「AI半導体相場に試練?強弱感が激しく対立する」天海源一郎
「米オープンAI上場延期報道による失望」
6月26日に日経平均は3,005円46銭安(69,360円88銭)と急落しました。下落幅は過去3番目の大きさとなり、下落率も4.15%と極めて大きなものでした。もしかするとこの日の急落はこれまでの同様の場面よりも投資家が強いショックや危機感を覚えたかもしれません。その前日6月25日には、米半導体大手マイクロン・テクノロジーが発表した2026年3-5月期決算で、AI向けメモリの受注が牽引し、売上高が前年同期比約4.5倍、純利益が同15倍となる想定超の好決算が好感され、日経平均は3,191円37銭高の72,366円34銭となり、終値ベースの史上最高値を更新していました。たった一日でその上げ幅を帳消しにする下げに見舞われたのです。まさに冷や水を浴びせられる格好となり失望も大きくなったと推察されます。26日の下落の背景には何があったのでしょうか? 米ニューヨーク・タイムズ紙が米時間25日に、ChatGPTで知られる米オープンAIが計画中の新規株式公開(IPO)を2027年に延期することを検討していると報じたことが主因です。同紙では米株式市場の動きが不安定で、1兆ドル(約161兆円)という時価総額の目標達成が不透明なことを延期の理由としていますが、深読みをすると、12日に史上最大の調達額で上場した米スペースXの株価が16日をピークに下落に転じたこと、さらにはオープンAIと同時期(今秋)に米アンソロピック社が巨額の新規株式公開を計画していることなどから、時期をずらすべきと考えたのではないかと思われます。巨額の資金を調達する株式公開は、東京市場よりも格段に厚みのある米株式市場であってもそう簡単にできることではないのだということがわかってきました。米企業の巨額株式公開によって株価にさらに勢いがつき、日本株も同じように上昇すると見込んでいた強気投資家には「オープンAI上場延期報道失望」が生じたと考えることができます。ソフトバンクグループ(9984)はオープンAI社に「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」などを通じて累計約646億ドル(約10兆円)を出資しており、6月26日には同株は12.53%安と急落し、日経平均の下落に拍車をかけました。

「AI企業への米政府介入が水を差した?」
米AI開発企業を巡る動きには、他の不安要因もあります。6月中旬に米アンソロピックが新AIモデル「Claude Mythos 5」および「Claude Fable 5」を発表した直後、米政府が外国人によるアクセスを国家安全保障上のリスクとして問題視し、すべてのユーザーに対する提供停止を命じました。その後同社と米政府との調整は完了し、7月1日に提供が再開されているものの、ともすればAIの進化に水を差すこととして受け取られかねない動きです。米オープンAIについても発表予定の新型AIについて、米政府の要請で当初の提供先を約20社に絞ることが明らかになっています。一般提供までには米政府の承認が必要になるということです。こうした一連の動きから投資家が新たにイメージし始めたことは「AI提供そのものに米政府が介入すること」、「一般に提供された後に米政府による介入があるかもしれないこと」、さらには「米政府による介入が強まるとAI企業や半導体企業の成長にも悪影響があること」ではないでしょうか?もちろんこれらは確定したことではなく、ともすれば取り越し苦労になるかもしれないことですが、これまであまり想定しなかった事柄であり、株式市場におけるAI半導体相場一服のトリガーになる可能性を含むものです。
「韓国政府・企業の巨額投資は新たな好材料」
半面で好材料も出ています。韓国政府が発表した「大韓民国大飛躍3大メガプロジェクト」がそれです。国家的なAI・ハイテク大国化と地方振興を目指す国家戦略で、韓国半導体大手のサムスン電子とSKハイニックスが官民一体となり、先端半導体、データセンター、フィジカルAIの3分野を中心に、今後10年間で最大約210兆円(2000兆ウォン)規模の投資を行うというものです。すでにサムスン電子とSKハイニックスは6月29日、韓国内に半導体工場を計4工場建設すると発表し、投資額は計800兆ウォン(約83兆円)になるとしています。日本政府も6月24日、AI(人工知能)・半導体やデジタル・サイバーセキュリティなど、戦略17分野における主要製品・技術の62項目を対象とし、2040年度までに官民で累計370兆円超を投資する計画を公表し、うちAI・半導体分野への投資額は101.6兆円と算出されています。まさに好悪材料が同時に出てきているのが今です。「AIの発展に疑問はないものの、至る過程では想定外のこともある」とまとめるのが適当でしょうか。株式市場ではこのような時、「強弱感が対立する」という説明が用いられることが多いです。足元の株式市場の様子はまさにそれに該当するのではないでしょうか。
ここではAI半導体市場の成長に、独自の技術や製品で貢献をしている銘柄を取り上げます。主に半導体製造装置に係る銘柄です。
半導体製造の主要4工程(成膜、塗布/現像、エッチング、洗浄)すべてで高いシェアを持つ製造装置の世界的企業「東京エレクトロン(8035・プライム)」
半導体の製造工程における「成膜」と「膜質改善」に特化した半導体製造装置メーカー「KOKUSAI ELECTRIC(6525・プライム)」
半導体製造装置内部において薬液・ガス・真空・空圧を制御する特殊バルブで国内首位、世界でも上位級の「CKD(6407・プライム)」
半導体製造装置向け高機能ステンレス棒鋼・線材の世界シェア約30〜40%を誇る「大同特殊鋼(5471・プライム)」
半導体製造用のCMP(化学機械研磨)製品で先端品に強みがあり、ウエハ研磨材でも世界首位を誇る「フジミインコーポレーテッド(5384・プライム)」です。