米ドル/円 162円台突入で為替介入発動?
振り返り
週初22日は、FRBのタカ派的な姿勢を背景にドル買いが優勢となり、米ドル/円は一時161.93円と、2024年7月上旬以来の水準まで上昇した。しかし、この上昇局面で片山財務相と米国のベッセント財務長官によるオンライン会談の実施が報じられると、日米協調介入を含む通貨当局の対応への警戒感が一気に高まり、米ドル/円は一時161.06円まで急落した。
22日の急落後、市場では依然として実弾介入への警戒が強く、片山財務相からも「常に必要とあれば断固たる措置を取る」といった強い牽制発言が相次いだ。一方で、米国の景況感の底堅さや早期利上げ観測は根強く、原油価格の下落がインフレ懸念を和らげつつも、金利差を背景としたドル買い円売りの圧力は継続した。
25日の海外時間には米金利上昇に伴い、年初来高値となる161.95円を記録し、2024年7月の高値に並んだ。しかし、注目された米5月コアPCEデフレーターが前年比+3.4%と市場予想に一致したことを受け、インフレ上振れへの警戒が和らいだことからドル売り・米金利低下が優勢となり、一時161.50円台まで押し戻された。
26日は、中東情勢が再び緊迫化した。イランによるホルムズ海峡での商船攻撃に対し、米軍が報復としてイランの軍事目標を攻撃したと発表したことで、地政学リスクを背景としたドル高圧力がかかった。また国内では、政府がまとめる「骨太の方針」に「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」との文言が追加される方針が伝わった。これが日銀の利上げに対する政府の抑制的な姿勢(円安容認)と解釈されたことも円の重石となった。米ドル/円は24年7月高値に近い水準を維持し、161.74円で取引を終えた。
米ドル/円は2024年7月高値161.95円と並んだ
米ドル/円は6月25日に2024年7月以来となる161.95円を付けた。米商品先物取引委員会(CFTC)がまとめた6月23日時点の建玉報告で、投機筋の円ポジションは14万6104枚のネットショートとなり、2026年4月の介入前の水準を大きく上回っている。斯かる中、為替市場では、過去2年にわたって上値抵抗線(レジスタンスライン)として機能していた161.95円を明確に上抜けた場合に当局が為替介入に踏み切るとの見方が多い。しかし、ドル円が2024年の高値と並んでもなお、片山財務相や三村財務官からの口先介入は、4月末の介入直前に発した「いよいよ断固たる措置をとるタイミングが近づいている」(片山財務相)、「最後の退避勧告だ」(三村財務官)といったメッセージと比べると、トーンはまだ強くない。
米ドル/円はドル高主導の上昇
6月FOMCではFRBのインフレ警戒の高まりが確認され、市場は26年末1回の利上げの可能性をフルに織り込む中、ドル高圧力が強まっている。6月FOMCでウォーシュ議長が自身の経済・物価見通しや政策金利見通しを明示しなかったこともあり、市場の利上げ時期を巡る見方が振れやすくなっている。米国経済が堅調に推移している状況では、利上げ期待が高まりやすく、ドル高地合い継続が見込まれる。ドル高圧力が強い環境下では、円買い介入を実施しても相場の方向を転換させることは極めて難しい。2026年4月~5月に過去最大の11.7兆円規模で実施された介入が、約1か月で効果がほぼ消失したことからも明らかだ。
また、世界的なドル買いの中で、G10 通貨の多くは対ドルで▲2〜▲4%超の大幅下落を見せている。一方、円の下落率は▲0.8%にとどまり、G10 通貨の中で最も下落率が小さい(下図)。現時点では、口先介入と介入警戒感のみで円安を抑え込めていることから、実弾介入に踏み切るタイミングではないだろう。
足もとの米ドル/円の水準や投機筋の円売りポジションの観点からは円買い介入がいつ発動されてもおかしくない状況と言えるが、ドル独歩高であること、円売りが抑制されていることを踏まえると、介入発動の可能性は低いと考える。
対ドルパフォーマンス:ドル全面高
出所:Bloomberg
期間:2026/6/17~2026/6/26
骨太の方針が円売り材料に?
政府が来月策定する骨太の方針で、高市政権が目指す『強い経済』の実現に向け、「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」との文言を明記する方向と報じられている。物価高の抑制を狙って追加利上げを志向する日銀を牽制する格好だ。直近の6月会合の主な意見でも内閣府から追加利上げへの牽制と見られる意思表明があったが、骨太の方針という中長期的な指針において日銀に慎重な判断を促すというプレッシャーがかかっていくことは円安圧力長期化の可能性を高めるリスク材料と言える。日銀の利上げ路線に対する牽制と解釈されれば、円売り材料となって、短期的には162円を試す展開も考えられる。
今週の注目材料
ウォーシュFRB議長はECBフォーラムに参加予定であり、1日のパネルディスカッションでは、タカ派スタンスが再度意識される可能性がある。原油価格下落を受けて足元のインフレの見方に変化が見られるか注目される。2日の米雇用統計では、6月29日時点で非農業部門雇用者増が前月比+11.3万人(前月:同+17.2万人)への減速が予想されているが、失業率は4.3%で横ばいとなり、市場の利上げ期待は維持されやすいだろう。雇用統計の内容が利上げ観測を一段と強化する内容ならドル高進行でドル円は162円台に突入することもありえるだろう。