NISAはデメリットしかないと言われる理由は?向いている人の特徴

2023/7/31
2024/3/7(更新)

NISA口座の開設者数は増加傾向にあり、2023年3月末時点で1,000万口座を突破※1しています。

ただ投資初心者の場合、NISAの仕組みを理解しきれていないかもしれません。

本記事では、NISA制度のデメリットや活用するためのポイントなどを詳しく解説します。NISA制度への理解を深めて、新NISAを上手に運用するコツを身につけましょう。

NISA制度の概要

まずNISAとはどのような制度なのか、基本的な仕組みやメリットを理解しておきましょう。

NISAとは、2014年1月にスタートした個人投資家のための税制優遇制度のことで、通常課される税金を免除する制度です。

通常、株式や投資信託などの金融商品を売買することで得た売却益・配当金・分配金に対しては、約20%の税金がかかります。しかし、NISAを活用すると、これらの利益に対して税金を課せられないのが、この制度のメリットです。

新NISAは年間合計360万円を上限として、幅広い商品に投資できます。国内の株式や投資信託だけではなく、外国株やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)なども対象です。投資信託のように100円程度の少額から取引できる商品もあり、資産運用の目的に合わせた柔軟な取引が可能です。
ただし、年間の上限はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円と分かれており、投資が可能な商品にも違いがありますので注意しましょう。

【関連リンク】NISA制度が恒久化?旧NISAからの変更点と活用ポイント

NISAはデメリットしかないと言われる理由

NISA制度は一般的な投資と比べると制約が多く、自分で判断しなければならない場面も多いと言われます。

損益通算と繰越控除ができない

損益通算とは、複数の取引の利益と損失を相殺して、課税額を減らすことです。NISA口座では利益に課税されない代わりに、税務上、損失もないものとみなされます。そのため、NISA口座で損失が発生した場合でも、課税口座(特定口座や一般口座)との損益通算はできません。

例えば、2つの取引で50万円ずつ利益と損失が出ているとしましょう。この場合、両方の取引が特定口座で行われていれば、利益と損失を相殺できるため、譲渡所得は0円となり課税されません。一方で、利益が出ている取引が特定口座、損失が発生している取引がNISA口座で行われている場合には、50万円の利益と相殺することはできず、課税されてしまうのです。

また、NISAでは繰越控除もできません。繰越控除とは、投資によって生じた損失を最大3年間繰り越せる仕組みのことです。例えば、株取引で10万円の利益を得た年に、100万円の損失を出した場合、控除しきれなかった90万円分については最大3年間、翌年以降の利益から90万円分の控除ができます。

NISA口座と課税口座を併用している場合には、このようにNISA口座で損失を出した場合の税金対策ができません。この点をよく理解しておきましょう。

【よくあるご質問】証券税制の特例措置(各種優遇税制)について教えてください。

1年間で買付できる金額に限りがある

NISAは上限なく投資ができるわけではありません。つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円の合計360万円という上限が設けられているため、不自由に感じる人もいるでしょう。
しかし、「生涯非課税限度額」という1,800万円の中では自由に金融商品を入れ替えられるため、自身の資産状況や市場にあわせて、非課税で運用する商品をカスタマイズできます。

【関連リンク】NISA制度が恒久化?旧NISAからの変更点と活用ポイント

金融機関によって投資できる商品が異なる

NISA口座で投資できる金融商品は金融機関によって異なります。そのため、取り扱っている金融商品も視野に入れながら、口座の開設先を選ぶ必要があります。

口座開設をした後に、自分に向いた投資商品を他の金融機関で見つけたなどの理由で金融機関を変更することは可能です。しかし、変更は1年に1回しか認められておらず、手続きにはある程度の時間がかかります。

デメリットを踏まえたNISA活用のポイント

NISAの魅力は、投資で得た利益が非課税となることです。魅力を最大限に活かすためには、どのような点を意識しておくとよいのでしょうか。

長期的な視点で投資を行う

先述のようにつみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円という限られた枠の中で、金融商品を買付する必要があります。この枠は売却をしても再利用ができず、短期的な値動きに惑わされてあれこれ買ってしまうと、非課税枠を早々に使い切ってしまうでしょう。

そのため、短期的な値動きを追いかけるのではなく、長い目で値動きを考えて取引を行うようにすると良いでしょう。例えば日本企業の株式を売買するときは、業界や企業の動向、過去の市場の値動きなどを見て時期を判断するなど、長い目で見て運用していくことも重要です。

少額からコツコツと積み立てる

つみたて投資枠では年間120万円を投資することができますが、積立投資の特徴として一度に大きな金額を投資するのは避けたほうがよいでしょう。

つみたて投資は、購入タイミングをずらすことで、価格が高いときには少なく、価格が安い時には多く買うことができ、結果として投資のリスクを抑えられます。

目的やリスク許容度に合った商品を選ぶ

金融商品はそれぞれ特徴に大きな違いがありますが、特に大きな違いが出るのがリスクとリターンです。例えば、株式であれば値上がり益に期待できる一方で、値下がりするリスクも高くなっています。投資信託であれば、株式同様にハイリスク・ハイリターンの商品もあれば、比較的ローリスクの商品もあります。

つみたて投資枠で投資可能な金融商品は金融機関によって異なりますが、商品説明などを確認し、自分の投資目的やリスク許容度に合わせた商品を選べるように準備をしておきましょう。

NISAのデメリットを理解したうえで投資に取り組もう

NISA制度には「投資で得た利益に対して税金がかからない」といった大きなメリットがあり、特有のデメリット(年間枠や投資可能金額のしばりといった制約)があるのも事実です。

しかしこれらの仕組みを理解した上で、自分の投資目的やスタイルに合った適切な投資商品・運用方法を選べば、資産運用の土台を築けます。手続きをしていない人は、この機会に口座開設を検討してみてください。

<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。

リスクおよび手数料などについて