「今こそ認識を深めたい『株価バブル』について」天海源一郎
「米スペースX上場成功→キオクシアホールディングス急伸」
米国時間6月12日、実業家イーロン・マスク率いる「スペースX(SPCX)」が米NASDAQ市場に上場を果たしました。
宇宙開発やAI開発を行う同社株の公開価格は1株=135ドル、初値は公開価格を11%上回る150ドル、公開初日は160.95ドルで取引を終えました。資金調達額は約12兆円にのぼり、初日段階の時価総額は約350兆円で史上最大IPO(新規株式公開)となりました。一部で懸念されていた同株を手当てするために他の米テック株が売られるという動きも限定的でした。週明け15日の東京株式市場でも、スペースXの上場成功を受け、また、米国とイランが戦闘終結で合意しホルムズ海峡が開放されるという期待から、日経平均株価は3297円46銭高、69317円50銭と急伸しました。日経平均急伸の原動力となったのはソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、イビデン(4062)、キオクシアホールディングス(285A)などの「AI・半導体関連株」です。日経平均寄与度が高いこれらの銘柄が引っ張り上げる格好となりました。なかでも連日のように売買代金トップとなっている「キオクシアホールディングス(285A)」の株価上昇は際立っています。昨年末(2025年12月30日)の同株の終値は10435円で、その約半年後の今は9万円を超える水準です。まさに驚異的な株価上昇です。AI(人工知能)関連投資の急拡大、とくにデータセンターへの投資を背景にNAND型フラッシュメモリの需要が爆発的に増加していることが業績の追い風となり、多くの投資家の注目を浴びているものの、あまりにも速い株価上昇を見て「バブル的な動きでは?」という懐疑的な声も聞かれています。キオクシアホールディングス株こそが東京株式市場におけるAI株バブルの象徴的な銘柄という捉え方です。ここで当のAI(GoogleのGemini)に「バブル(経済)とは何か?」と問いました。それによると「不動産や株式などの資産価格が、本来の経済の実体価値を大幅に超えて異常に高騰する現象。泡(Bubble)のように膨らみ、最後には必ず崩壊することからこの名がつきました」という返答でした。さらに「バブルが発生する仕組み」については、・低金利と資金過剰、・投機的な動き、・過剰な期待感が支配する状態、が指摘されました。「バブルが崩壊する仕組み」については、・金融引き締め、・買い手の減少、・売りへの殺到・経済の停滞などが指摘されています。
「崩壊して初めてバブルと理解することに」
実はこのAI(人工知能)による返答内容はすでに多くの個人投資家が認識していることでしょう。指摘された項目を現状に当てはめてみても、「そうとも言える部分もあれば、言えない部分もある」というあやふやな結論に結びついてしまうでしょう。金利や日銀の金融政策だけをとってみても「低金利」は当てはまらず、「金融引き締め」は当てはまるものの、現状の日銀の金融政策は過去の金融緩和を巻き戻しているに過ぎず、引き締めというよりは金融政策の正常化と理解すべきではないのか…結局、このような観点からは「株価バブルかどうか」の答えを導くことにはならないでしょう。また投資家が本質的に気にしているのは実はバブルであるかどうかよりも「バブル崩壊」だということも理解しておきたいところです。キオクシアホールディングス株に限らず、AIや半導体に絡む銘柄の株価上昇は概ね歓迎されていると思われます。しかし、反転安局面が到来すると多くの投資家は損失を被る可能性があります。株価の常として下落スピードは上昇スピードを凌駕するものとなり、さらに損失が膨らんでいくかもしれません。この時になってバブル崩壊が意識されることになり、その前段の急上昇が「バブルだった」という評価に落ち着いて行くのでしょう。もちろん投資家はその動きに自らがひっかかることを怖れているのです。だからこそバブルに対する見極めが取りざたされるのです。平成バブル期やITバブル時にも同じようなことが話題になったことは容易に想像がつきます。過去の事例も参考にしたうえで導かれることは「弾けるまではバブルとは判別できない」ということであり、当然のように「バブルが弾ける前がもっとも株価が高い」ということでしょう。いかなる数字や理論を用いても事前にバブル崩壊を知ることは難しく、それでも弾けた時(急落に次ぐ急落時)には多くの投資家が認識するものです。
「アンソロピック、オープンAI上場時には」
AI(人工知能)の本場、米国ではスペースXのあとにもAI企業のIPOが控えています。対話型AI「Claude」を開発するアンソロピック社、対話型AI「ChatGPT」を開発したオープンAI社がそれで、両社ともすでに米証券取引委員会にIPO(新規株式公開)を申請したと発表しており今秋の上場が想定されています。時価総額が1兆ドル(約160兆円)を超える超大型上場となり、米株式市場だけでなく他の株式市場にも影響を及ぼすことはほぼ確実で、スペースX(SPCX)の上場成功によってここからさらに大きな話題となる可能性もあります。東京市場でも投資資金がさらにAI・半導体株に集中する動きが見られるかもしれません。もちろん当該企業にはさらなる収益拡大や将来展望が求められることから、すべてが同じように好感されるのではなく、優勝劣敗となり投資家が関心を失う銘柄も生じるでしょう。
最後に東京市場における主力「AI・半導体株」を整理しておきます。
NAND型フラッシュメモリ世界大手「キオクシアホールディングス(285A)」、
半導体製造装置世界3位「東京エレクトロン(8035)」
積層セラミックコンデンサ(MLCC)世界大手「村田製作所(6981)」
高性能ICパッケージ基板世界大手「イビデン(4062)」
電子部品大手で受動部品やHDD用関連製品に強い「TDK(6762)」