米ドル/円の値動きを考えるうえで重要な4つの材料【鈴木翔の週間マーケットトピック】
1/12-16の米ドル/円は、パウエルFRB議長の訴追報道で一時157円台まで下落したものの、衆議院解散を受けた株高とともに一時159円を回復しました。しかし、節目の160円を目前にして片山財務相や三村財務官による円安けん制発言に加え、ベッセント財務長官が韓国ウォン安をけん制したことで米ドルが対アジア通貨で下落し、上値の重い展開となりました。
週末には、トランプ大統領がデンマーク自治領グリーンランドを取得するまで、欧州8カ国からの輸入品に10%の関税をかけると表明したことやFRB議長人事で最有力とみられていたハセット氏の議長指名が見送られると示唆したこと、自民党が食料品の消費税率ゼロを衆院選の公約に盛り込むことに前向きな姿勢を示したことなど、様々な材料が出てきました。
与野党で消費減税論が浮上
毎日新聞は16日、高市政権の衆院選公約として食料品の消費税率を時限的にゼロにする案が浮上したと報じました。食料品の消費税を巡っては、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」が時限的ではなく恒久的にゼロにしていくことも視野に検討していました。
高市首相は昨年の自民党総裁選で「即効性がないと考えた」として消費減税に否定的な見解を示していましたが、日本維新の会との連立合意書で食料品を対象に2年間の消費税率ゼロを検討すると記されていることや野党各党が衆院選の公約として消費減税を掲げたことなどから、自民党も食料品の消費減税を公約にする可能性が出てきました。与野党が食料品の消費減税を掲げることになれば、選挙結果がどうあれ、実現する可能性が高まると考えられます。
ただ、食料品の消費税率をゼロにすれば年5兆円規模の減収が見込まれることや時限的な減税であっても、一度税率が下がると元に戻しにくくなるリスクが意識され、円安・金利上昇が加速することは避けられないでしょう。自民党内部には食料品の消費減税による為替・金利市場への影響が大きいという意見もあるとみられ、自民党の選挙公約に入るのか注目です。
トランプ大統領がグリーンランドめぐる関税措置を表明
トランプ大統領は17日、欧州8カ国からの輸入品に関税を課すと表明しました。トランプ大統領はSNSへの投稿で、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドからの全ての輸入品に2月1日から10%の追加関税を課すと表明しました。6月1日には税率を25%に引き上げ、グリーンランドの「完全かつ全面的な購入」が実現する取引が成立するまで維持するとしました。
これに対し、EUは報復措置として930億ユーロの関税を準備しているとフィナンシャルタイムズが報じています。週明け19日のマーケットは、これを嫌気する形で、株式市場では日本株や米国株先物が下落、為替市場では円高ドル安、貴金属市場では金や銀が買われ、最高値を更新しています。
米欧の対立を背景にリスクオフとなっていますが、19-23日までスイスでダボス会議が開催されます。トランプ大統領を始め、主要国の要人が集まる予定となっており、グリーンランド問題について議論するとみられています。早ければダボス会議の期間中に何らかのディールが成立するかもしれません。
次期FRB議長人事
トランプ米大統領は16日、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長を称賛したうえで、次期FRB議長に指名することに難色を示しました。ハセット氏はパウエル議長に代わる次期議長の最有力候補とみられていました。トランプ大統領の発言を受け、予想サイトPolymarketではハセット氏の就任予想確率が大きく低下する一方、ウォーシュFRB元理事の就任予想確率が大きく上昇しました。市場は、利下げ積極派とみられるハセット氏の議長就任観測が後退し、利下げと同時にバランスシート縮小を主張しているウォーシュ氏の議長就任観測が高まったことから金利上昇・ドル高の反応となりました。
また、Bloombergは18日、パウエル議長の後任として米資産運用会社ブラックロックのCIOであるリック・リーダー氏の勢いが増していると事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたと報じました。リーダー氏は、3%前後までの利下げが妥当であることやバランスシートの活用余地があること、FRBの独立性が重要であるとの見方を示しています。
ベッセント財務長官は、次期FRB議長を巡る決定は19-23日に開催されるダボス会議の前後と述べており、早ければ今週中にも次期FRB議長が公表されるかもしれません。
日銀金融政策決定会合
今週22-23日に日銀金融政策決定会合が開催されます。今会合は「現状維持」がコンセンサスですが、注目は展望レポートと植田総裁の記者会見です。
会合を前に各社から観測記事が出ていますが、見方が分かれているようです。ロイターは、展望レポートで2026年度の経済・物価予測が引き上げられる可能性が高く、「市場が想定する半年に1度というペースより早いタイミングでの利上げが必要になる可能性もあるとの声がでている。」と報じています。一方、日経新聞は、生鮮を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通しに大幅な修正を見込む声は出ておらず、「日銀は2月に想定される衆院選後の政権の経済政策や金融市場の動向も注視する」と報じています。ロイターの観測記事の通り、展望レポートで物価見通しが大幅に引き上げられるようだと、利上げペース加速が意識され、円高が進行する可能性があるでしょう。
植田総裁記者会見では、足もとの円安進行を受けて今後の利上げについてどのようなスタンスを示すのか、注目が集まります。タカ派的なスタンスを示せば円高、ハト派的なスタンスを示せば円安、と素直な反応が見込まれますが、解散総選挙を前に明確に利上げスタンスを表明することは考えづらいでしょう。
まとめ
日米ともに様々な材料が混在する中、週初はグリーンランド問題を巡り欧州に関税を示唆したことによるリスクオフで円高・株安の展開となっていますが、1週間を通じて上記の4つの材料に動きが出る可能性があり、米ドル/円は上下にボラティリティの高い展開になるかもしれません。