性も低い。したがって、産業用資源の価格はボックス圏の推移となる可能性が高そうだ。

農産物は、世界人口の増加に伴う需要増と農業生産拡大の需給バランスに加え、生産国の天候や疫病の有無などに左右される。近年は中国の輸入拡大による価格上昇圧力が感じられた。しかし2016年以降は、中国経済が拡大ペースを緩めたこともあり、農産物価格は全体として落ち着いた動きとなっている。ただし、2018年後半は、中国のさらなる景気減速に加え、米中両国の報復関税の対象に農産物も含まれたことで中国の輸入が一時的に縮小したことなどが影響し、価格は下落基調となったが、直近では中国側の代替輸入先も確保できたことで、価格も回復、落ち着いた動きに戻っている。当面の農産物価格に大きな変動リスクは見当たらないが、長期的には、世界人口増加が続くことで、緩やかな価格上昇圧力がかかりやすい点留意が必要だろう。

為替市場:円高注意報(警報ではない)

外国為替市場は様々な要素で動くが、景気の勢いの差、金利の差が最大の決定要因となる。基本的には、景気が良い方、金利の高い方の国にマネーが集まる=その国の通貨が買われ、景気が弱い国、金利の低い国の通貨が売られる。
2016年米大統領選以降の日米を比較すると、米国の景気拡大の勢いが止まらず、米FRBが2015年以降、複数回の利上げを実施、長期金利も2016年9月の1.8%台から2017年は2.0~2.4%の範囲に上昇したのに対し、日本はGDP成長がプラス圏とはいえ0%台の低い成長率に留まり、金利水準も日銀金融政策の影響で短期金利はマイナス、長期金利も0.1%以下の極めて低い水準に留まっている。結果として、米ドルが買われて日本円が売られる形となり、為替レートは2016年夏の1ドル100円前後の円高から米大統領選(2016年11月)以降は1ドル110円台の円安が定着していた。
しかし、2018年に入ると米景気に減速傾向が見られ始め、年後半は米中通商摩擦のマイナス影響も加わるようになった。米長期金利は2018年12月に急落、2019年2月後半は2.6%台の推移となっている。米FRBも利上げの先送りを表明している。日米金利差が開かないことで、金利差拡大を背景とした米ドル買い/円売り→円安の前提が崩れる可能性が出てきた。徐々に円高に振れるリスクが高まっている。
2018年は8月のトルコ・ショックに連動した新興国通貨安とユーロ安が起きた。米ドルへのマネー集中がみられたが、同時に円もある程度買われたとみられ、ドル円間では大きな変化は見られなかった。トルコを始め、アルゼンチンやベネズエラなどの財政不安のある国の状況は特に変わっていない。つまり改善の兆しがある訳ではないが、トルコリラ安につられた他の新興国は、全く異なる状況であり、東南アジアなどは米中通商摩擦影響があっても自国の人口増加や生活レベルの向上、産業高度化を背景に高い経済成長を続けている。新興国通貨も一時の急落から回復基調にある。
中国人民元は緩やかな元安ドル高傾向が数年続いた後、2017年に1ドル6.9元台から6.2元台まで元高が進行したが、2018年は再び元安に転じ、2018年11月には1ドル7元目前の水準となった。その後は、米中通商協議の進展への期待から再び1ドル6.6元台の元高に戻っている。おそらく米中通商摩擦は長期化する可能性が高く、報道や発表ごとに元レートが揺れ動く可能性があり、注意を要する。
ユーロ/ポンドは、2016年の英国国民投票でのEU離脱決定で急落し、大きく円高ユーロ安となったあと、一旦は1ユーロ135円近辺まで回復した。2018年に入り、欧州経済の減速と英国のEU離脱交渉の混迷から再び不透明感が強まり、2019年2月後半は1ユーロ125~126円台で推移している。英国側が思い描くような英国に不利の無い形での離脱で合意する可能性は極めて低いが、英国のEU離脱がどういう形になるにせよ、英国もユーロ圏もそれなりの混乱が予想される。2019年は円高ユーロ・ポンド安に傾くリスクに警戒したい。

松井証券ストラテジスト 田村 晋一

京都大学経済学部を卒業後、太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)に入行。米国MBA 留学、外資系大手コンサルティング会社勤務等を経て、UBS 証券、ドイツ証券、バークレイズ証券にて銀行セクター担当アナリストとして豊富な経験を積み重ねる。

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