資源国通貨の値動きの特徴【鈴木翔の週間マーケットトピック】
トランプ大統領は1月30日、次期FRB議長にケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名した。金融市場の初期反応は株安・金利上昇・ドル高となった。原油や金などのコモディティ関連も急落となった。コモディティ価格はドル建てであることから、ドル高になると価格が下落しやすい傾向にある。ウォーシュ氏が議長に指名されたことを受け、今後ドル高が進行するとの見方からコモディティ価格が下落した格好だ。
為替市場では、コモディティ価格下落に伴い、南アフリカランドやノルウェークローネ、オーストラリアドル、カナダドル、ニュージーランドドルなど通貨が対ドルで下落した。これらは、輸出額に占めるコモディティの割合が高い国の通貨で、「資源国通貨」に分類される。
資源国通貨の値動きに大きな影響を与える要因の一つに「コモディティ価格」がある。通常、コモディティ価格が上昇すると資源国通貨が買われやすく、コモディティ価格が下落すると資源国通貨が売られやすい傾向にある。
一口にコモディティと言っても様々な種類があり、農産物・畜産物などの食料、鉄・アルミ・貴金属などの鉱物、石油・石炭・天然ガスなどのエネルギーに分類される。資源国通貨の中でもそれぞれに特徴があり、値動きも大きく異なるため、代表的な資源国通貨について詳しく見ていきたい。
オーストラリア
オーストラリアは資源国通貨の代表格ともいえる国であり、鉄鉱石や石炭、天然ガスが主力の輸出品となっている。2024年の品目別輸出額割合※を見ると、鉄鉱石が24.1%、石炭が16.5%、天然ガスが13.0%となっており、これら3品目で輸出額の半分を占めている。※出所:JETRO(日本貿易振興機構)
輸出に占める鉄鉱石と石炭の割合が高いことから、豪ドルは鉄鉱石価格や石炭価格に一定程度連動するといえる。また、割合としては小さいものの、牛肉、原油、小麦なども輸出しており、それらが組み込まれているCRB指数(コモディティの総合的な値動きを示す指数)にも一定の連動性が見られる。
続いて、2024年の輸出相手国の割合※を見てみると、1位が中国で35%、2位が日本で14%、3位が韓国で8%となっている。中国が最大の貿易相手国となっていることから、オーストラリア経済は中国経済の影響を受けやすいといえる。※出所:外務省
足もとの豪中関係は過去の貿易制裁や外交的冷え込みから脱却し、比較的良好だ。しかし、中国経済が低迷しており、先行きも状況が大きく変わることが見込めないことから、中国経済の停滞がオーストラリアの輸出減少に繋がる可能性には注意が必要だ。
ニュージーランド
ニュージーランドの主力の輸出品は、乳製品、肉類、木材、果物類、ワインなどの農産物となっている。2024年の品目別輸出額割合※を見ると、乳製品が31.1%、肉類が13.0%、木材・木製品が8.3%となっている。輸出に占める食品の割合が高いのが特徴だ。※出所:JETRO(日本貿易振興機構)
輸出に占める食品の割合が高いことから、NZドルは食品価格と連動するのではないか、と思うかもしれないが、乳製品などの価格とNZドルに連動性はみられなかった。連動が確認できたのは隣国のオーストラリアの通貨「豪ドル」の値動きだった。
FX自動売買の取引を経験したことがある方であればご存じかもしれないが、豪ドル/ニュージーランドドルは2014年~2025年までの間、レンジ推移が継続しており、変動の小さい(通貨の連動性の高い)通貨ペアとして選好されていた。豪ドル/円とNZドル/円の値動きを見てもほぼ同じような値動きをしていることがわかる。
連動性が高い背景には、ニュージーランドとオーストラリアが地理的に近いことから、経済的な結びつきも強いことがある。2024年の輸出相手国の割合※を見ると、1位が中国で25%、2位が米国で13%、3位がオーストラリアで12%となっている。また、両国ともに最大の輸出先が中国であり、ともに中国経済の影響を受けやすい経済構造になっていることから、経済・金融政策にも連動性が生まれ、同じような値動きになりやすいのだろう。※出所:外務省
南アフリカ
南アフリカの主力の輸出品は、プラチナ、鉄鉱石、金、石炭などとなっている。2024年の品目別輸出額割合※を見ると、金、プラチナ、ダイヤモンドなどの貴金属・宝石類が18%、鉄鉱石などの鉱石が16%、乗用車などの輸送機器が11%、石炭などの鉱物性燃料が10%となっている。※WTO(世界貿易機関)
貴金属の輸出が多いことから、ランドは金やプラチナなどの価格上昇がランドの押し上げ要因となる。特に金やプラチナの価格が大きく上昇した2025年はドル安進行の影響も相まって、ランドは対ドル、対円で大幅に上昇した。
南アフリカの株式市場には、金などの鉱山を保有する企業が数多く上場している。これらの企業の業績は金などの貴金属価格と連動することから、金価格上昇に伴って株価が大幅に上昇している。これらの企業への投資資金がランドの押し上げ要因の一つになっている。
南アフリカの主要輸出相手国※は、1位が中国、2位が米国、3位がドイツとなっている。米国に対する輸出依存度が高い中、昨年以降、南アフリカと米国の関係が冷え込んでいる。現時点でランド相場への影響は限定的となっているが、今後ランドの下押し要因になる可能性には注意したい。※外務省