純資産の拡大に応じて、「再生」にもフォーカス。
―マクロ経済の情勢などに応じて、運用方針を変更することがありますか?
私たちの運用方針は自由奔放で、その点が「ひふみプラス」のよさであり、わかりにくさでもあると思います。「ひふみプラス」の場合、ベースとなっているのは日本の中小型グロース株で、その中でもニッチな分野で成長を遂げる地味で地道な“よい会社”を厳選しています。
もっとも、どれほど“よい会社”に投資したとしても、それだけで良い運用成果が得られるとは限りません。市場の情勢に応じて運用のスタイルを柔軟にシフトし、現金比率を高めたり、全体相場が活況な局面では大型株にも手を広げる等しています。こうしてベータ(個別証券のリターン÷市場全体のリターン)をコントロールすることによって、私たちの投信は暦年でTOPIXを上回る成績を出し続けてきたわけです。
―参考ベンチマークに定めているTOPIXにしても、他の投信とは違い、あえて「配当込み」のものを選んでいますね。
配当も含めたTOPIXと比較するほうが公平だと考えているからです。逆から言えば、配当を除いたTOPIXに勝ったとしても、あまり意味がありません。さらに、公表している私たちの投信のパフォーマンスは手数料を控除後の数字で、それがTOPIX(配当込み)にアウトパフォームすることが肝心だと思っています。

―中小型株の魅力はどんなところにあるのでしょうか?
知名度の低いグロース株は、PER(株価収益率)がなかなか上昇しない(=株価が割安な水準に放置されがちな)一方で、EPS(1株当たり利益)は着実に増加していきます。そして、いつか市場がそのことに気づき始めて、突如としてPERが急上昇する(=一気に適正水準まで買い進められる)局面が訪れるものです。
―そういったニッチな会社は、どうやって発掘しているのでしょうか?
偏見をもたず、現場に足を運び、過去の業績を精査して忠実に評価すれば、上場企業3,600社の中から、おのずと見つかるものです。そして、その際に手掛かりとなるのが「会社四季報」ですね。投資は「会社四季報」に始まり、「会社四季報」に終わります。

―これまでのところ、組み入れているのは国内株式のみですが、海外投資の必要性についてはどう考えていますか?
海外市場への投資も検討しているところです。なぜなら、米国市場と比べて日本の大型株が不甲斐ないからです。ラージキャップ(大型株)が成長しているからこそ、米国のインデックスは上昇を遂げています。TOPIXの推移が象徴する通り、その点で日本の大型株はかなり見劣りしています。日本の大型株の代替として米国の大型株を組み入れるだけでも成績に寄与していくと考えています。

―TV番組「カンブリア宮殿」で取り上げられたのを機に純資産残高が急増していますが、規模が大きくなると運用しづらくなりませんか?
過去に3,000億円以上の純資産残高を集めた日本株アクティブ投信は、その後にことごとく苦戦を強いられてきたのも確かです。増えたお金にこれまで同様の運用スタイルで真面目に対応しようとすると行き詰まってしまうかもしれません。私自身も、「カンブリア宮殿」出演後に純資産残高が急増したのを目の当たりにして、「どうやって対応すべきか……」と腕組みしました。ですが、そんなときに思い出したのが、同番組の司会者である村上龍さんの言葉です。彼は私に、「ひふみ」がいいのは信頼と希望があるからだとおっしゃいました。
それがヒントとなって、私たちの投信が次に進むべき道が見えてきました。私たちの投資先選びはずっと「成長」にフォーカスしてきましたし、日本でもベンチャーキャピタルが存在感を高めていますが、ポストIPO(上場直後の企業)への投資についてはまだまだこれからも余地があります。また、今後の日本の大企業の中には、東芝のように成長が期待できる分野を持っていながら構造的な問題によって危機に陥る企業が増えてくるでしょう。有望な分野については「再生」を促すための資金提供もしていきたい。そちらにも目を向けていけば、たとえ1兆円の純資産残高を集めても資金が足りないほどです。だから、私たちは日本の「再生」と「成長」を応援する基幹ファンドをめざしていこうと考えています。
