【米ドル/円】今週にも160円突破か 今週の注目材料を解説

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2026年06月01日

【米ドル/円】今週にも160円突破か 今週の注目材料を解説


先週の振り返り

週初、米国とイランの合意期待から原油価格が大きく調整し、有事のドル買いが巻き戻されたことで米ドル/円は158円台後半まで下落して取引を開始した。しかし、その後は合意内容を巡る不透明感や、ホルムズ海峡付近での米イラン双方による散発的な軍事衝突が報じられたことでドルが買い戻され、米ドル/円は159円台前半から半ばへとじり高の展開となった。27日の植田日銀総裁の挨拶で6月利上げへの明確な示唆がなかったことも円売りを後押しした。28日には一時159.65円の高値をつけたが、同日夜に米イランの暫定合意が報じられると159.10円まで急落し、週末はトランプ大統領の承認待ちという状況下で159円台前半を中心とした小動きで引けた。なお、財務省は29日、4月28日から5月27日までの介入総額が過去最大の11.7兆円規模であったことを公表したが、相場の反応は限定的だった。


米イラン合意について

トランプ大統領がSNSで「大部分は交渉済み」とし、30日以内のホルムズ海峡航行正常化を含む合意成立が間近であるとの期待が市場で急速に高まった。しかし、イランによるクウェートへのミサイル攻撃や米軍によるイラン軍事施設への報復攻撃など、軍事的な応酬が散発し、合意の実現性に疑義が生じる場面が見られた。

28日には、60日間の停戦延長と核協議開始を柱とする「暫定合意(覚書)」に両国の交渉担当者が達したと報じられた。しかし、週末にかけてトランプ大統領は「内容に満足していない」として、高濃縮ウランの引き渡し方法やホルムズ海峡の管理権限など、より厳しい条件を盛り込むよう複数の修正を要求した。大統領は数日間の検討期間を設けるとしており、最終的な判断が持ち越されている。


米国の金融政策

米国の経済指標が底堅い推移を見せる中、FRB高官からはタカ派的な発言が相次ぎ、ドルを支えている。先週発表された5月CB消費者信頼感指数が予想を上回ったこと、耐久財受注も好調な伸びを見せるなど、米経済の堅調さが再確認されている。

先週はFRB高官発言も相次いだ。ウォラー理事はインフレの沈静化が不十分であれば「将来的な利上げの可能性を排除しない」とし、緩和バイアスの削除を支持する姿勢を示した。クック理事も、ディスインフレが適時に実現しない場合は「利上げを行う用意がある」と述べている。

米国経済が底堅く推移し、インフレへの警戒感が高まる中、市場では利下げ開始時期の後ずれが意識されるとともに、一部で利上げ再開リスクまでが意識されるようになり、米長期金利が4.5%前後で高止まりする中でドル高が進んでいる。


日本の金融政策

市場では、日銀の政策対応の遅れ(ビハインド・ザ・カーブ)に対する懸念が円売りの一因となっている。実質金利が大幅なマイナス圏に留まる中、中東情勢を受けた原油高が日本の期待インフレを押し上げており、債券市場の不安定化とともに円安圧力が根強い。

こうした中、6月3日に予定される「きさらぎ会」での植田総裁講演が最大の焦点となっている。講演のポイントは、総裁が原油高や円安によるインフレ上振れリスクをどの程度警戒し、次回の金融政策決定会合(6/15-16)に向けて利上げのシグナルを発するかどうかにある。

市場では25bpの利上げが7割以上織り込まれているが、植田総裁が利上げに対して慎重な姿勢を崩さない場合、ビハインド・ザ・カーブ懸念がさらに強まり、160円を突破し、円安が加速する可能性がある。


今週の注目材料

今週は、1)米イラン合意の行方、2)植田日銀総裁講演、3)米雇用統計という、相場の方向感を左右する材料が重なる1週間となる。植田総裁の講演次第では円安が加速、雇用統計などの米経済指標次第ではドル高が加速し、レジスタンスとなっている160円を突破する可能性が高いとみている。

1)米・イラン間の停戦合意の成否
60日間の停戦延長やホルムズ海峡の航行正常化を目指す暫定合意案について、トランプ大統領の最終判断が持ち越されており、今週はヘッドライン次第で荒い値動きとなる可能性がある。正式合意に至れば原油安を通じてドル安・円高圧力となる一方、承認見送りとなれば再び原油高とインフレ懸念が強まり、ドル買い進行となる可能性がある。

2)植田日銀総裁講演
3日に予定されている植田日銀総裁の講演(きさらぎ会)が、6月15〜16日の金融政策決定会合に向けた「地ならし」の場として注目を集めている。市場では6月利上げの期待が依然として根強く、総裁が物価上振れリスクへの警戒を強め、利上げに前向きな姿勢を示すかどうかが最大の関心事となっている。ここで具体的な示唆がない場合、日銀の対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が再燃し、円安が加速する可能性がある。

3)米雇用統計
米国市場における最大の焦点は、週末5日に発表される5月雇用統計だ。非農業部門雇用者数は堅調な伸びが見込まれており、労働市場の底堅さが再確認されれば、FRBが利下げを急ぐ必要性はさらに乏しくなるだろう。また、週初にはISM製造業景気指数、週半ばにはISMサービス業景気指数やベージュブック(地区連銀経済報告)も予定されており、エネルギー価格高騰が実体経済や物価に与える影響が注視される。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


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