中銀ウィーク通過 米ドル/円の160円突破は時間の問題か

NEW

2026年03月23日

中銀ウィーク通過 米ドル/円の160円突破は時間の問題か


先週(3月16日~20日)の米ドル/円相場は、緊迫化するイラン情勢とそれに伴う原油価格の乱高下に振り回される展開となった。週初16日は、原油価格の上昇が一服したことや、片山財務相による「断固たる措置を含めた姿勢でいる」との強い円安牽制発言などを受けて、一時158円台後半まで下落した。しかし、その後は米長期金利の上昇や原油価格の再上昇を背景に反発に転じた。18日には、米PPIの市場予想上振れや米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエルFRB議長の会見がタカ派的と受け止められたことでドル買いが加速し、一時159.90円と160円の大台に迫る水準まで上昇した。19日には、日銀金融政策決定会合後の植田総裁記者会見で4月利上げを排除しなかったことから円買戻しが進み、20日には一時157.51円まで下落した。週末20日は、ポジション調整が一巡したことや中東情勢の長期化懸念から再び原油価格や米金利が上昇したことでドル買いが優勢となり、159.23円で取引を終えた。


FOMC

現地時間18日に結果が公表された3月のFOMCでは、市場の予想通り政策金利(FF金利誘導目標)が3.50〜3.75%に据え置かれた。利下げを主張して反対票を投じたのはミラン理事1名にとどまり、これまでハト派的な姿勢を見せていたウォラー理事も据え置き支持に回った。
政策金利見通し(ドットチャート)では、2026年および2027年の利下げ回数の中央値は前回と同じく1回に維持されたものの、2回以上の利下げを見込むメンバーが減少し、分布全体としてはタカ派方向へとシフトした。
パウエル議長は記者会見において、エネルギー価格の高騰がコアインフレに波及する可能性に懸念を示し、「インフレ面での進展がなければ、利下げはない」と明言しました。さらに、次回の基本シナリオは利上げではないとしながらも、会合で利上げの可能性についても議論されたことを明らかにした。
こうしたFRBのタカ派的なスタンスやイラン情勢の長期化懸念を受けて、年内の利下げ観測が大きく後退し、一時は利上げへの転換を織り込む動きまで見られた。FRB高官は依然として年内の利上げを想定していないと見られるが、インフレ高止まりのリスクから利下げのタイミングは後ずれする可能性が高くなっている。FRBが利下げを急がない姿勢を示したことで、イラン情勢の明確な鎮静化が見られるまではドル高・円安圧力は継続しやすいだろう。


日銀金融政策決定会合

19日に結果が公表された日銀金融政策決定会合では、賛成多数で政策金利を0.75%に据え置くことが決定された。高田委員は前回の会合に続いて1.0%への追加利上げを主張し、反対票を投じた。
植田総裁の記者会見では、原油価格の上昇が基調的な物価上昇率に及ぼす影響について、「上振れリスクを指摘する委員の方が多かった」と説明され、インフレに対する警戒姿勢が示された。植田総裁は、基調物価の方向性について「短期間でもわかる可能性はある」と述べ、次回4月会合での利上げの可能性を排除しなかった。また、より精緻に物価動向を把握するため、政策要因を除いた新たなコア指標の公表や、自然利子率の再推計を行う方針も打ち出された。
市場では引き続き4月会合での追加利上げ確率を6割程度織り込んでいる。中東情勢による景気下押しリスクが存在する中でも、日銀がインフレ上振れリスクを重視するタカ派的な姿勢を示したことは、一定の円の下支え要因となる。目先は、4月1日の日銀短観、6日の日銀支店長会議、13日の植田総裁挨拶での情報発信に注目が集まる。
しかしながら、原油高による日本の貿易赤字拡大という構造的な円売り圧力も根強く、実質金利の低さも相まって円高転換を見込むのは難しい状況であり、米ドル/円は底堅い推移が続くことが見込まれる。


今週(3月23日〜27日)の注目材料と米ドル/円の見通し

今週は、23日に連合の春闘第1回回答集計結果が発表される。高水準の賃上げが確認されれば日銀の早期利上げ期待を後押しし、円のサポート要因となる。また、24日に発表される日本の2月全国消費者物価指数(CPI)や、欧米の3月PMI(購買担当者景気指数)速報値を通じて、イラン情勢の悪化が企業センチメントにどのような影響を与えているかを見極めることになる。
中東情勢については、トランプ大統領が日本時間22日(日)の午前8時44分に自身のSNSに「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ、イランの複数の発電所を攻撃し、壊滅させる」と投稿。これに対しイランは、発電施設が攻撃を受けた場合、ホルムズ海峡を完全に封鎖するとしており、これが23日の株安の一因となっている。
トランプ大統領が設定したタイムリミットが24日(火)の午前8時44分となる中、米国とイランの対立がエスカレートすれば、「有事のドル買い」と原油高を通じた日本の貿易赤字拡大懸念から円安圧力が一段と強まり、節目の160円を突破する可能性が高まる。
ただし、片山財務相が「断固たる措置」と強いトーンで繰り返し牽制している通り、160円に近づく局面では本邦当局による実弾の為替介入への警戒感が一段と高まるため、上値は抑えられやすい。介入警戒感と原油高圧力の綱引きが続くだろう。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


実施中のキャンペーン・
プログラム

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。署名・捺印・書類の郵送は不要です。

口座開設(無料) 口座開設サポートへご相談

口座開設サポート 電話番号

電話アイコン IP電話等:03-5216-0617