窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~
今週の東京株式市場:金利上昇を嫌気し5日続落、一転ハイテク株主導で急反発
今週の東京株式市場は、週半ばまで続いた調整局面から週末に急反発するという、極めてボラティリティの高い展開となりました。
週初18日から20日にかけては、国内外の長期金利上昇への警戒感やインフレ懸念が重石となり、日経平均株価は5日連続で下落しました。特に20日には、AI・半導体関連の主力株を中心に広範囲で売りが広がり、終値ベースで約3週間ぶりに6万円の大台を割り込みました。個別では、売買代金が連日1位となっているキオクシアがストップ高の後に急落するなど、激しい値動きが投資家心理を揺さぶる場面も見られました。
しかし21日は一転し、急反発しました。米エヌビディアの好決算に加え、出資先のオープンAI上場報道を受けたソフトバンクグループがストップ高まで買われたことが起爆剤となり、日経平均の上げ幅は一時2200円を超えました。原油相場の下落によるインフレ懸念の後退も背景に、幅広い銘柄でリスクオフの巻き戻しが進みました。
売買代金は連日10兆円前後の高水準を維持しており、市場のエネルギーは依然として強力です。今後も金利動向と米ハイテク株の推移を注視しつつ、業績相場への移行を見極める展開が続くでしょう。
今週の個別銘柄解説:AI・株主還元・金利上昇で日本株の潮流は
日立製作所(6501)
米アンソロピックと提携し、鉄道や送配電網など社会インフラの運用・保守を効率化するAIシステムを共同開発します。自社の現場データと高性能AIを組み合わせ、自動点検や電力効率の向上を目指します。ソニーGも注力する「フィジカルAI」分野を強化する狙いで、提携済みのオープンAI 等に加え、顧客の用途に応じた柔軟な提供体制を構築。インフラDXによる世界展開と収益拡大が期待されます。
フジクラ(5803)
AIデータセンター向け光ファイバーの増産に向け、米国等で最大3000億円を投じる新中期経営計画を発表しました。2036年3月期に営業利益5800億円を目指す野心的な目標を掲げましたが、29年3月期の利益計画が市場予想を大幅に下回ったことが嫌気され、株価は急落しました。膨大な需要を背景とした積極投資の成果と、原材料不足などの懸念要因の克服が今後の焦点となります。
東京海上ホールディングス(8766)
今期、8300億円の純利益を見込み、27円の増配と最大2000億円の自社株買いを発表しました。メガ損保3社は揃って株主還元を強化しており、MS&ADは最大1900億円、SOMPOも最大690億円の自社株買いを決定。SOMPOは23%の減益予想ながら50円の大幅増配を打ち出しました。政策保有株の解消などを背景とした積極的な還元姿勢が、投資家の注目を集めています。
ソフトバンクグループ(9984)
米オープンAIが22日にもIPOを申請するとの報道を受け、約11%を出資するソフトバンクグループ(SBG)が一時ストップ高を記録しました。時価総額1兆ドル超とも目される巨大案件により、SBGの企業価値向上と収益貢献への期待が爆発した形です。投資会社から「AIで稼ぐ会社」への転換を急ぐ同社にとって、今回のIPO観測は戦略の正当性を裏付ける強力な追い風となり、日経平均の急騰も牽引しています。オープンAIは新バージョンのGPT-5.5や、利便性を向上させたアプリ計画で、ユーザーが増加しています。年間売上も250億ドル超えで、AIのトップ企業としてこれからも注目されそうです。一方で、2026年に140億ドル以上の大きな赤字となるなど、目標の売上やユーザーに届かず、AnthropicやGoogleに追い上げられてシェアが低下しています。資金繰りもややタイトですが、AIの中心企業として今後の成長が期待されています。
三菱UFJフィナンシャル・グループ (8306)
三菱UFJなど銀行株は21日、米財務長官による日銀総裁を評価する発言報道や日銀審議委員のタカ派的発言を受け、6月の利上げ期待から買いが先行しました。政策正常化による利ざや改善への期待が追い風です。一方、対照的な動きを見せたのが楽天銀行で、株価はストップ安を記録しました。グループ再編に伴う最大30%の株式希薄化懸念が強く意識されており、個別要因によるリスクが売りを誘う展開となりました。銀行株は貸出金利の上昇で収益増が期待される一方、貯蓄から投資への流れで預金集めに苦戦する銀行も出てきています。預金が潤沢なメガバンクを中心に今後も再編の動きが続きそうです。
上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を5/22(金)21:00に
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。
下記リンクから是非ご覧ください。
来週の注目トピック
東京都区部消費者物価指数
来週29日発表の5月東京都区部CPIは、エネルギー補助金縮小や原油高に伴う価格転嫁の進展が注目点です。4月は1.5%と鈍化しましたが、日銀は26年度の物価見通しを2.8%に上方修正しており、インフレ圧力は根強い状況です。足元で長期金利が2.8%まで急騰しており、市場では物価上振れへの警戒が強まっています。東京都区部CPIは全国CPIの先行指標として注目されますが、ここ数カ月は政府の各種政策(ガソリン代補助や教育無償化など)が物価上昇率を意図的に抑制する「政策効果」が強く出ています。これらの政策効果を除いた「基調インフレ」は、食料品価格の上昇(輸入コスト・円安の影響)やサービス価格(賃上げ波及)で上昇が続いており、物価が日銀の予想を上回る推移となれば、早期の利上げが現実味を帯びるでしょう。
米・個人消費支出(PCEデフレーター)
FRBが最重視するインフレ指標、4月PCEデフレーターが28日に発表されます。足元の米10年債利回りはインフレ懸念や原油高を背景に4.6%台まで急騰しており、今回の結果は将来の利下げ時期を占う極めて重要な鍵となります。エネルギー価格上昇だけでなく粘着性が高いサービス価格も再加速の兆しがあり、FRBの2%目標から乖離が続き、利下げ期待をさらに後退させる要因となります。個人消費の伸び鈍化も重なり、政策判断が複雑化する公算があります。
現在、FOMC内では追加利上げの議論も浮上するなどタカ派姿勢が強まっており、指標が予想を上振れれば長期金利の一段の上昇を招き、株式市場の重荷となる恐れがあるため注視が必要です。