弱い雇用統計も米ドル/円は上昇 その理由とは?

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2026年10月05日

弱い雇用統計も米ドル/円は上昇 その理由とは?


振り返り

週初28日は、原油価格の上昇などを背景に一時157.80円台まで上昇したものの、三村財務官による「円の過小評価は問題であるとの認識を日米両政府が共有している」との発言が伝わると、一時156円台半ばまで急速に調整した。その後は米10年債利回りの上昇に伴い157円台半ばへ持ち直した。

29日から30日にかけては、ウィリアムズNY連銀総裁による早期利上げ牽制発言や米戦略石油備蓄放出方針を受けた原油高の一服により、FRBの10月利上げ期待が後退した。四半期末の実需の円買い・ドル売りも重なり、30日には一時週安値となる156.38円まで下落したものの、米8月コアPCEデフレータの下振れを受けても下値は限られ、157円台前半で底堅く推移した。

10月1日は、日銀の9月金融政策決定会合「主な意見」や日銀短観がタカ派的と受け止められなかったことや、米長期金利が2002年4月以来の高水準へ上昇したことからドル買い・円売りが優勢となった。ドル円は週高値となる158.45円まで上昇したが、米9月ISM製造業景気指数の下振れやFRB高官の利上げ慎重姿勢を受けて一時157.20円台へ反落するなど、荒い値動きを見せた。

10月2日は、9月東京都区部CPIの上振れを受けて東京時間で円買いが先行し、夜間に発表された米9月雇用統計の弱さを受けて一時156.96円まで急落した。しかし、直後に米債利回りの反発や原油価格の再上昇とともに急速に買い戻され、結局157.80円台で取引を終えた。


9月雇用統計の結果と市場の反応

非農業部門雇用者数は、前月比+2.9万人となり、市場予想:前月比+9.0万人および8月結果:前月比+13.3万人を大きく下回った。過去2ヶ月分も合計6.0万人下方修正された。
失業率も4.2%へ上昇し、前月および市場予想:4.1%を上回った。ただし、労働参加率が61.8%へ上昇したことによる「良い失業率上昇」だった。
平均時給は、前月比+0.1%、前年比+3.0%ともに市場予想:前月比+0.3%、前年比+3.1%を下回り、2021年5月以来の低い伸びとなった。3ヶ月前比年率でも+2.4%へ鈍化し、労働市場からのインフレ圧力が限定的であることが示された。

弱い雇用統計を受け、結果発表直後は、10月FOMCでの追加利上げ期待が2割程度まで急低下し、米金利低下・ドル売りが進み米ドル/円は156.96円まで急落した。しかしその反応は短命に終わり、直後に米債利回りが反発に転じると米ドル/円も157.80円台まで急速に値を戻した。弱い結果にもかかわらず金利低下・ドル安が持続しなかった背景としては、以下の複数の要因が考えられる。

実績インフレ重視のFRBスタンス:ジェファーソン副議長やウィリアムズNY連銀総裁などのFRB高官は、賃金鈍化の中でもサービス価格や期待インフレ率の上振れリスクを警戒しているため、実績インフレ(10/14公表のCPIなど)を確認するまではFRBの利上げ姿勢に変化は生じないとの見方。

原油価格の再上昇:G7による合計1億バレルの石油・ディーゼル緊急備蓄放出が決定されたものの、供給懸念に対して不十分との見方や中東情勢の緊迫化(攻撃再開懸念等)から原油価格が再上昇・高止まり。

株式市場の上昇:雇用統計が「景気過熱を抑えつつインフレを緩和させる理想的な弱さ」と解釈されたことで米国株が上昇し、リスクオンに伴う金利上昇・ドル買い戻しが促された。

雇用統計で労働需給の緩和が示され、10月利上げ期待が大幅に低下した。しかし、FRBは実績としてのインフレ減速を確認する姿勢を維持しており、10月14日の米9月CPIが上振れた場合は10月利上げ観測が再浮上する可能性があり、市場の焦点はCPIに移行している。


フランス27年緊縮予算提出をめぐる政治不透明感とユーロ売り

フランス政府は10月1日、2027年一般政府財政赤字のGDP比を2026年見込みの5.4%から5.0%へ縮小させるため、新たに430億ユーロの追加措置を含む延べ540億ユーロ規模の財政削減・改善策を盛り込んだ2027年予算案を閣議決定した。内容としては歳出削減(公務員給与算定基準の凍結、年金物価連動の一部停止、省庁予算削減等)や大企業向け法人付加税の延長などが中心となる。

ルコルニュ首相率いる少数与党政権(中道アンサンブル)は国民議会(下院)で過半数を確保できておらず、予算案の成立には野党の協力が不可欠となる。前年の予算成立を支えた穏健左派の社会党(PS)は、富裕層・大企業への課税強化が不十分で低所得者負担が増すとして「不信任」を警告し対決姿勢を強めている。予算成立の鍵を握る極右・国民連合(RN)のルペン氏も年金抑制等に反対姿勢を示しており、与野党協議は難航するとみられている。左派(不服従のフランス)による内閣不信任動議の提出が予想される中、動議可決による内閣総辞職や予算未成立・越年のリスクが高まっており、未成立の場合は27年の赤字比率が6.5%程度へ大幅悪化すると懸念されている。

財政再建の実行可能性への懸念や来春2027年大統領選を巡る政治リスクからフランス国債売りが広がり、仏10年債利回りは24年ぶりの水準まで上昇した。また、投資家がフランス国債に求めるドイツ国債に対する上乗せ金利(独仏10年債スプレッド)は2011年欧州債務危機以来の水準へ拡大した。格付け会社ムーディーズによるフランス国債の格下げリスクも高まっている状況だ。

フランスの政治・財政懸念に加え、ドイツの極右政党ドイツのための選択肢(AfD)躍進に伴う政治・改革停滞リスクも重なり、ECBの10月追加利上げ観測が低下した。これら欧州固有の構造的・財政的リスクによりユーロは全面安となっている。15年前の欧州債務危機再来を指摘する声も出始めており、今後の動向に注目が集まる。


日米財務相発言

ベッセント財務長官発言:ベッセント米財務長官はニュースサイトAxiosのインタビューに応じ、足元の米国債利回りの上昇について、米国特有の事象ではなく世界的な金利上昇の動きと一致しているため過度に懸念する必要はないとの見解を示した。自身が債券市場を直接コントロールすることはできないとしつつも、市場参加者に落ち着いた思考を促す姿勢を強調した。また、アルゼンチン救済に向けた通貨スワップ枠の設定などの金融介入の成果を挙げ、必要であれば今後も同様の救済措置や為替市場への再介入を実施する準備があると言及した。さらに、イラン紛争によるエネルギーショックはいずれ沈静化すると予想し、堅調な個人消費や賃金上昇を背景に米経済の基調的な強さは維持されていると述べた。

片山財務相発言:片山財務相はTBSのインタビューにおいて、日米首脳会談でトランプ米大統領と高市首相が「円の過小評価は良くない」との認識で一致したことに触れ、足元の為替相場はファンダメンタルズを反映していないレベルにあると指摘した。市場における投機的あるいは無秩序な動きに対しては、日米両国が真剣に取り組んでおり、今後も断固として躊躇なく介入行動をとる姿勢を示した。高市政権の金融政策姿勢については、首相自身がリフレ論者ではなく日銀の日常的な金融調整や独立性を非常に尊重していると説明し、政府内でもその認識の統一が図られてきたと述べた。また、焦点となっている消費減税の財源に関しては、特例公債(赤字国債)に頼ることなく、補助金や基金の無駄を徹底的に洗い出す予算編成の大改革によって確保する方針を表明した。

ベッセント財務長官が「為替への再介入は可能」と述べ、片山財務相も「ファンダメンタルズを反映していないレベル」「無秩序な動きには躊躇なく行動する」と強調したことで、市場における投機的な円売り・ドル買いに対するけん制となっている。トランプ大統領と高市首相が「円の過小評価は良くない」との認識で一致した経緯もあり、実弾介入リスクから、158円台後半から160円近辺が強い上値抵抗帯として意識されている。


著者プロフィール

鈴木翔

鈴木翔

地方銀行、ネット銀行の運用部門で国内外の債券や株式などのディーラーを経験。松井証券に入社後はディーラーの経験を活かし、マーケットアナリストとして金利動向を踏まえた市場分析や、機関投資家・個人投資家などの投資家動向を組み合わせたマーケット情報などを提供している。


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