止まらない円安ドル高 日銀会合で米ドル/円はどう動く?
先週の米ドル/円は、中東情勢の緊迫化と原油価格の乱高下に大きく振り回され、年初来高値を更新する展開となった。週明け9日の東京市場早朝には、時間外のWTI原油先物価格が一時120ドル付近まで急騰したことを受け、米ドル/円は158.90円まで上昇した。しかし、トランプ米大統領がイランとの戦争について早期終結の可能性を示唆したことや、G7による石油備蓄の共同放出協議の報道を受けて原油価格が反落した。これに伴い、米ドル/円は、10日の欧州時間に一時157.26円まで下落したものの、イランによるドローン攻撃や機雷敷設の懸念などから再び原油高・金利上昇となり、ドル買いが優勢となった。11日以降も原油価格の高止まりと米長期金利の上昇を背景にドル高基調が継続し、13日には、イランの新最高指導者モジタバ師がホルムズ海峡の封鎖継続を明言したことや、米軍によるイランのカーグ島軍事施設への攻撃などが伝わり、地政学リスクへの警戒感が一段と高まった。これに伴い、安全資産としてのドル買いが加速し、ドル円は年初来高値となる159.75円まで上昇し、159.72円で取引を終えた。
1.イラン情勢と原油価格
イランの新たな最高指導者にハメネイ師の次男であるモジタバ師が選出されたことで、イランが米国やイスラエルに対して妥協する可能性は大きく後退した。モジタバ師は就任後の声明で、抵抗の継続とホルムズ海峡の封鎖維持を強調しており、強硬路線の継承が鮮明となっている。一方、トランプ大統領は軍事作戦が想定を上回るペースで進展していると述べ、早期終結の意向をにじませているが、イラン側の抗戦姿勢が変わらない限り、事態の根本的な解決は困難な状況だ。
原油価格は、こうした不透明な情勢を反映して高止まりしている。G7の協調姿勢やトランプ大統領の発言で下落する場面があったが、ホルムズ海峡での船舶攻撃や機雷敷設の脅威、さらにはイランの原油輸出拠点であるカーグ島への空爆などが報じられると再び急騰。WTI原油先物価格は上昇を続け、再び100ドルをうかがう展開となった。IEA(国際エネルギー機関)は過去最大規模となる4億バレルの石油備蓄の緊急放出を決定したが、市場ではホルムズ海峡を通じた供給の抜本的な改善には至らないとの見方が大勢を占めている。今後、戦闘が短期で終結すれば原油価格は沈静化に向かう余地があるが、イランの機雷敷設などによりホルムズ海峡の安全が確保されない状態が継続すれば、原油価格は100ドル超の環境が定着し、グローバルなインフレ圧力を高め続けるリスクが残されている。
2.日銀金融政策決定会合
今週18~19日に開催される日銀の金融政策決定会合では、政策金利の据え置きが市場のコンセンサスとなっている。事前の観測報道では、原油高が企業業績や国内景気に与える打撃を見極めるため、追加利上げは4月以降に持ち越されるとの見方が示されている。原油高に伴うインフレの上振れリスクと、それに伴う景気減速(スタグフレーション)懸念が交錯する中、植田総裁の会合後の記者会見で、将来の利上げに向けたどのようなメッセージが発信されるかが最大の注目ポイントとなる。
タカ派的据え置き:4月利上げを示唆した場合
物価上昇の基調を背景に、原油高によるインフレリスクを警戒し、状況次第では機敏に対応するとの姿勢が強調された場合、市場では4月利上げの期待が維持される。このシナリオでは、円の買い戻しが入りやすくなり、米ドル/円の上値は抑えられ、伸び悩む展開が予想される。
ハト派的据え置き:利上げ時期の後退の場合
原油高による実体経済への悪影響を強く懸念し、追加的な引き締めに慎重なトーンが強まった場合、市場で高まっていた4月利上げの期待が一気に後退する。この場合、失望からの円売りが加速し、原油価格上昇に伴う実需の円安圧力も相まって、さらなる円安・ドル高トレンドが進行するリスクが高まる。
3.今週の注目材料と米ドル/円の見通し
今週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀、英中銀(BOE)、欧州中央銀行(ECB)など主要国の中央銀行の会合が集中する「中銀ウィーク」となる。米国では政策金利の据え置きが見込まれる中、FRBが原油高によるインフレリスクや雇用市場の状況をどのように評価し、今後の金利見通し(ドットチャート)に反映させるかが焦点となる。また、19日には高市首相が訪米し日米首脳会談が開催される予定であり、ホルムズ海峡の安全確保に向けた連携の行方にも注目が集まる。
今週の米ドル/円は、引き続きイラン情勢のヘッドラインと原油価格の動向に神経質に反応する展開が予想される。原油価格の高止まりによる日本の貿易収支悪化懸念と、地政学リスクを背景とした「有事のドル買い」が下支えとなり、基本的には堅調推移継続を想定。米ドル/円は、160円の大台を試す可能性が高まっているが、160円に接近する局面では、本邦当局による実弾介入への警戒感や高値圏での利益確定売りが上値を抑える要因となるとみられる。高値圏での荒い値動きに注意しつつ、各国の金融政策スタンスの変化や要人発言を慎重に見極める一週間となるだろう。