「個人投資家を悩ませる!?物色の一極集中問題」天海源一郎

2026年06月05日

「個人投資家を悩ませる!?物色の一極集中問題」天海源一郎


「ソフトバンクグループ株が時価総額トップに躍り出た」

6月の東京株式市場でまず話題となったのは、ソフトバンクグループ(SBG)(9984)株の時価総額が48兆を超え49兆円に迫り、トヨタ自動車(7203)のそれを上回りトップになったことでしょう。

トヨタ自動車が時価総額首位の座を明け渡すのは約22年ぶりのことです。東京株式市場に限らず、世界の株式市場ではAI(人工知能)や半導体関連などの大型ハイテク株が株価指数をけん引する格好となっており、東京市場では「ソフトバンクグループ時価総額首位」が象徴する出来事となりました。同社とChatGPTで知られる米OpenAI社は戦略的パートナーの関係にあり、SBGはOpenAI株を約13%保有する大株主です。5月21日にはOpenAI社の新規株式公開(IPO)が近づいているとの観測から株価が急伸しストップ高まで買われる場面もありました。
このほか、AI(人工知能)関連投資の急拡大、とくにデータセンターへの投資を背景にNAND型フラッシュメモリの需要が爆発的に増加していることを背景にキオクシアホールディングス(285A)の株価が急騰していることを知らない個人投資家はいないと思われますが、同社はNAND型フラッシュメモリの世界大手企業で世界シェアの15%強を占めています。

2026年4-6月期の連結純利益(国際会計基準)は前年同期比48倍となる8690億円になる見通しで、株価は昨年末からでも約7倍となっています。このほかAIサーバーの普及により、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の需要が急増するとして、世界大手メーカーの村田製作所(6981)

太陽誘電(6976)

さらにAI向けサーバーに不可欠な高性能ICパッケージ基板で世界トップクラスのシェアを誇るイビデン(4062)の株価も急伸しています。

日経平均寄与度が高い銘柄も多く、株価上昇が日経平均株価を引っ張り上げる格好となり日経平均株価は史上最高値を更新しているのです。


「押し目を買いたい投資家は多いはず」

これら銘柄が急伸する中でも他業種に物色が広がる気配はあまり感じられません。トヨタ自動車株が時価総額トップの座を譲ることになったのは、SBG株が上昇したことに加え、トヨタ自動車株が下落を続けている背景もあります。
AI関連株や半導体関連株を保有していない個人投資家からは「保有株はほとんど上昇しておらず恩恵がない」という嘆き節も聞かれています。ならば上昇銘柄に乗り換えるという手もありますが…「さすがにこの高値では手が出ない。割高すぎる」というわけでしょう。
ただ、目の前の上昇をまったく無視するわけにもいかず、転じて「いったいいつまで上昇するのか?」ということが盛んに言われることになります。つまりは「AIの拡大には疑問がないものの、上昇し続ける株価は割高と判断され、いずれ下落に転じる局面があるに違いない。急上昇後の調整は大きなものとなることも想定され、うまくいけば安値で買えるかもしれない」という思惑があるのです。
その結果、当該企業の将来の業績予想や、企業の利益や資産などの価値と現在の株価を比較し、その株価が「割安か、割高か」を判断する企業価値評価、株価バリュエーション(この場合はPERが主になる)、さらには株価チャートの移動平均線からの乖離率などが気にされています。
ただ、そのほとんどから判断されるのは「割高」というもので、それでも株価が上昇していくことが悩みとなっているかもしれません。


「パッシブ資金が一部銘柄をさらに割高にする?」

ここでは割高か?割安か?を判断基準としない資金についても言及しておきます。それは「パッシブ資金」です。
パッシブ資金の受け皿となるパッシブファンドとは日経平均や米S&P 500のような「市場全体の動きを示す代表的な指数(ベンチマーク)」と連動する投資成果を目指すファンド・投資信託のことで、このほか多様化しているETF(上場投資信託)を通じた資金流入もほぼ同様です。
パッシブ運用ではベンチマークを構成する銘柄を機械的に同じ割合で保有し続け、株式市場全体の成長を享受することが狙いとなり、アクティブ運用のように個別銘柄について割高か?割安か?という判断にはなりにくい特徴があります。
現在、多くの投資家がインデックス投資やETF投資を行っており、株式市場の需給構造は、かつてよりもパッシブ投資の影響を受けやすい環境へと変化しています。
このことはファンダメンタルズに基づく価格修正や修正速度を弱め、一度形成されたトレンドが持続しやすい市場環境を生んでいるのではないでしょうか。
そうした背景こそが時価総額の膨らんだ銘柄への資金流入に拍車をかけているのではないでしょうか。そうだとすると一度形成されたトレンドが崩れにくい≒まさに今のような特定銘柄への一極集中につながり、さらにそれが新たなパッシブ資金を呼び込んでいると推察されます。つまり割高・割安に基づくアクティブな売買が株価に反映されるまで時間がかかるということでもあるのです。
このようなことや、株式市場内の需給を反映した株価の動きをイメージすることも個別銘柄を選択する際に一考されるといいでしょう。
最後にパッシブ資金主導時におけるリスクについても触れておきます。ファンダメンタルズの変化によって資金の動きが反転した際、パッシブ資金主導の相場では、発生した下落局面で、それら銘柄の値動きが急になりやすい特性があります。ここまでと正反対の動きをイメージすると分かりやすいでしょう。


著者プロフィール

天海源一郎

天海源一郎

株式評論家・個人投資家。関西大学卒業後、ラジオNIKKEI入社。東京証券取引所記者クラブ記者、ディレクターなどを経て2004年に独立。個人投資家に向けた執筆活動・セミナー活動を行う。2010年から『夕刊フジ』に連載、著書多数。ほぼ日刊メルマガ「天海のつぶやき」も発行。https://www.tenkai.biz/(天海源一郎オフィシャルWeb)


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