米ドル/円は160円目前 米CPIとG20での当局者発言が焦点に
今週の注目材料
今週は、米9月消費者物価指数(CPI)・生産者物価指数(PPI)・小売売上高の発表や日銀高官の発言など、金融政策の見通しを左右する可能性がある材料が相次ぐ。また、バンコクで開催中のIMF・世界銀行年次総会(12日〜)と、それに合わせて開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議(15日〜)での当局者発言、フランスの財政懸念を受けた欧州債券市場の動向も注目される。
米ドル/円は高値圏でのもみ合いが続く見込みだが、159円付近では当局の口先介入が意識され、160円を超えると実弾介入への警戒が一段と強まるため、高値では戻り売りが出やすいだろう。ユーロは、フランスの政局・財政不安を背景に仏10年債利回りが上昇しており、ユーロドルは年初来安値圏の1.1150ドル台、ユーロ円は176円台に下落している。仏予算審議を通過するまでは、ユーロ円などクロス円も上値の重い展開が想定される。
日米欧の注目材料を深堀り
米国:インフレ指標とFRB高官発言、株価動向
経済指標では、14日発表の9月CPIおよび15日発表の9月PPI、小売売上高が最大の焦点となる。9月コアCPIの市場予想は前月比+0.2%(8月実績:同+0.3%)、前年比+2.5%(8月実績:同+2.4%)となっている。CPIが大きく上振れなければ、10月FOMCでの政策金利据え置きの可能性が一段と高まる見通しだ。もっとも、上振れが回避されたとしても、前年比のコアCPIは依然としてFRBの物価目標である2%を上回っているため、12月利上げ期待は維持されるだろう。
金融政策面では、15日の地区連銀経済報告(ベージュブック)公表や、16日のウォーシュFRB議長とゲオルギエバIMF専務理事による対談が予定されている。10月末のFOMCに向けたブラックアウト期間直前の発言機会となるため、先々の利上げスタンスを探るうえで注目度が高い。また、13〜14日にはゴールドマン・サックスやJPモルガンなど米大手銀行の決算発表が予定されており、株式市場の動向を通じてドル相場に影響を与える可能性がある。
日本:10月30日の日銀金融政策決定会合を控える中、15日の小枝審議委員の講演・記者会見や、16日の内田副総裁による植田総裁挨拶の代読が注目される。小枝委員から強いタカ派メッセージが出る可能性は低く、代読挨拶も従来の経済・物価見通しに沿った内容になると予想されるため、10月利上げ見送りのシナリオを大きく変えるものではないだろう。
米ドル/円が160円に迫る中、15日からのG20財務相・中央銀行総裁会議やIMF総会前後に予定される植田総裁や片山財務相、ベッセント米財務長官らの発言には注意したい。高市政権は米側の「円の過小評価」や日本の財政懸念を意識し、国会等で「自身の政策はリフレ政策とは異なる」「財政の持続可能性と円の信認を確保する」と市場配慮姿勢(ワンボイス)を強めている。G20に際して円安けん制や口先介入が強まれば、米ドル/円の上値は抑制されやすいだろう。
欧州:フランスの財政や政局への懸念を背景とした仏債市場の不安定化を受け、ユーロの上値が重い展開が続いている。フランス政府は来年度予算案で財政赤字のGDP比を5.0%へ縮小すべく約540億ユーロ規模の歳出削減を目指しているが、少数与党であることやルペン氏率いる極右・国民連合(RN)の反発、学生らの抗議活動拡大により議会審議は難航している。12日からの仏議会での予算審議、14日のムーラン仏中銀総裁の講演、15〜16日のEU首脳会議での動向が焦点となる。
金融政策面では、IMF・世銀総会やG20に絡み欧州金融当局者の発言機会が多い。ECB内部ではエネルギー高の波及などを見極めるため、10月据え置き・12月利上げ検討が基本線とみられている。16日のベイリーBoE総裁講演も含め、11月・12月会合に向けた追加利上げや地ならしの動きがあるかが確認される。
ユーロ/米ドルは、欧州の政治・財政リスクが重石となり、直近安値の1.115を割り込む可能性を警戒する必要がある。ユーロ/円も直近安値(176.22)円割れを試す可能性があり、基本的には上値の重い展開が続くとみられる。
なぜ米CPIが重要視されているのか?
FRBは、雇用の最大化と物価安定という二大責務(デュアルマンデート)のうち、足元ではインフレ抑制に政策の重点を置いている。9月雇用統計では、非農業部門雇用者数の増加幅が8月の13.3万人増から2.9万人増へ縮小し、平均時給の伸びも前年比3.0%へ鈍化した。労働需給の逼迫によるインフレ圧力は限定的であり、連続利上げの必要性は低下した。
一方、物価面では、住居費の上昇に加え、住居費以外のサービスや一部の財価格にも上昇圧力が残っている。FRBはコアPCEなどを通じてインフレの基調を確認し、インフレ率が持続的に2%へ戻るかを見極めており、追加利上げの時期やペースは今後のインフレ次第である。
今週公表される9月CPI・PPIは、10月27~28日のFOMC前に得られる重要な物価指標となる。9月PCEの結果は10月FOMC後に公表されるため、CPI・PPIの結果は、追加利上げの必要性とタイミングに関する市場の見方を左右する材料となる。このため、9月CPI・PPIは10月会合や年末までの政策金利見通し、当面のドル相場を考えるうえで重要なイベントと位置付けられている。