FXにおけるダウ理論とは?意味や基本の6つの法則、手法について解説

2023/1/6

「ダウ理論」は、FXトレーダーの間で一般的に知られている相場分析手法の一つです。相場分析手法の原点ともいわれ、考案されてから長い年月が経っているにもかかわらず、今でもなお活用されています。しかしFX初心者の場合、聞き馴染みがない人も多いのではないでしょうか。

ダウ理論は、FXにおける相場の予測やエントリーポイントの判断に役立てることができます。本記事ではダウ理論の基本的な原則や、具体的な使い方などについて解説します。

FXにおけるダウ理論とは?

ダウ理論とは、アメリカの証券アナリスト・ジャーナリストであるチャールズ・ダウが、19世紀の終わりに提唱した相場理論のことです。相場に発生するトレンド(特定の方向に値動きが進むこと)の性質を6つの法則で説明しています。

元々は株式市場の株価と相関性の高い景気循環を分析し、予測するために考案されたものですが、現在ではFXでも通用する理論として用いられています。

多くのテクニカル分析(過去の値動きをもとに将来の相場を予測する手法のこと)の元となっているのがダウ理論です。たとえば「上昇トレンド」や「下降トレンド」といった言葉もダウ理論を基にした用語です。

ダウ理論は多くのトレーダーが参考にしている考え方で、ダウ理論通りに相場が動くことも珍しくありません。トレードをする際の基礎知識として知っておくことが大切といえるでしょう。

ただし、ダウ理論は方向性のある値動き(上昇トレンド、下降トレンドなど)を説明したものであり、全ての相場に使える理論ではありません。また、ダウ理論はあくまでも相場分析をするための「考え方」の一つです。移動平均線やMACDのようなテクニカル分析のインジケーターとは異なり、一定のライン等をチャート上に表示させるものではありません。

上昇するチャートと棒グラフ

ダウ理論の6つの法則

ダウ理論は、6つの基本法則をベースに成り立っている相場分析手法です。ここでは、それぞれの内容を解説します。

平均価格は全ての事象を織り込む

市場価格を形成する全ての要因は、平均価格に反映されているという法則です。平均価格は、FXに置き換えた場合、為替レートのことを指します。

この法則が成り立つのは、相場の値動きは経済指標や金融政策のようなファンダメンタルズ要因や、予測不可能な戦争・テロ・天災などの影響を受けて形成される「需給バランス」によって日々変動しているからです。

ダウ理論では、将来の値動きを予測する場合、現在の値動きを示したチャートを分析して、検討することが望ましいとされています。

トレンドは3種類ある

トレンドは、継続する期間に応じて、長期、中期、短期の3種類に分類されるという法則です。

たとえば、1年から数年以上続く動きが長期トレンドです。

数週間から、数ヶ月以上続く動きが中期トレンドです。長期トレンドとは逆行する方向に動き、調整局面(行き過ぎた価格を落ち着かせてバランスを取り戻すような動き)を示すのが特徴となっています。

数時間から、数週間以上続く動きが短期トレンドです。中期トレンドよりさらに短い調整局面を示します。

トレンドは3段階ある

トレンドには、先行期、追随期、利喰い期の3段階があるとする法則です。

先行期では、一部の投資家が先行して底値(一定期間中の一番低い値段のこと)で買ったり、天井(一定期間中の一番高い値段のこと)から売ったりすることで、価格に緩やかな動きが出始めます。

追随期は、相場の動きを見て、売買に参加する投資家が増えてくる時期です。この段階では、急激な価格変動が起こりやすくなります。

利喰い期は、先行してエントリーしていた投資家が利益確定を行う時期です。この段階になると、相場が加熱し、多くの報道などを通じて初心者の参入も増えてきます。利喰い期になると、トレンドは終わりに向かうと考えられます。

上昇するチャートを見つめる男性たち

平均は相互に確認される

トレンドを判断するためには、相関性のある複数の銘柄を確認する必要があるという法則です。相関関係のある通貨ペアや指標を確認したうえで、トレンドが発生しているのかどうかの判断をするのが重要だといえます。

トレンドは出来高でも確認できる

トレンドの信頼度は出来高によっても確認できるという法則です。出来高とは取引量のことを指します。
通常であれば、価格が上昇すると、勢いに乗じて売買したいトレーダーが集まってくるため、出来高も上昇する傾向があります。しかし、価格が上昇しても出来高が上昇しない場合があり、そのようなケースではトレンドが転換している可能性を疑ったほうがよいということです。

ただし、この理論はFXにおいてあまり有効な理論ではありません。というのも、FXは株式のように特定の取引所で売買が行われるわけではなく、国境の区別なく世界中で取引されているため、出来高を正確に把握することが難しいからです。
余談ではありますが、テクニカル分析の中には出来高を要素とする手法がありますが、それらはFXには向かないということが言えるのです。

トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

ダウ理論では、高値と安値(一定期間のトレンドの中で最も高い値段と最も安い値段のこと)に注目し、連続する高値・安値が、それより前の高値・安値より上に位置する(切り上げる)状態が「上昇トレンド」、下に位置する(切り下げる)状態が「下降トレンド」と定義されています。

これらのトレンドは「上昇トレンドで高値を更新せずに安値を更新する」「下降トレンドで安値を更新せずに高値を更新する」といったシグナルが出ない限り、基本的に継続していくという法則です。

上昇するチャート

FXにおけるダウ理論の使い方とトレード手法

ダウ理論を上手に用いることで、相場の流れやトレンドの転換点を知ることができます。ここでは具体的な使い方やトレード手法を解説します。

ダウ理論の使い方

相場の流れを知る

大まかな相場の流れを知ることで、トレード戦略が立てやすくなり、安定した取引ができるようになります。

相場には大きく分けてトレンド相場とレンジ相場の2種類があります。レンジ相場とは、一定の幅(レンジ)で価格が推移を繰り返している相場のことです。ダウ理論を活用すれば、トレンド相場なのか、レンジ相場なのかを判断できるようになります。

トレンド相場か、レンジ相場かによって、選択すべき取引スタイルが大幅に変わるため、相場状況を適切に判断することは重要です。トレンド相場であれば、トレンドに追随する「順張り」、レンジ相場では相場の流れに逆らって取引する「逆張り」がメインとなります。

【関連ページ】FXにおける逆張りとは?順張りとの違いや注意点を解説!

トレンドの転換を知る

ダウ理論では、高値・安値の切り上げ・切り下げからトレンドの転換を把握できます。トレンドの転換がわかれば、底値でエントリーし、天井で決済するといったことも可能になるため、大きな値幅を狙ったトレードを実現しやすいのが特徴です。

【関連ページ】FXにおけるダイバージェンスとは?意味や見方、活用時の注意点

ダウ理論を使った基本的なトレード手法

初心者にも取り組みやすいのは、大きな流れには逆らわず、トレンドが発生しているのを確認してからエントリーする(追随期にエントリーする)方法でしょう。エントリー後は、利喰い期で利確し、安値を切り下げたタイミングで損切りをします。この手法を上手に活用すると、効率的にリスクを抑えられる可能性があります。

FXのデータが表示されたパソコン

ダウ理論を活用する際の注意点

ダウ理論は確たる判断基準に則ったトレードをするために有効な手法ですが、万能ではありません。ここではダウ理論を活用する際の注意点を解説します。

ダウ理論だけが絶対的な指標ではない

ダウ理論はあくまでもトレンドが発生しているのかどうかを見極める方法であり、レンジ相場で使うのには不向きです。FX相場の7割はレンジ相場と言われているため、ダウ理論だけで勝ち続けることは現実的には難しいといえます。さまざまな場面で利益を獲得するためには、レンジ相場に強いオシレータ系のテクニカル指標(相場の過熱感を測る指標)などの活用も検討しましょう。

ダウ理論はシグナルの発生が遅い

ダウ理論に基づくと、高値・安値の切り上げや切り下げが起こったタイミングで、ようやくトレンドが発生していると判断します。チャートを後追いすることになるため、そのタイミングでエントリーしてもすぐに価格が逆行してしまい、あまり利益を得られないケースもあるのが欠点です。

ダウ理論をメインに据えながら、ファンダメンタルズ分析を補助として活用するのも手でしょう。いち早く値動きを読み、迅速にエントリーできれば、大きな値幅を取ることも可能になるかもしれません。

チャート分析にはインジケーターも使用する

チャート分析をする際は、インジケーターを使用するとトレンドを把握しやすくなります。

たとえばZigZag(ジグザグ)はチャートの波動に自動でラインを引いてくれるインジケーターです。その名の通りジグザグのライン(山や谷)が描かれるのが特徴で、相場の大きな流れや転換点を読み取ることができます。

「だまし」を完全に回避することはできない

「だまし」とは、チャート分析で予測した通りに価格が動かないことを指します。

ダウ理論においても、だましが発生する可能性はあるため注意しましょう。ダウ理論は、多くの投資家が意識している手法のため、それを利用して資金量の多い大口トレーダーが意図的にだましを仕掛けてくる場合もあります。

増えるお金を追いかける男性

ダウ理論はFXの相場分析をするために欠かせない知識

ダウ理論は数多くある相場分析手法の中で、基本的なものの一つです。6つの法則から成り立っており、それぞれトレンドを測るのに役立ちます。

ダウ理論はさまざまなテクニカル分析の基本となっているため、ダウ理論を理解することは、ほかのテクニカル分析について理解を深めることにもつながるでしょう。

ただし、ダウ理論だけを頼りに取引をするのはあまりおすすめできません。インジケーターやファンダメンタルズ分析などの併用も選択肢に含めることによって、取引の精度をより高められるでしょう。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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