米国主導で米ドル/円が乱高下【鈴木翔の週間マーケットトピック】

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2026年02月02日

米国主導で米ドル/円が乱高下【鈴木翔の週間マーケットトピック】


日米当局によるレートチェック報道で円高ドル安が進んだ流れを引き継ぎ、1月最終週も米ドル/円の下落が続いた。28日にはトランプ大統領のドル安容認発言を受けてドルが全面安となり、米ドル/円は一時152.10円の安値を付けた。しかし、29日にベッセント財務長官がトランプ大統領のドル安容認発言の火消しに回り、ドルが反発。週末には次期FRB議長人事が公表され、ドル高買戻しの流れが続いた。結局、米ドル/円は往って来いの展開となり、155.21円で取引を終えている。


トランプ大統領の「ドル安容認」発言

ドルインデックスが約4年ぶりの安値水準に下落する中、トランプ大統領は記者団からドルの下落を懸念しているかと問われ、「いいや、素晴らしいと思う」と述べた。中国と日本にも言及し、「中国と日本は常に通貨安を望んでいた」と語った。

米国の貿易赤字は2024年に過去最大の1.2兆ドルを記録する中、トランプ大統領はかねてより「アメリカは貿易で他国に搾取されている」と主張している。トランプ政権では、関税政策とドル安誘導によって、貿易赤字縮小と製造業の国内回帰などを目指すとみられており、目新しい発言ではなかった。

ドル安誘導に関しては、第二次トランプ政権発足直後から、スティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長が提唱した「マールアラーゴ合意」が実現するのではないかとの見方が強まっていたが、就任1年目で実現することはなかった。

しかし、就任2年目となる今年、23日のNY連銀によるレートチェック報道をきっかけに日米で円安修正の思惑が一致したとの見方から協調介入観測が高まり、ドル安が進行。日米当局がレートチェックや介入に関して沈黙を続け、市場が疑心暗鬼になる中、トランプ大統領がドル安容認発言をしたことでドル売りが加速した。


ベッセント財務長官が介入を否定

トランプ発言を受けてドル売りが加速する中、ベッセント財務長官は28日、CNBCとのインタビューで米国が為替市場に介入して円高を誘導しているのかと問われ、「絶対にしていない」と即答した。今後行う計画はあるか問われると、「強いドル政策をとっているということ以外、コメントしない」とも述べ、トランプ大統領のドル安容認発言の火消しに回った。

NY連銀によるレートチェック報道やトランプ大統領のドル安歓迎発言を受けて、市場ではついに米国がドル安誘導に動くとの思惑が強まったが、ベッセント氏が改めて「強いドル政策」を唱えたことで為替市場には安心感が広がり、ドルは反発に転じた。

ベッセント氏は財務長官就任以来、一貫して「強いドル政策」を支持してきた。もっとも、「強いドル」とは、単に他国通貨に対してドルが上昇することではない。米国を世界で最も魅力的な投資先にすることで、結果としてドルが強くなり、基軸通貨を維持し続ける政策を指す。

トランプ大統領自身も「強いドル政策」を支持している。BRICSが通貨創設を表明した際、「基軸通貨としてのドルを奪おうとしている」と述べている。貿易赤字削減や自国製造業の保護などの観点でドル安を望んでいるものの、基軸通貨ドルの放棄を望んでいるわけではないことに留意する必要がある。


米財務省為替報告書

1月29日には、米財務省が為替報告書を発表した。為替報告書は半期に1度、年2回発表することが法律で定められており、毎年4月、10月の発表が通例だったが、第1次トランプ政権以降、スケジュールが不規則になっている。

今回の報告書では、為替相場を操作した国及び地域は存在しないとした。一方で、多額の対米貿易黒字や経常収支の大幅黒字などを抱える国・地域を対象とする監視リストに10の国と地域を指定した。
監視対象国は、中国、日本、韓国、台湾、タイ、シンガポール、ベトナム、ドイツ、アイルランド、スイスの10ヶ国となった。今回新たにタイが追加となった。

日本に関しては、前回の為替報告書において指摘されていた「金融引き締めが引き続き進められるべき」といった文言が削除されており、足元の円安について「日本と主要な貿易相手との間の金利差が大きいことに加え、日本の新政権の下で一段と拡張的な財政政策が講じられるとの見通しが主な要因だ」との指摘があった。

日銀に利上げ継続を求める表現を削除したのは、日銀の利上げ継続による金利上昇が米国に波及することを避けたいとの思惑があったとみられる。米国は日銀の積極的な利上げは望まず、高市政権の積極財政スタンスの修正による円安是正を求めているのではないだろうか。


FRB次期議長人事

激動の1月の締めくくりはFRB次期議長人事となった。トランプ米大統領は30日、次期FRB議長にケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名すると発表した。ウォーシュ氏の指名発表直後、金融市場では株安・ドル高・金利上昇の反応となり、足元急騰していた金や銀などの貴金属が急落した。

金融市場が警戒しているのは、ウォーシュ氏のバランスシート政策だ。ウォーシュ氏はFRBのバランスシートを縮小すべきとの考えを持っている。FRBがバランシートを縮小すれば、市場のマネーを吸収することで金利が上昇し、株式市場には逆風となる。

もっとも、ウォーシュ氏の利下げスタンスやバランスシートを縮小するための具体的な政策方針は不明だ。ウォーシュ氏は財務省とFRBは財務省との新たな政策協定(アコード)が必要とも主張している。金融政策の基本的な方針が明らかになるまでボラティリティの高い相場が続くだろう。

ウォーシュ氏がFRB議長に就任するには上院の承認が必要になる。具体的な政策については、今後数週間以内に開催が見込まれている上院銀行委員会での公聴会で明らかになる見込みだ。ウォーシュ氏の政策スタンスが明らかになり、金融市場の警戒感が後退するか注目だ。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


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