2026年も「円安」の幕開けとなった為替市場
年明け早々、米国によるベネズエラ侵攻や中国による対日輸出規制強化など、波乱の幕開けとなる中、米ドル/円は概ね156-157円のレンジで推移をしていました。斯かる中、日本の政局をきっかけに円安が進行する展開となりました。1月9日(金)以降の相場を振り返っていきたいと思います。
雇用統計
9日(金)22:30に発表された12月米雇用統計は、強弱入り混じる内容となりました。非農業部門雇用者数(NFP)は前月比5.0万人増と、市場予想の7.0万人増を下回る結果となりました。11月分は速報値の6.4万人増から5.6万人増に下方修正されています。一方、失業率は4.4%と市場予想の4.5%を下回る結果となりました。11月分は速報値の4.6%から4.5%へと下方修正されています。雇用者数は過去分も下方修正を含めやや軟調だったものの、失業率の継続的な上昇には至らず、労働市場の減速懸念が強まる結果には至りませんでした。概ね市場予想通りの雇用統計を受け、米ドル/円は157.50円を挟んで小動きの展開となりました。
高市首相、衆院解散検討
雇用統計発表からわずか30分後、読売新聞が「高市政権安定へ勝負...衆院解散検討、高支持率で慎重論振り切る」と報じ、米ドル/円は約1年ぶりに158円台をつけました。高い内閣支持率が総選挙の追い風になり、自民単独で衆議院過半数を獲得すれば、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」など肝いりの政策を進めやすくなる、との見方から円安が進行しました。日経平均先物も10日終値で前日比1,510円高の53,590円で取引を終えています。
株式市場には「解散総選挙は買い」というアノマリーがあり、過去には投開票日まで株価が上昇するケースが多くありました。現時点で高市首相は解散を表明していませんが、毎日新聞は10日、「3連休明け以降に、首相が方針を表明する案が政府・自民党内で浮上している」と報じており、本日以降の報道に注目が集まります。株高・リスクオンが継続するようだと米ドル/円にも上昇圧力がかかるでしょう。
米最高裁による「IEEPA関税」判決の延期
トランプ大統領が発動した国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を巡り、日本時間10日0時に予定されていた米最高裁の判決が延期されました。トランプ関税を巡る判決が持ち越しとなったことを受けて、早ければ日本時間15日(木)0時に判決が下される予定となっています。
トランプ政権の看板政策である関税の法的根拠が揺らぐことへの警戒感や巨額の還付金が発生することへの懸念が高まる中、主要メディアでは今回の延期は単なるスケジュールの問題ではなく、最高裁判事内での激しい意見対立の表れと報じています。予想サイトPolymarketでは、政府勝訴の確率が一時的に上昇しました。引き続き、IEEPA関税を巡る判決に注目が集まります。
パウエルFRB議長提訴
12日(月)は日本が休場となる中、パウエル議長は、FRB本部改修について昨年夏に行った議会証言を巡り、司法省から刑事訴追の可能性を示す大陪審への召喚状が届いたと明らかにしました。また、この動きは「政権による脅しや継続的な圧力という、一段と広い文脈の中で受け止めるべきだ」とも指摘しました。為替市場ではドル安で反応し、米ドル/円は158円を割り込む展開となりました。
FRB議長候補を審査する上院銀行委員のティリス議員は、司法省の「独立性と信頼性」に疑問を投げかけると指摘し、「この法的問題が完全に解決するまで」、後任議長を含め、トランプ氏が指名したFRB要人候補には反対すると述べており、今後のFRB議長人事にも影響を与える可能性があります。
これらの材料を消化し、為替市場ではドル安円安の展開となる中、1/13以降の注目材料を確認したうえで米ドル/円が上昇する見通しを展望していきたいと思います。
米国
経済指標では、13日(火)22:30に消費者物価指数(CPI)、14日(水)22:30に生産者物価指数(PPI)と小売売上高の公表が予定されています。
中央銀行関連では、日本時間13-17日にかけてFOMCメンバーの発言機会が予定されています。また、ベッセント財務長官は8日、19~23日にスイスで開かれるダボス会議(世界経済フォーラム)の前後に、トランプ大統領が次期議長を公表すると述べています。早ければ今週中にも新議長が公表される可能性があります。予想サイトPolymarketでは、ケビン・ウォーシュ氏とケビン・ハセット氏の予想確率が40%前半で拮抗している状況です。ケビン・ウォーシュ氏が選ばれた場合は、利下げとバランスシート縮小を主張しているため、ドル安の反応は限定的になるとみられています。一方、ケビン・ハセット氏が選ばれた場合は、FRBの独立性への懸念が強まり、ドル安で反応するとみられています。
日本
日本では高市政権からの情報発信に注目が集まります。高市首相が衆院解散を表明するかどうかに加え、閣僚からの情報発信も数多く予定されています。まず、城内実経済財政担当相が13日(火)に日本記者クラブで会見、14日(水)に公益財団法人フォーリン・プレスセンターで講演を行う予定です。特に14日の講演のテーマは「日本の経済財政政策」となっており、発言次第では円安が進行する可能性があります。週末16日(金)には、片山さつき財務相が日本記者クラブで会見を行う予定です。会見までに円安加速した場合、口先介入を含め、為替について言及する可能性があるため、こちらも注目です。
今週は、高市首相が衆院解散を表明し、株高・リスクオン継続となった場合や米経済指標などをきっかけにドル高となった場合は、米ドル/円の上昇が加速する可能性があります。