窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~

2026年05月29日

窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~


今週の東京株式市場:史上最高値と地政学リスクの交錯

今週の東京株式市場は、AIデータセンター投資に対する期待と地政学リスクによる波乱が交錯する、ボラティリティの高い展開となりました。週明け25日には、中東情勢の沈静化期待や米ハイテク株高を追い風に、日経平均株価は終値で史上初めて6万5000円台に乗せる歴史的な急騰を演じました。しかし週後半、戦闘終結への期待に反して米イラン間の攻撃応酬が伝わると、地政学リスクへの警戒感から一時高値から1100円を超える急落を見せるなど、緊迫した局面を迎えました。
物色面では、週前半はキオクシアやフジクラ、オープンAIの上場観測が浮上したソフトバンクグループなど、AI・半導体関連の主力株に資金流入が起きました。一方、週終盤の地合い悪化局面では、AIデータセンター需要の恩恵が波及する村田製作所や太陽誘電、TDKといった電子部品株が逆行高を演じ、物色の矛先が周辺分野へシフトしている点も注目されます。
連日10兆円を超える異例の売買代金は、市場の圧倒的なエネルギーを物語っています。中東情勢という不透明要因を抱えつつも、AI革命を原動力とした日本企業の成長期待が、相場の強力な押し目買いニーズを支える構図が続いています。


今週の個別銘柄解説:AIを担うハイテク5傑の成長戦略

古河電工(5801)

証券会社による目標株価の大幅引き上げを受け、26日に上場来高値を更新しました。19日に発表した中長期経営方針で、データセンター向け「水冷モジュール」への増産投資を表明したことが好感されています。AI向けデータセンターは膨大な熱を放出するため、水冷式が普及していることから同製品の将来性を高く評価され、2027年3月期以降の営業利益予想が上方修正されました。先に発表した株式分割に加え、AIインフラ需要を捉えた具体策が市場の信頼をさらに高めています。

信越化学工業(4063)

26日、証券会社による目標株価の上方修正を受け反発しました。中東情勢に伴う塩ビ事業の収益上振れに加え、半導体向けシリコンウエハーやフォトレジストの伸びが想定以上である点を評価。2029年3月期には経常利益1兆円突破も視野に入ります。豊富なキャッシュを背景としたROIC向上への投資や積極的な株主還元、競合を圧倒する収益性が改めて市場で意識される展開となりました。

富士通(6702)

海上自衛隊向けに全物資をリアルタイム管理する基幹システムを提供し、運用効率化や迅速な意思決定を支援すると発表しました。さらに米アンソロピックやオープンAIとの提携・連携も公表。自社のシステム構築力と先端AIを融合し、国内企業のAI変革を加速させる方針です。防衛実績とAI戦略の両輪が好感され、株価は4日続伸。公共インフラと最先端技術による成長が期待されています。

キオクシアホールディングス(285A)

時価総額が27日一時36兆円を超え、三菱UFJフィナンシャル・グループを上回る場面がありました。生成AI向けの膨大なデータ保存需要を背景に、NANDメモリーが急成長しています。株価上昇率は昨年末比6倍超と世界トップ級ですが、その背景にはAIエージェントでは膨大な記憶装置が必要とされていることがあり、投資家の関心はGPUからメモリー等の周辺分野へシフトしています。AI投資拡大を支える存在として、今期純利益は市場予想で前期比約8倍が見込まれています。

村田製作所(6981)

アナリスト説明会での積層セラミックコンデンサー(MLCC)需要の強気見通しを背景に、分割考慮後の上場来高値を28日更新しました。AIサーバーや人型ロボット向けの成長が期待される中、先端MLCCで5割超のシェアを誇る同社には、目標株価の引き上げや需給逼迫による値上げ期待の買いが集中しています。AI向けデータセンターで使われるGPUはデータ処理の命令が来ると一気に電力を消費する一方で計算が終わると急に電力消費が減少するため、電力を一次貯蓄するコンデンサーの需要が高まっています。稼働率も90%を超えてフル稼働に近く、供給不足が意識される展開となっており、TDKなど同業他社も大幅高となりました。

上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を5/29(金)21:00に
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。
下記リンクから是非ご覧ください。


来週の注目トピック

米・雇用統計

6月5日に5月の米雇用統計が発表されます。注目は、4.3%で安定する失業率と賃金の伸びです。PPI(生産者物価指数)の上振れなどからインフレ懸念が再燃し、利下げ期待が後退する中、予想を上回る雇用増と賃金上昇が確認された場合、6月のFOMCでも高金利維持の姿勢が補強されるでしょう。政策判断を巡りメンバーの意見が分かれる中、労働市場の強靭さが利下げ時期を占う重要な試金石となります。

日銀植田総裁の講演発言

6月3日にきさらぎ会において講演予定です。6月中旬の金融政策決定会合を前に、利上げに前向きな姿勢(タカ派姿勢)を示すかどうかが最大の焦点です。前向きな発言を行えば、円買い・ドル売りの圧力が強まるとともに、国内の長期金利がさらに一段と上昇する可能性があります。金利上昇の恩恵を受ける銀行株などには追い風となる一方、長期金利の上昇は株式市場全体にとっての重荷(下押し圧力)として意識されやすく、特に高PERの銘柄などは値動きが不安定になる恐れがあります。講演は夕方17:30開始のため、東京市場の取引時間外(夜間取引や欧米市場)から為替と先物市場が動き出し、翌4日の日本株市場にその影響が引き継がれるスケジュールとなります。


著者プロフィール

窪田朋一郎

窪田朋一郎

松井証券チーフマーケットアナリスト。
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「マーケットラボ アクティビスト追跡画面」など、これまでにない独自の投資指標を開発。


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