円安トレンドは転換したのか?FOMC・日銀会合後の見通しを解説
振り返り
先週(9月7日〜11日)の米ドル/円は、サポートとして機能していた155円の節目を下抜け、一時152.89円まで急落する展開となった。週後半にかけては中東情勢の悪化に伴う原油高や米物価指標の上振れを受けて154円台半ばまで押し戻されたものの、上値の重い推移が続いた。
米ドル/円は7日、特段の新規材料はなかったが、米国休場で流動性が低下する中、4月や7月に実施された累計27兆円規模の協調円買い介入でも明確に割り込むことのなかった155円の節目を、ついに下抜けた。翌日も円買いの流れが継続し、8日の東京時間に152.89円まで下落した。
背景には、ベッセント財務長官による円安是正への強いコミットメントや、日銀の利上げ加速観測、GPIFによる資産構成見直し観測など、日米の政策・需給期待の変化があった。これにより、155円近辺に集積していたストップロス(損失確定のドル売り・円買い)が連鎖的に誘発され、高水準に積み上がっていた投機筋の円ショート(円売りポジション)の買い戻しが一気に加速したとみられる。
足もとで意識される下値の目処は、1月27日につけた年初来安値である152.10円となる。年初来安値を明確に割り込んで円高が進んだ場合の下値の目処としては、心理的な節目である150円や25年4月安値(139.89円)から26年7月高値(163.99円)までの上昇幅に対するフィボナッチ・リトレースメント61.8%押しにあたる149.10円などが意識される。
今週は、日本時間17日3時にFOMCの結果が公表され、18日には日銀金融政策決定会合の結果が公表される。14日の11時時点で9月FOMCでの利上げ確率は90%弱、9月日銀会合での利上げ確率はほぼ100%となる中、日米中銀イベントを受けた米ドル/円の値動きに注目が集まる。
FOMCプレビュー
市場では、9月FOMCでFRBが25bpの利上げに踏み切るとの見方が強まっている。FRB高官らは、9月会合での政策判断が9月11日公表の8月CPIの結果次第であることを相次いで示唆していた。実際に発表されたコアCPIは前月比+0.3%と、前月の同+0.2%および市場予想同+0.2%を上回る結果となった。これを受けてインフレの粘着性が再認識され、市場が織り込む9月FOMCでの利上げ確率は直前の7割前後から90%弱へと急上昇した。市場が利上げをほぼ織り込んだ状態となっていることが、FRBの利上げ決断を後押しする根拠となる。
一方で、筆者はFRBが政策金利を据え置く可能性があると考えている。今回のコアCPIの前月比上振れは、携帯電話サービス(前月比+5.9%)や宿泊費といった単月でボラティリティが大きい特定項目の一時的な価格上昇に起因する部分が大きく、ノイズである可能性が高い。また、コアCPIの前年比で見ると、前月の+2.5%から+2.4%へ減速しており、基調的なインフレ沈静化のトレンド自体は崩れていない。雇用や消費の減速傾向を踏まえれば、政策金利が据え置かれるシナリオも排除できないとみている。
利上げを決定した場合、9月利上げ自体は織り込み済みであるため、初動のドル買いが一巡した後は、今回の利上げが単発で終わるのか、それとも12月以降も続く追加利上げサイクルの始まりなのかに焦点が移るだろう。
利上げを見送った場合は、利上げ期待の剥落からドル安が進むだろう。加えて、トランプ大統領の利下げ要求に応じた「政治への忖度」や、インフレ抑制に対するFRBの本気度の欠如と市場に受け止められれば、FRBの信認低下や政策対応が後手に回るビハインド・ザ・カーブへの懸念から、ドル安がさらに加速するリスクがある。
日銀金融政策決定会合プレビュー
9月17-18日の日銀金融政策決定会合では、政策金利(無担保コールレート)を1.00%から1.25%へと25bp引き上げることが確実視されている。利上げ自体は完全に織り込まれているため、市場の焦点は、今後の利上げペースと植田総裁の記者会見におけるトーンとなる。
足もと、米ドル/円が155円を割り込んでいることから、日銀は円安を抑え込むために極端にタカ派的な発言をする必要性が後退している。日銀としては、市場がすでに織り込んでいる3ヶ月に1回程度の継続的利上げの期待を追認すれば、円安再燃を回避できる状況にあるだろう。ただし、FRBが9月FOMCでタカ派的利上げを行った場合、植田総裁が追加利上げに対して慎重すぎる姿勢を見せれば再び日米金利差から円売りが強まるリスクがある。
一方で、植田総裁が毎回の会合で機動的に検討するとして10月利上げの可能性まで残すタカ派的な姿勢を示せば、年初来安値(152.10円)を試す追加の円高材料となる。もっとも、ロイターは11日、関係筋の話として、「将来の利上げの具体的な時期にコミットすることを避けるため、そうした表明に条件を付けるなどしてバランスを取るとみられる」と報じており、10月利上げを示唆するようなタカ派的な発言をする可能性は低いだろう。