日銀会合通過後に再度介入発動か

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2026年06月15日

日銀会合通過後に再度介入発動か


振り返り

週初8日は、前週末に発表された米5月雇用統計が市場予想を大幅に上回る強い内容であったことや、週末にイランがイスラエルに対してミサイル攻撃を行ったことを受け、米利上げ観測の再燃と地政学リスクへの警戒からドル買いが先行して取引を開始した。米ドル/円は160円台前半で底堅く推移したが、その後、トランプ米大統領の介入もあり、イランとイスラエルの双方が攻撃停止を表明したことで「有事のドル買い」が後退。ドル売りが進み、米ドル/円は一時160円を割り込んで159.86円まで下落した。

しかし、9日から10日にかけては地政学リスクが再燃し、ドル買い戻しとなった。オマーン沖でイラン軍が米国のヘリコプターを撃墜したとの報道が流れ、これに対しトランプ大統領が「対応せざるを得ない」と対抗措置を示唆。実際に米軍による自衛的な反撃が行われたことなどからドル買い圧力が一段と強まり、米ドル/円は再び160円台を回復してじりじりと水準を切り上げた。

週後半の11日から12日にかけては、一転して緊張緩和のヘッドラインが相場を動かした。米ドル/円は11日に一時160.59円と4月末の介入直前以来の高値を記録したが、その後、トランプ大統領が予定していた対イラン軍事攻撃計画の中止を表明し、「イランとの和解に達した」「合意は間近である」と述べたことで原油価格が急落。これを受けてリスクオンのドル売りが加速し、米ドル/円は一時159.51円まで急落して160円を割り込んだ。週末にかけては、米国のインフレ懸念や金利低下幅の縮小から買い戻しが入り、160円台を回復して取引を終えている。


米・イラン和平合意が成立

日本時間6月15日、パキスタンのシャリフ首相が、米国とイランの間で和平合意が成立したことを正式に発表した。正式な覚書の署名式は6月19日にスイスのジュネーブで行われる見通しだ。合意の主な内容は、ホルムズ海峡の即時開放やイランの核開発の制限だ。さらに、イスラエルとヒズボラの戦闘停止を含む包括的停戦や、凍結されたイラン金融資産の解除に向けたプロセスの開始も合意の一部に含まれる可能性が高いとされる。

最大の懸念材料であった供給制約の解消を見越し、WTI原油先物価格は一時84ドル台まで急落した。リスクオンの地合いから主要国の株価指数は軒並み上昇した。本来、エネルギー輸入国である日本にとって、和平合意に伴う原油安は交易条件の改善を通じた円高要因となるはずである。しかし、米ドル/円の反応は極めて限定的であり、初動での小幅な調整を経て速やかに160円台を回復している。

米・イラン戦闘初期の米ドル/円の上昇は、概ね原油高の影響によるものであったため、ホルムズ海峡の封鎖が解除されて原油価格が下落すれば米ドル/円も下落に転じるとみられていた。しかし、足元は、米国経済の堅調さやウォーシュ新議長のインフレ抑制姿勢への期待などを背景とした米利上げ期待の上昇がドル高のドライバーとなっており、米ドルの動きが原油価格の動向と乖離し始めている。米国経済の堅調さが維持される中ではドル高が継続しやすい地合いとなっており、米ドル/円も高止まりが続いている。

また、日本では、利上げの遅れにより日銀がインフレ抑制で後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」懸念が円売り材料となっている。日銀が6月会合で利上げを実施することは既に市場で完全に織り込まれているが、実質金利は依然として大幅なマイナス圏にあり、半年に1回程度の緩やかな利上げでは円安トレンドを止めるには不十分との見方が根強く、円安基調が継続している。

6月9日時点のCFTC(全米先物取引委員会)のデータによれば、投機筋の円売りポジションは14万5818枚と2024年7月以来の高水準を記録した。日銀会合後に円安が進み、米ドル/円が4月高値の160.72円を明確に突破した場合、当局は「ファンダメンタルズを逸脱した投機的な動き」と判断し、円買い介入を発動する可能性が高まるだろう。


日米中銀イベントの行方

今週は日米をはじめ主要国の中央銀行会合が集中する「中銀ウィーク」だ。米国とイランの和平合意により地政学リスクが後退したことで、市場は各国中銀がインフレ圧力に対してどのような姿勢を示すかに注目している。

日銀会合の焦点は、内田副総裁記者会見における今後の金融政策運営に関するメッセージだ。市場のビハインド・ザ・カーブ懸念を鎮めるためには、単にタカ派的な姿勢を示すだけでは不十分であり、市場の想定を上回る強いタカ派姿勢を示す必要がある。具体的には、必要であれば利上げペースを加速させるという強い意志を示すことが求められる。市場が追加利上げは当面ないと受け止めた場合、一段の円安加速リスクがあるだろう。

FOMCは、ケビン・ウォーシュ新議長体制で初めての会合となる。政策金利は据え置きが確実視されており、インフレ抑制姿勢を強めるかが焦点となる。5月雇用統計以降、市場ではFRBタカ派化への備えが進んできたこともあり、ウォーシュ議長が市場の想定ほどタカ派的ではなかった場合には、ドル高が巻き戻され、ドル安が進むことも考えられる。

米ドル/円は、4月高値160.72円を超えると、24年7月高値161.95円が意識される。日米中銀イベントを通過し、いずれの水準も上回るようだと段階的に165円を目指す展開となる可能性が高まるだろう。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


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