中銀ウィーク後に米ドル/円上昇 為替介入はいつ?
振り返り
先週の米ドル/円は、日米金融政策イベントを通過し、上値を試す展開となった。週初15日の東京時間早朝、米・イランの和平合意が伝わると、原油価格の下落とともにドル売りが優勢となった。米ドル/円は一時159.74円まで下落し、週の安値をつけた。16日には市場予想通り、日銀が政策金利を1.00%へ引き上げることを決定した。しかし、市場が期待していた利上げペース加速などタカ派的な発言がなかったことから、円高進行とはならなかった。週後半17日以降は、ウォーシュ新議長の下で初のFOMCが開催された。政策金利は市場予想通り据え置かれたものの、参加者のFF金利見通し(ドットチャート)が想定以上にタカ派的であったことがサプライズとなり、ドル全面高の展開となった。米ドル/円は2024年4月の介入前高値である160.72円を突破し、18日には161.81円まで急伸した。週末19日は高値警戒感や本邦当局者による円安牽制発言もあり、上げ幅を縮小した。
米イラン和平合意
・和平合意に至った経緯と合意内容
中東情勢は、2月末のイスラエルと米国によるイラン攻撃と、それに対するイランのホルムズ海峡封鎖という事態から、4月以降の停戦交渉を経て改善に向かった。17日に米国とイランの間で、戦闘終結に向けた14項目の暫定合意の覚書が署名された。
・合意内容の主なポイント
1) ホルムズ海峡の封鎖解除と船舶航行の再開
米国は30日以内に海上封鎖を完全に解除し、イランは商船の安全な航行を60日間無償で保証する。
2) イランによる石油販売の即時再開
米国は、イラン産原油、石油製品および派生製品などの輸出に対する制裁免除。
3) 最終合意に向けた協議の継続
米国とイランは双方の合意により、延長可能な最大60日以内に最終合意を交渉、締結することに合意する。最終合意が成立するまでの間、米国はいかなる制裁も課さず、また地域への追加部隊の派遣も行わない。
4) イランの核兵器保有放棄への同意
イランは核兵器調達、開発停止を表明。ウラン濃縮の停止や既存の濃縮ウランの取り扱いについては、今後の協議次第。
・和平協議第1回会合
スイスで開催された米国とイランの和平協議は22日、第1回会合が終了した。協議には、バンス米副大統領やイランのアラグチ外相らが参加し、60日以内の最終合意を目指すロードマップで合意した。さらにレバノンにおける軍事行動停止の順守を支援するため、当事者とレバノンが参加する「衝突回避チーム」を設置することでも合意した。
日銀会合レビュー
・会合結果のまとめ
日銀は6月15-16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.00%へ25bp引き上げることを決定した。これは1995年8月以来、31年ぶりの水準である。票決は賛成7、反対1の多数決であり、浅田委員が「生産・雇用の下振れリスクの方が大きい」として唯一据え置きを主張した。また、これまで段階的に減らしてきた国債購入については、2027年4月以降の買い入れ額を月2兆円程度で固定することを決定した。
・市場の反応
市場は、利上げと国債買い入れ減額停止を事前に概ね織り込んでいたため、結果公表直後の反応は限定的だった。声明文では「実質金利がきわめて低い水準にある」との文言が削除され、「現在の金融環境は緩和的」と修正されたことや消費者物価の基調的な上昇率が2%の「物価安定目標」を超えて上振れていくリスクに言及するなど、前回会合からの変更が確認されたが、相場の反応は限定的となった。内田副総裁記者会見では、市場の関心事である具体的な利上げペースのヒントがなかったため、米ドル/円は小幅に上昇で反応した。
・今後の見通し
日銀は引き続き半年サイクルでの利上げを実施するとみられ、次回利上げ時期については12月を予想する。ただ、今会合の声明文において、基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れていくリスクがあることに言及しており、物価の上振れリスクが高まった際には10月に前倒しで利上げを実施することも考えられる。利上げの到達点(ターミナルレート)に関しては、日本の潜在成長率の低さから、日銀が想定する中立金利レンジ(1.1~2.5%)の下限に近い1.5%が妥当な到達点になるとみられている。
FOMCレビュー
・会合結果のまとめ
ウォーシュ新議長の下で開催された6月FOMCでは、政策金利(FF金利)を3.50-3.75%で据え置くことを全会一致で決定した。同時に発表された経済見通し(SEP)とドットチャートは市場予想を上回るタカ派的なものだった。2026年末の金利見通し中央値は3.80%に引き上げられ、18名の参加者のうち9名が年内1回以上の「利上げ」を想定、そのうち6名は複数回の利上げを主張した。
・市場の反応
FOMC参加者から利上げの可能性が示唆されたことは市場にとって大きなサプライズであり、米金利上昇とともにドル全面高となった。ウォーシュ議長は、声明文を大幅に簡素化し、先行きの利下げを示唆する緩和バイアスを完全に削除するなど、FRBのコミュニケーションのあり方を抜本的に見直す姿勢を鮮明にした。
・今後の見通し
ウォーシュ議長は、フォワードガイダンスは市場機能を低下させるとして否定的な立場をとっており、今後は発表される経済指標に対して市場がよりダイレクトかつボラタイルに反応するライブ(経済指標や情勢次第で金融政策の方向性が会合のギリギリまで決まらない)な状況が続くと思われる。インフレ率が2%目標に対して上振れている状態が続いている中、今後のデータを受けていつ利上げの判断を下すかに市場の関心が集まる。
今週の注目材料と米ドル/円の見通し
今週は、23日に日米欧の6月製造業・サービス業PMI発表、24日に6月日銀会合の「主な意見」公表、25日(木)に1-3月期米GDP確報値と5月PCEデフレーターの発表、26日(金)に6月東京都区部CPI発表が予定されている。
米ドル/円は先週、4月の介入前高値160.72円を突破し、2024年7月の高値161.95円に迫っている。162円の大台を目前に控え、市場では本邦当局による円買い介入への警戒感が高まっている。片山財務相は「投機的な動きがあれば断固とした措置をとる」と述べており、木原官房長官も為替市場の動向を注視する姿勢を強めている。
現在の米ドル/円上昇の主因は、米利上げ期待上昇を背景にしたドル高だ。ドル高局面での円買い介入は効果が薄いとみられるが、投機筋の円ショートポジションが14万枚まで積み上がっている現状を鑑みれば、本邦当局は「過度な投機的動き」を大義名分として、いつ介入に踏み切ってもおかしくない。
162円前後で介入が実施された場合、一時的な水準調整が起きる可能性があるが、日米の金利差(実質金利差)や米国の利上げ期待というファンダメンタルズがドルを支えている以上、介入効果は一時的なものに留まりやすいだろう。