NISAとは?旧NISAの種類やメリット、デメリットをわかりやすく解説

2023/6/6
2024/2/28(更新)

投資初心者向けの制度として、幅広い世代に浸透してきている「NISA」。興味はあるものの、具体的な制度内容がわからず、口座開設するべきか迷っている人も多いのではないでしょうか。

本記事では旧NISA制度はどのようなものだったか、メリットやデメリットなどを含めて詳しく解説します。新NISA制度でも役立てられる運用ポイントについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

NISAとは?

NISA(Nippon Individual Savings Account)とは、株式や投資信託などの金融商品に投資して得た利益や配当にかかる税金を、一定の範囲内で免除する制度のことです。

一般的に投資で得た利益や配当に対しては、所得税と住民税を合わせて20.315%の税金がかかります。しかし、NISA口座を使った取引においては、税金が免除される仕組みになっています。

旧NISAの種類

旧NISA制度では一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類がありました。非課税で投資できる上限額や運用期間、対象者も分かれており、自身の運用スタイルに合わせて選択する必要がありました。

  一般NISA つみたてNISA ジュニアNISA
制度開始 2014年1月 2018年1月 2016年4月
年間非課税投資枠 120万円 40万円 80万円
非課税運用期間 5年間 20年間 5年間
口座開設期間 2023年12月31日まで 2023年12月31日まで 2023年12月31日まで
対象者 日本に住む18歳以上 日本に住む18歳以上 日本に住む未成年者
投資方法 一括投資・積立投資 積立投資 一括投資・積立投資
対象商品 上場株式・投資信託・ETF・REITなど 一定の条件を満たした投資信託・ETF 上場株式・投資信託・ETF・REITなど

一般NISA

一般NISAは、2014年1月に開始された初心者など少額からの投資を行う人向けの非課税制度のことです。年間の非課税枠は120万円で、非課税保有期間は5年と定められています。株式の個別銘柄や投資信託、REITなど、幅広い金融商品に投資できるのが特徴です。

つみたてNISA

つみたてNISAは2018年1月にスタートした、長期・積立・分散投資を行う人を支援するための非課税制度です。年間の非課税枠は40万円で、非課税保有期間は20年と定められています。制度の性質上、投資方法が毎月の積立に限られる点や、投資できる商品が金融庁の定める要件を満たした投資信託やETFに限られる点などが主な特徴です。

ジュニアNISA

ジュニアNISAは、子どもや孫の将来に向けた長期投資をサポートするための非課税制度です。年間の非課税枠は80万円と定められています。

非課税保有期間や投資できる商品などは一般NISAと大差ありません。しかし、ジュニアNISAは基本的に未成年者名義で口座を開設し、親権者や祖父母が運用・管理をしなければなりません。口座の名義人が18歳になるまでは払い出しの制限があるため、自由に資金を引き出せない点も大きな特徴です。

なお、2024年1月の制度改正に伴い、一般NISA・つみたてNISAは新しい制度に移行し、ジュニアNISAは廃止されました。改正後のNISA制度の仕組みや変更点の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

【関連ページ】NISA制度が恒久化?旧NISAからの変更点と活用ポイント

NISAのメリットとデメリット

NISAにはメリットだけではなくデメリットも存在します。運用を始めてから後悔しないように、リスクがあることも理解しておきましょう。

NISAのメリット

配当金や分配金、譲渡益が非課税

NISAは投資で得た利益に対して課税されない点がメリットです。

一般的に株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合は、売却して得た利益や受け取った配当に対して約20.315%の税金がかかります。しかしNISA口座で購入した商品は、いくら値上がりしても売却益に税金がかかりません。引かれる税金が少ない分、手元に残るお金は多くなります。その資金をさらに投資すれば、より効率的な資産運用ができるでしょう。

NISA口座内で得た利益は確定申告が不要

NISA口座内で得た利益は非課税所得という扱いになるため、確定申告が不要です。確定申告とは、1年間に得た収益を計算し、それに対する納税額を税務署に申告する制度のことを指します。

金額の上限なくロールオーバーできる(旧NISA制度のみ)

ロールオーバーとは、NISA口座で保有している金融商品の非課税期間を延長するために、翌年の非課税投資枠に移すことです。これにより、非課税期間が終了した後でも、そのまま運用を継続できます。

また、ロールオーバーには金額の上限はありません。そのため、購入した商品が値上がりしてその年の非課税投資枠の上限を超えていたとしても、ロールオーバーは可能です。ただし、例えば一般NISAを利用中で12月末時点での時価が120万円以上の場合、ロールオーバーすると翌年分の投資枠が0円になってしまう点には注意しましょう。

  • 新NISAでは非課税期間が無制限になったため、ロールオーバーはできません

【関連ページ】旧NISAのロールオーバーとは?新NISAでの注意点と手続き手順

少額から投資ができる

NISAでは年間の投資上限額が決まっています。特につみたて投資枠では一括投資ができないため、毎月の投資上限額は100,000円です。投資額をこの範囲内に収める必要があるため、各金融機関では、毎月最低100〜1,000円程度から投資できるようになっているケースがほとんどです。多額の資金を用意するのが難しい人や、お試し感覚で手軽に投資を始めてみたい人にとってはメリットが大きいと言えるでしょう。

NISAのデメリット

1人1口座しか開設できない

NISA口座は1人で複数の口座を開設できません。例えばある証券会社でNISA口座を開設した場合、他の証券会社や銀行、郵便局などでは口座を開設できなくなります。金融機関によって取り扱っている銘柄や種類、手数料には違いがあるため、NISA口座を開設する金融機関は慎重に選びましょう。なお、松井証券のNISA口座は、株式の購入・売却手数料や投資信託の購入手数料が無料です。

  • インターネット経由で購入した場合

【関連ページ】NISAは複数の口座を開設できる?口座を新しく作るときの注意点

新規の投資が対象となる

NISAで非課税対象となるのは新規で取引した場合です。現在保有している株式や投資信託をNISA口座に移して運用を続けることはできません。すでに課税口座で投資を始めている人は、新規での投資が必要となります。

損益通算や損失の繰越控除ができない

損益通算とは、その年に発生した利益と損失を相殺することです。損失の繰越控除とは、投資で出た損失を最長3年間にわたって繰り越せる制度のことです。これらの仕組みをうまく使うと、支払う税金を減らせる可能性があります。

しかしNISA口座では、利益に課税されないと同時に損失も税務上ないものとみなされるため、仮に損失が発生しても、課税口座の利益と損益通算はできません。損失の繰越控除も適用できないため注意しましょう。

元本割れのリスクがある

NISAで投資できる株式や投資信託などの金融商品は、定期預金のような元本保証はありません。価格は常に変動しているため、NISA口座を利用したとしても売却時の価格が購入時の価格を下回り、元本割れする可能性があります。

NISAの運用のポイント

NISAは万能な制度ではないため、やみくもに運用していると損失を被る可能性もあります。以下で紹介するポイントを踏まえて、リスクを抑えた運用を心がけましょう。

分散投資を行う

分散投資とは、投資先や購入する時期を分散させることで価格変動のリスクを抑え、安定したリターンを狙う投資方法のことです。

値動きの傾向が異なる資産に投資すれば、一方が値下がりしたときでも、もう一方の値上がり分で損失をカバーできることもあります。

また購入タイミングを複数に分ければ、価格が低いときには購入量を多く、高いときには購入量を少なく買うことになり、長期的に見た平均購入価格を抑えられます。

資産や投資タイミングを分散させて価格変動のリスクを抑えられれば大きな損失を被ることも少なくなる可能性があります。

長期保有を前提にする

相場は常に上下しているので、短期間で見ると損失を被ることはよくあります。しかし、長期的に見れば元本割れするリスクは少なくなる傾向があるため、目の前の値動きに惑わされず、積立・分散投資を長期にわたって続けることも大切です。

積立投資の運用成果は保有期間5年の場合と比べて、保有期間が20年になると元本割れするリスクが少なくなる傾向にあることが、金融庁のデータでも明らかになっています。

金融庁 投資の基本

【関連ページ】長期・積立・分散を活用しよう!

NISAは投資初心者にとってメリットが大きい制度

NISAは投資で得た利益に税金がかからない点や、少額から投資できる点など、これから投資を始める人にとってもメリットが大きい制度です。投資である以上、元本割れのリスクはあるものの、分散投資や長期保有を意識しながら運用すればある程度リスクを抑えられる可能性があります。

少額から少しずつ利益を積み上げたい方は、口座開設をぜひ検討してみてください。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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