米国債買戻し増額がドル高基調転換のきっかけに?
振り返り
17日の米ドル/円は、朝方から下落が続き、一時158.85円まで値を下げた。しかし、トランプ米大統領がイランとの覚書延長を必要としない姿勢を示したことなどを受け、ドル買い優勢となり、18日には159.78円の高値を付けた。19日は、米財務省が流動性支援を目的に長期・超長期国債の買い戻し(バイバック)規模を倍増すると発表したことが材料視され、米長期金利の低下とともにドル売りが進行し、米ドル/円は一時158.03円まで下落した。翌日には米金利がバイバック増額の公表前の水準を回復する中、159円付近まで値を戻して越週した。
米財務省が国債買い戻し増額を発表
米財務省は2026年8月19日、長期(10-20年)および超長期(20-30年)ゾーンの国債買い戻し規模を大幅に拡充する方針を公表した。現在、1回当たり最大20億ドルとしている規模を、少なくとも2倍の40億ドル以上に引き上げる。米債利回りのスティープ化(長期金利が短期金利より高く上昇すること)圧力が強く、超長期債市場の不安定化が警戒される中、当局が行動を示すことで市場の安定を図る狙いがある。
発表を受け、米長期金利は急低下し、イールドカーブはブルフラット化(長期金利が短期金利より大きく低下し、イールドカーブの傾きが平坦になること)した。しかし、金利低下は一時的なものにとどまり、翌日には概ね元の水準まで戻っており、市場ではこの措置が長期金利上昇の根本的な解決にはならないといった懐疑的な見方が優勢となっている。現在の金利上昇の背景には、AI設備投資の活発化によって米国経済が堅調に推移していることや、ハイパースケーラーによる巨額の社債発行、米国の膨大な財政赤字といった構造的な要因があるためだ。
為替市場ではドル安基調が継続している。ドル安が進行しているのは、1)国債買戻しで供給を減らせば、需給を通じて金利を押し下げる効果が生じる。同時に短期国債(T-bill)の発行が増えると発行サイドからも金利上昇圧力を和らげられる。これは量的緩和(QE)に類似した効果がある、2)FRBがインフレ抑制のために高金利を維持している局面で、財務省が金利低下方向に働きかけると、中央銀行の独立性や金融抑圧の懸念が生じる、3)インフレが高止まりする中で名目金利が抑えられると、実質金利が押し下げられる、などの要因がある。これをきっかけにドル高基調が転換するか注目だ。
今週の注目材料
24日(月)は、ベッセント米財務長官の記者会見が予定されている。会見では、米国がイランとその貿易相手国を経済的に孤立させる「前例のない規模の金融攻撃」を発表する見通しだ。ただ、イランはすでに数十年にわたって厳しい制裁を受けており、米政府にどのような有効措置が残されているかは不透明だ。原油に焦点を当てれば、イランの原油輸出の90%を購入している中国が標的となる可能性が高い。習主席が9月に訪米を控える中、中国を標的にする可能性は低いとみられるが、発表の内容次第では米中間の緊張が高まる可能性には留意したい。
27日(木)は、日銀の氷見野副総裁が金融経済懇談会で講演を行う。氷見野氏は2025年1月の会合で利上げを決める前、講演で予告とも取れる発言をした経緯がある。市場が9月利上げを80%程度織り込む中、利上げ予告の有無に注目が集まる。
米国では、27日(木)からジャクソンホール会議が開催される。今年のテーマは「金融イノベーションが決済と政策に与える影響」であり、ステーブルコインなど新たな決済手段への対応が議論される見通しだ。ジャクソンホール会議は過去にも金融政策の転換点となってきており、28日のウォーシュ議長講演への注目度が高い。
ウォーシュ議長はフォワードガイダンスに消極的だが、FTは8月6日、議長が7月FOMC時点でインフレ抑止への姿勢が不明確だったことを反省し、インフレ減速が確認できなければ利上げに転じる用意があるとの姿勢を強めていると報じている。ジャクソンホールでも9月FOMCの方向性を直接示唆することは避けるとみられるが、インフレを容認しない姿勢を明確に打ち出すかが最大の焦点になるだろう。