旧NISAのロールオーバーとは?新NISAでも利用できるのか解説

2023/6/30
2024/2/28(更新)

「ロールオーバー」は、NISAについて情報収集している人なら一度は目にしたことがあるでしょう。しかし、実際のところロールオーバーとはどのような仕組みなのか、理解しきれていない人も多いのではないでしょうか。

本記事ではロールオーバーとは何か、メリット・デメリットなどを含めて詳しく解説します。2024年からスタートした新しいNISA制度を踏まえた注意点についてもご紹介しますので、参考にしてください。旧NISAと新NISAの違いを認識して、上手に制度を活用しましょう。

旧NISAのロールオーバーとは

そもそも、旧NISAのロールオーバーとはどのような仕組みなのかをまず理解しておきましょう。

ロールオーバーとは、旧NISA制度で一般NISAの非課税期間が終わるときに保有している株や投資信託などの金融商品を、翌年の年間投資枠を利用して、運用を継続する仕組みのことです。

一般NISAには5年間の非課税期間が設定されており、何も手続きをしなければ購入した商品を売却するか、課税口座に移管する必要がありましたが、ロールオーバーの手続きをすれば引き続き非課税で運用を続けることができました。

新NISAでロールオーバーはできる?

NISA制度の改正によって非課税期間は無期限となったため、新NISAではロールオーバーができません。

また、新NISAと旧NISAは別物なので、旧NISAで保有している商品を新NISAへ移管することもできません。

つまり、旧NISAで金融商品を保有している場合は、非課税期間終了後の対応として課税口座への移行、または売却のどちらかを選択する必要があります。例えば2023年末までに購入した分は、5年間の非課税期間満了後に自動的に「課税口座」へ移管されます。

課税口座に移管された時点での時価で新たに購入したものとみなされるため、そこから売却して利益が出た場合には課税されることにも注意しておきましょう。例えば120万円で商品を購入し、非課税期間終了のタイミングで200万円まで価格が上昇していたとしましょう。この場合、非課税期間終了時点で売却すれば、課税はされません。しかし、そこからさらに220万円まで価格が上昇した場合には、220万円-200万円=20万円分に対しては税金がかかります。

さらに気を付けたいのは、非課税期間終了時点で損失が発生している場合です。例えば、120万円で商品を購入し、非課税期間終了のタイミングで70万円まで価値が下がっていたとしましょう。課税口座への移管後100万円まで価格が上昇した場合には、100万円−70万円=30万円分に対して税金がかかります。つまり、当初の購入金額120万円を下回っているにもかかわらず、税金を支払う状況が発生することも考えられます。
これまでは、非課税期間終了時点で一時的に値下がりしている場合でも、将来的な値上がりが見込める場合にはロールオーバーの活用で課税を回避できました。しかし、今後はロールオーバーができないため、非課税期間終了前の売却についても検討するとよいでしょう。

旧NISAのロールオーバーのメリットとデメリット

ロールオーバーには、メリットだけではなくデメリットもあることを理解しておきましょう。

ロールオーバーの3つのメリット

1.値上がりしても非課税のまま運用できる

ロールオーバーのメリットの一つは、買付時より値上がりした商品も非課税のまま運用できることです。ロールオーバーできる額には上限がないため、投資で得た利益を含めて非課税での運用ができます。つまり、年間の非課税枠120万円以上を超えた金額も、非課税のまま運用できます。例えば120万円で購入した商品が値上がりして200万円になった場合も、ロールオーバーすることでそのまま非課税で運用を続けることができます。

2.非課税で運用できる期間を延長できる

ロールオーバーすると、非課税で運用できる期間が延長されるのもメリットです。元々の非課税期間に、さらに5年間が加わるため、最大10年間非課税で運用できます。そもそも、課税されない分手元に残るお金が多くなる点が、非課税で運用する利点です。そのお金を再投資していけば、利息が利息を生む「複利効果」を得やすくなります。非課税で投資できる期間が長くなるほど複利効果の恩恵を受けやすくなるでしょう。

3.売却時期を検討しやすくなる

売却時期を検討しやすくなるのもロールオーバーのメリットです。非課税期間終了後には商品を売却するのも選択肢の一つですが、損失が出ている状態では売りにくいと考える人もいるでしょう。ロールオーバーすることで最大10年の運用期間を見込むことができるため、慌てて売却する必要がありません。相場状況を見ながら、運用目標を達成したタイミングや、これ以上値上がりが期待できないと感じたときに売却することも可能です。10年間のうちに売却すれば、どんなに利益が出ていても課税されないので、より大きなリターンを目指し、運用を続けるといった戦略をとることもできます。

ロールオーバーの3つのデメリット

1.損益通算ができない

ロールオーバーのメリットを得られるのは、基本的に商品が値上がりしていく場合です。ロールオーバーした結果、値下がりして売却時に損失を出すと非課税の恩恵を受けられないため注意しましょう。

なぜなら、NISAでは課税口座と損失や利益を相殺する「損益通算」ができないからです。NISA口座で運用すると、利益に課税されない代わりに損失もないものとみなされます。

そのため、値下がりして損失が出てしまった場合や値上がりが期待できない場合はロールオーバーをやめ、課税口座に移すことも検討したほうが良いでしょう。

2.翌年以降の年間非課税投資枠を圧迫する

また、ロールオーバーすると、翌年以降の非課税枠を圧迫する可能性がある点にも注意してください。つまり、ロールオーバーした分だけ翌年の投資枠が減ってしまいます。例えば100万円分ロールオーバーすると、現行NISAの限度額120万円枠のうち翌年使える非課税投資枠は20万円が上限となります。

利益が出ていて非課税枠を超える金額をロールオーバーする場合は、商品の購入価格ではなく非課税期間満了時点での価格をもとに非課税枠を使うと覚えておきましょう。

例えば80万円で購入した商品が120万円まで値上がりしたタイミングでロールオーバーすると、翌年の非課税投資枠は0円となります。

3.金融機関をまたいだロールオーバーはできない

さらに注意しておきたいのは、別の金融機関のNISA口座へのロールオーバーはできないことです。NISA口座自体は別の金融機関への移管が可能ですが、ロールオーバーするためのNISA口座は、今使っているNISA口座と同じ金融機関でなければ手続きができません。

また、ロールオーバーの手続きはすべて自分で行う必要があります。金融機関で定めた期限までに手続きが必要で、期限をすぎると自動的に課税口座に移管されてしまうので注意しましょう。非課税期間終了が近づくと金融機関から連絡が来るのが一般的ではありますが、自分でも手続きの期限を確認しておくと安心です。

2024年以降はNISAのロールオーバーはできないので注意しよう

ロールオーバーには非課税で運用できる期間が増える、上限額なしで非課税枠での運用を続けられるといったメリットがあります。そのため、これまでは非課税期間終了後の対応として、有力な選択肢の一つでした。

しかし、2024年からは制度改正により、ロールオーバーはできなくなりました。2019年以降に旧NISAで購入した商品を保有している方は、非課税期間満了時に課税口座に移すのか、売却をするのかを検討しておきましょう。

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<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。

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