「コリア・ディスカウント」解消なるか? 韓国株ファンドが約2年ぶりの復活!

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2026年09月01日

「コリア・ディスカウント」解消なるか? 韓国株ファンドが約2年ぶりの復活!

韓国株式の投資信託および上場投資信託(ETF)が2026年9月に相次ぎ設定される。国内籍公募の韓国株ファンドは、「スパークス・韓国株ファンド」(スパークス・アセット・マネジメント)が2024年11月に償還されて以降、1本も存在しない状態が続いていたため、約2年ぶりの復活となる。相場上昇を反映した露骨な商品戦略だと冷ややかな目で見る人はいるだろうし、韓国株の投資妙味についても様々な意見があるだろう。しかし、多くの分野で国際的な競争力を持つ隣国への有力な投資手段が加わることについては、純粋に歓迎したい。


「コリア・ディスカウント」の元凶は何か

QUICKのデータベースで探ってみると、過去に存在した国内籍の韓国株ファンドは8本。運用期間が20年近くに至ったファンドもあったが、5年程度と短命に終わったものも多い。韓国株ファンドが最もにぎわっていたのが2012年1月で、当時の韓国株ファンド7本の純資産総額合計は350億円近くに迫った。それでも、当時の公募追加型株式投信(ETFを除く)全体の0.1%にも満たない状況であり、韓国株ファンドは日本において、ほとんど存在感を示せていなかったのが実情だ。

国内籍公募の韓国株ファンドの純資産総額およびKOSPIの推移

理由は1つではないが、韓国株の慢性的な低評価、いわゆる「コリア・ディスカウント」が根底にあるのはおそらく間違いない。韓国経済はサムスン、SK、現代といった財閥の影響力が大きい(金融・保険業を除く全企業の売上高における財閥の割合は30%を超える<2024年基準※>)。上場する財閥系企業の株主も財閥オーナーおよびその関連会社が大きな割合を占めていた。結果的に少数株主の権利が蔑ろにされ、株主還元の意識も低かった面がある。

このほか、株式投資のベンチマークとして強い影響力を持つMSCIにおいて、「新興国(エマージング)」に据え置かれ続けている状況、首都ソウル中心部から北朝鮮との軍事境界線までの距離はわずか40~50キロ(東京から横浜と同程度のイメージ)という、地政学リスクの近接もコリア・ディスカウントに影響していたのかもしれない。


韓国バリューアップ・プログラム、東証改革との類似点と相違点は?

地政学リスクなどはすぐに解決できる問題ではない。ただ、より直接的な原因である企業ガバナンスや株主還元意識の問題については、政府主導のバリューアップ・プログラムによって、様々な手が打たれている。例えば、高配当企業に対する税制的なインセンティブの付与や、商法改正を通じた少数株主の権利保護の強化などがあげられる。

ROE(株主資本利益率)の向上やPBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正に主眼を置いている点では、東京証券取引所主導の「株価を意識した経営」の改革に似ており、実際に参考にしたとされる。一方で、「株主還元」に偏っている点において、東証改革との違いも浮き彫りになる。

日本における「失われた30年」の元凶は、企業がビジネスで得た利益を成長のための投資にも、株主還元にも回さないことだった。企業がキャッシュを貯め込むことで、イノベーションが促進されずに利益成長も低迷し、デフレスパイラルに陥った。東証改革における日本企業へのメッセージを端的に表現すれば「将来の成長のために積極的に投資しよう。でも、余った部分は株主還元してね」というものだろう。

一方、韓国企業は日本がデフレで苦しんでいる間に、研究開発への投資や設備投資を積極的に進め、技術や市場シェアにおいて日本企業との差を縮めていった。そういう意味で、韓国企業は日本企業とは異なり、将来のための投資に積極的だったともいえる。問題の中心は株主還元意識の欠如にあり、それが韓国企業の低ROE、低PBRにつながっていた。

もちろん、企業の意識が株主還元に偏り過ぎ、将来への投資が蔑ろになってしまえば、長期的には韓国の国際競争力を削ぐことになる。強い同調圧力に支配され、「パルリパルリ(早く!早く!=韓国社会のスピード重視の文化を象徴する言葉)」がキーワードという韓国社会において、株主還元意識が猛スピードで高まり過ぎる事態は最も警戒すべきポイントだ。

ただ、韓国政府は今年に入り、高配当企業が税制優遇を受け続けるためには、企業価値向上のための計画を開示することを義務付ける施策も講じている(韓国金融サービス委員会2026年2月24日プレスリリース)。

その意味では、韓国のバリューアップ・プログラムは東証改革を真似するだけでなく、韓国の状況を踏まえてカスタマイズされたものと言えよう。昨年以降の韓国株の上昇は半導体メモリ需要の急増を受けたサムスン電子やSKハイニックスの株価上昇が寄与している面が大きく、バリューアップ・プログラムの影響は注意深く見守る必要があるだろう。しかし、本格的なコリア・ディスカウント解消の兆候が見えてくれば、外国人投資家の資金流入が加速し、一段高につながる可能性も十分ある。


LNG運搬船やコンテンツ戦略…日本が目標にすべき分野も

G7の構成員で列強の一角である日本、発展途上国・新興国の韓国。技術を教える日本、技術移転によってそれを吸収する韓国――。誤解を恐れずに言えば、そのような「上下関係」で日韓を捉える人が、特に年配の方には多いのではないか。しかし、状況は大きく変わっている。

第一に、1人当たりGDP(国内総生産)において、韓国はすでに日本を抜いている。半導体特需の影響が大きいとはいえ、2026年上期の輸出額は韓国が日本を上回っており、輸出で外貨を稼ぐ貿易立国のお株は、韓国に奪われている状況だ。もちろん、いまだに日本が優位に立つ分野は多いが、日本が韓国を目標にしなければならない部分も少なくない。

日本・韓国の輸出額前年同月比伸び率推移


メモリ半導体に限らない。例えば、LNG(液化天然ガス)運搬船。AIによる電力消費量の急増で、石炭や石油よりも二酸化炭素排出量が少ないLNGの需要は拡大している。LNGを運ぶ運搬船(LNGタンカー)は独自の超低温技術が必要で参入障壁は高い。現状、世界シェアでは韓国がトップを走っており、日本は高市政権が注力分野と位置付けて、巻き返しを図ろうとしている。

日中韓における受注船の船種内訳


日本において官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は大赤字になり、廃止の方向となった。一方、韓国コンテンツ振興院(KOCCA)は音楽、ゲーム、映画・ドラマといったコンテンツにかかわる人材の育成や海外進出の支援など総合的に支援し、韓国のコンテンツ輸出額を着実に伸ばしている。コンテンツビジネスの世界展開を本気で推し進めようとする日本にとって見習うべきところは多くないだろうか。

韓国のコンテンツ産業輸出額


少子化と人口減少が急速に進む韓国にとって、海外に活路を見出すのは、必然のシナリオなのかもしれないが、日本も状況は大きくは変わらない。日韓関係を上下で考える時代はとっくに終わりを迎えており、ライバルと意識しつつも、補完し、協力しあうのが現在の日韓関係だろう。そう考えると分散投資の流れの中で韓国株をポートフォリオに組み込むことはさほど突飛なことでもない。


ドラマ『ガス人間』の一気見で思うこと

実は韓国のコンテンツの輸出額は、財の輸出額の数%程度の規模に過ぎない。それでも、この分野に注力を続けるあたりに、韓国のしたたかさが垣間見える。コンテンツそのもので稼ぐ額が大きくなくても、コンテンツに触れた海外の人が韓国の食文化や化粧品に興味を持ったり、韓国に旅行に行って消費したりすることも考えられるし、韓国そのもののイメージ向上にもたらす影響も大きいだろう。ソフトパワーが経済に与える長期的な影響は計り知れない面があるのだ。

報道などで、現在の日韓関係は「戦後最良」などとされている。その背景には、互いの文化に触れ合うことで、誤解が解け、理解が深まったことがあるのではないか。かつての日韓関係はゲーム理論でいう「囚人のジレンマ」の要素が強かったというのが筆者の理解だ。本来、協力し合うのが最良の結果をもたらすのだが、コミュニケーションを拒み、自らの利益を追求することで、双方とも損をする結果になる。しかし、コミュニケーションの壁は徐々に取り払われつつある。

そういえば、先日、ネットフリックスで配信されている小栗旬さん、蒼井優さん主演のドラマ『ガス人間』を一気見してしまった。1960年公開の特撮映画『ガス人間第一号』のリブートで、現代の日本を舞台にした作品だ。しかし、事実上の日韓合作でもあり、監督、脚本と日韓のトップクリエーターが手を取りあうことで、一級のエンターテイメント作品に仕上がっていた。ドラマを見ながら日本の未来に対する希望も湧いてきた。


<参考文献・サイト>
・高安雄一著「解説 韓国経済 第二版」(学文社、2026年発行)※24ページ
ニッセイ基礎研究所「グローバルに見た企業部門の資金過不足」(2026年8月26日)
アライアンス・バーンスタイン「知の広場 韓国のバリューアップ改革:ガバナンス改善の波がやって来た」(2026年4月10日)
・日本経済新聞電子版「日韓関係、戦後最良は本物か 自信と余裕で「冷めた対日観」背景に」(2026年7月17日)

著者プロフィール

海老澤界

海老澤界

松井証券シニアファンドアナリスト。横浜国立大学経済学部卒業後、日刊工業新聞記者を経て格付投資情報センター(R&I)入社。年金・投信関連ニューズレター記者、日本経済新聞記者(出向)、ファンドアナリストを経て、マネー誌「ダイヤモンドZAi」アナリストを務める。長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。投資信託を多面的にウォッチし、豊富な投信アワードの企画・選定経験から客観的にトレンドを解説。


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