「東京市場の次の主役は銀行株か?メガ・大手・地銀5選」天海源一郎
「韓国KOSPI指数下落に怯える日本株」
東京株式市場の取引中に日経平均株価が急上昇する際も、急落する際も「韓国KOSPI指数(韓国総合株価指数)の上昇が好感されたor下落が嫌気された」と説明されることが増えています。
韓国取引所(KRX)の取引時間中は日本時間9:00~15:30で東京市場と同じです。韓国の主要株価指数KOSPI指数は半導体のに構成比が約50%で、半導体企業2社で占められています。ひとつは韓国最大手の財閥サムスングループの中核企業でメモリ製造では世界トップクラスのシェアを誇る「サムスン電子」、
もうひとつは世界最大級メモリメーカーでAI向け半導体で米NVIDIAの主要サプライヤーである「SKハイニックス」です。
どちらも生成AIブームや高帯域幅メモリ(HBM)の需要拡大に伴い株価が急上昇していました。しかし2社の株価とも6月末以降急落、当然のように韓国KOSPI指数も同様の動きとなりました。
東京市場でも高流動性を伴い株価が上昇していたNANDフラッシュメモリーの大手企業「キオクシアホールディングス(285A・プライム)」の株価の頭打ちにつながり、他の半導体関連株も波乱となっています。
足元の日本株の波乱は「韓国KOSPI指数」、「サムスン電子とSKハイニックス」、「メモリ半導体」に左右されていると言えるでしょう。
では韓国の大手半導体企業2社の株価は何故下落したのでしょうか?
まずは米アップル社が中国企業2社からメモリ半導体を調達するとの観測が広がり、韓国製のメモリの先行きに不安が生じたことです。
米ブルームバーグは7月1日に、米アップル社が高騰するメモリ価格への対応として中国メモリ大手の長鑫存儲技術(CXMT)と、長江存儲科技(YMTC)から調達を検討していると報じました。CXMTは短期記憶用のDRAM、YMTCは長期記憶用のNAND型フラッシュメモリーを手掛け、韓国メーカーよりも安価な製品を提供するとされています。
ただ、中国メモリ企業2社は米国防総省の中国軍関連企業リストに指定されています。国防総省リストには大きな法的効力はないものの、米政府は近年、このリストを活用して企業との契約や研究資金の受給を制限する動きを強めているとされています。
ちなみに米アップル社はバイデン前政権下の2022年にも同様の動きをしたものの、米政界での反発によって計画が頓挫した経緯があります。
もうひとつは韓国の金融監督院(FSS)がサムスン電子やSKハイニックスなどメモリ半導体メーカーの株価に連動する高リスクのETF(上場投資信託)について警告を発したことです。レバレッジ型の個別株ETFは短期売買向けに設計された金融商品で、日々の株価変動を2~3倍に増幅させる特性があります。
昨年5月末の上場以降、個人投資家の資金13兆ウォン(約1.4兆円)以上がサムスン電子とSKハイニックスのレバレッジETFに流入したとされており、上昇時にも下落時にも「急な動き」を演出することになっています。
米時間7月10日には、SKハイニックスが米ナスダック市場に米預託証券(ADR)を上場し、取引初日の終値は公募価格に比べ13%高と高い評価を受けたにも拘わらず、韓国市場では同株が売られました。
これら一連の様子からは韓国株式市場内での「需給悪化」が最大の株価下落要因と推察されます。米アップル社の動きが端緒になったものの、それを契機にサムスン電子とSKハイニックスの個別株レバレッジETFが売りを浴びるようになったというものです。
日本のキオクシアホールディングス株や他半導体株についても似たような構図と言えるでしょう。需給悪化の整理には応分の時間を要するものですが、大きな好材料が出た際には一気に整理がつくこともあります。今後は22日に米テキサス・インスツルメンツ、23日にディスコ、米インテル、29日にアドバンテスト、米クアルコム、30日に東京エレクトロン、31日にキオクシアホールディングスの四半期決算発表が予定されておりAI半導体株の動向を左右するかもしれません。
「入れ替わりに買われ出した銀行株」
東京株式市場ではAI半導体株の波乱を契機にバリュー株(割安株)に見直しの動きが見られるようになっています。
バリュー株とは、企業の保有資産や利益水準などの本来価値に対して、現在の株価が割安に放置されている銘柄群を指しますが、東京市場ではバリューセクターの建設、化学、鉄鋼、自動車・自動車部品、金融、不動産など主要セクターが今年ここまで目立って物色されることはありませんでした。
実際には株価がジリ高となっているセクターはあるものの、話題になったと言えるほどではありません。ここまで市場をけん引してきたAI半導体株に頭打ちの様相が見え始めるなかで、バリュー株が買われ始めることは、投資家がまだ東京市場に強気姿勢を貫いていると捉えることにもなります。
もっとも明確に動意づいているバリュー株はどれでしょうか?何よりも「銀行株」の上昇が目に付きます。銀行株というとまずはメガバンク3行ですが株価はすべて堅調です。「三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)」についてはトヨタ自動車を抜き、東京市場で時価総額1位になったことも話題になりました。
それに続く大手行「三井住友トラストグループ(8309)」、
「りそなホールディングス(8308)」もジリジリと株価が上昇しています。
それに先立ち、ちょうどAI半導体株に変動が見られた6月末あたりから、「名古屋銀行(8522)」や
「山陰合同銀行(8381)」などの地銀株の一角も目立った上昇を示しています。
銀行株についてはとくにメガバンク、大手行は長期金利上昇や日銀による利上げが利ざや(貸出金利と預金金利の差)の拡大につながり収益が拡大するとされています。地方銀行についても地域経済の活性化が収益拡大に貢献します。このほか積極的な株主還元(増配、自社株買い)も投資家の評価を高めるものです。
ふと目を向けると今の環境は銀行株に追い風になることが多いことがわかります。東京市場ではAI半導体株が頭打ちとなっても主要セクターの銀行株が買われています。この動きは東京市場の先行きに明るさを示すものと受け止められます。
※7/16時点で松井証券マーケットラボ テーマ検索「銀行」に属する銘柄です。