世界的な金利上昇の背景

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2026年05月18日

世界的な金利上昇の背景


振り返り

11日(月)は、トランプ米大統領が戦闘終結に向けた米国の提案(覚書)に対するイランの回答を「全く受け入れられない」と拒絶したことで、交渉の停滞とホルムズ海峡封鎖の長期化懸念が強まった。これにより原油価格が上昇し、有事のドル買いが進行して米ドル/円は157円台を回復。

12日(火)は、為替介入への警戒感やベッセント米財務長官の来日に合わせて日米が連携して円安是正に動くのではないか、といった期待感から、一時157円割れまで急落する場面があった。しかし、具体的な利上げ要請などのサプライズがなかったことから、すぐに157円台後半へと買い戻された。

13日(水)は、前日の米4月CPIに続いて4月PPIが市場予想を上振れ、インフレ懸念が高まった。これによりFRBの利下げ期待がさらに後退したものの、158円突破には至らず。連休期間中の介入ラインとなっていた158円を目前に上値が重かった。

14日(木)のNY時間には、ついに158円を突破し、158.20円付近まで上昇したタイミングで本邦当局による実弾介入への警戒感から一時157.27円まで急落した。しかし、この日発表された米小売売上高が底堅い結果だったこともあり、ドルの押し目買い意欲は強く、短時間で水準を回復した。

15日(金)は、WTI原油先物が1バレル100ドルを超える水準で高止まりし、米10年債利回りも4.5%を突破した。これに連動する形でドル円は一段高となり、4月30日の介入直前の水準に近い158円台後半まで浮上して越週した。

足元の金融市場では、日欧米の主要国で金利が上昇し、為替市場でもドル独歩高の様相が強まっている。この背景には、中東情勢緊迫化を背景とした原油価格の高止まりと、それに対する各中央銀行の対応の差、さらには日本固有の財政・金融政策への不透明感といった複合的な要因が絡み合っている。


世界的な金利上昇の背景

日本:日本の長期金利(10年国債利回り)は一時2.7%台まで急上昇し、1997年以来およそ29年ぶりの高水準を記録した。上昇の主因は、中東情勢の緊迫化に伴う原油高から、債券市場のインフレ期待(10年BEI)が日銀の目標である2%を明確に上回り、2.25%に達したことにある。市場では、日銀の追加利上げが物価上昇のスピードに追いつかない「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が強まっている。加えて、政府の補正予算編成による財政赤字拡大への警戒感が、超長期債を中心に売りを加速させた。

米国:米国の長期金利(10年国債利回り)は4.5%を突破し、昨年7月以来の高水準圏で推移している。先週公表された4月CPIやPPIが市場予想を上回る高い伸びを示し、インフレの根強さが再認識された。さらに小売売上高も底堅く、米経済の底堅さが示されたことで、FRBによる早期利下げ期待が大きく後退し、一部では再利上げの可能性が議論される状況となっている。

欧州:ユーロ圏でも独長期金利(10年国債利回り)が3.1%を上回るなど金利が上昇している。エネルギー価格の上昇がインフレ期待を押し上げる中、ECB内では6月の利上げを支持するタカ派的発言が目立っている。また英国では、地方選での与党敗北に伴うスターマー首相の退陣要求といった政局不安に加え、次期首相候補による財政拡張への懸念が英債利回りの急騰を招き、欧州全体に金利上昇圧力が波及した。


為替市場で円安ドル高が進んでいる背景

米ドル/円は、4月30日に実施されたと見られる10兆円規模の円買い介入後の安値から、再び158円台後半へと浮上している。ドル高進行の背景には、1)中東情勢の緊迫化に伴う原油高、2)米国の根強いインフレ圧力と利下げ期待の後退、3)他国通貨の相対的な弱さ、がある。

1)ホルムズ海峡封鎖長期化による供給制約への懸念からWTI原油先物価格が100ドルを超える水準で高止まりしており、これが世界的なインフレ懸念を再燃させ、米金利上昇を通じてドルを押し上げている。

2)強い物価指標や底堅い雇用統計、小売売上高の結果を受け、市場ではFRBによる早期利下げ観測が大きく後退した。一部では再利上げの可能性が議論されており、これがドルの下支えとなっている。米10年債利回りが4.6%台へ上昇し、他国との金利差が意識される中で、より高い利回りを求めてドルに資金が流入している。

3)日本では長期金利が上昇しているものの、政府の補正予算編成報道による財政悪化懸念や、日銀の対応が後手に回るビハインド・ザ・カーブへの懸念が強く、金利上昇が円高ではなく円安を招いている。 また、英国では地方選での与党敗北に伴うスターマー首相の退陣要求など政局不安がポンドの重石となっており、ドルが独歩高になりやすい地合いが続いている。

日本固有の要因で円安が進行している側面もある。通常、国内金利の上昇は通貨高(円高)を招くが、足元では金利上昇と円安が同時進行している。これは、金利上昇の背景が経済成長への期待ではなく、財政悪化やインフレ制御不能への懸念に基づいているためだ。


今週の注目材料と米ドル/円の見通し

今週(5月18日〜22日)の最大の注目材料は、18日〜19日に開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議である。世界的な金利上昇への対処が議論される見通しであり、日米当局者から円安是正や市場安定に向けた新たなメッセージや協調姿勢が示されるかが焦点となる。

国内では、19日の1-3月期GDP速報値、21日の小枝日銀審議委員の講演、22日の4月全国CPIの結果が重要だ。特に、日銀の6月追加利上げを裏付けるような強いインフレ指標やタカ派的な発言が出れば、一時的に円の下支え要因となる可能性がある。米国では20日のFOMC議事要旨や21日の5月PMI速報値が、FRBの政策スタンスを占う上で注目される。

当面の米ドル/円は、中東情勢の緊迫化に伴う原油高と米国のインフレ高止まりを背景としたドル高・円安圧力継続が基本シナリオとなる。5月6日の介入観測後、わずか1週間程度で元の水準まで戻っており、現在の環境では介入による円高効果が限定的であるといわざるを得ない。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


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