サッカー選手の年俸と「株式投資」は同じ!W杯サッカーの気付きは「将来価値」だった

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2026年07月01日

サッカー選手の年俸と「株式投資」は同じ!W杯サッカーの気付きは「将来価値」だった


マーケットアナリスト大山です。今週も宜しくお願いします。
W杯サッカー、ずっと見ています。これを執筆しているタイミングは、決勝トーナメント(ノックアウトステージ)出場の32か国が出揃ったタイミング。日本代表も順当に勝ち上がり、決勝トーナメント初戦ブラジル戦を控えています。
今週のコラムはタイトルにも書きましたが、「サッカー選手の年俸と株式投資は同じ」というお話から。
➤サッカー選手の市場価値は現在の実力だけでなく、将来の潜在能力や商業的価値を含む。
これは株式投資におけるDCF法や成長ストーリーへの投資と同様の考え方と同じ。

■サッカー選手の市場価値に関して:
米Forbes誌の記事を参考にすれば、サッカー選手の総収入ランキングで燦然と輝くのは1位クリスティアーノ・ロナウド、2位リオネル・メッシです。https://forbesjapan.com/articles/detail/83721
しかしスポンサー収入(ピッチ外収入)を除いた市場価値を見れば(https://www.transfermarkt.us 参照)、ロナウド選手は約1000-1200万€(ユーロ)、メッシ選手で約1500万€と言われています。二人とも年齢が40歳に掛かり、キャリアの晩年を迎えていることが主な要因のようで、必ずしもトップレベルの選手とは言えない年俸です。
一方で、スペインの若きエースヤマル選手(18歳)は2億€、ノルウェーのハーランド選手(25歳)も2億€。2選手共に若く、才能に溢れ、現実にピッチで結果を出しています。
サッカー界における市場価値とは、何が含まれるのでしょうか。
単なる現在の実力値ではなく、チームにとっては、『今後10年間、チームの主軸として機能し、ピッチ外でも莫大な商業的利益(グッズ・放映権等)を生み出し続ける最高峰の長期資産』に対する評価額かもしれません。そして10-20代前半のメガスターに付く破格の市場価値は、『次の時代(ディケイド)をまるごと買い取るためのコスト』であるとも言えます。向こう10年、世界一の座を約束してくれる存在だからこそ、あの金額はむしろ妥当だとも言えます。

もうご理解頂けたと思います。
つまり市場価値マーケットバリューは、今の実績ではなく、将来価値を見据えたものです。財務・投資の根幹である「DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法」や「成長ストーリーへの投資」の概念そのものです。
例えば、生成AI向けの高帯域幅メモリ「HBM」の需要爆発で激変期にあるDRAM企業たとえばマイクロンテクノロジー<MU>に対して、市場は目先の数字ではなく「これからどれだけの成長ストーリーを描けるか」を見に行っています。スペインのヤマル選手、ノルウェーのハーランド選手のような若き天才に巨額の価値が付くのと同じで、将来の圧倒的な支配力というストーリーがあるからこそ、高いバリュエーションへの転換が正当化されるのです。

この様な観点で日本代表の久保選手の市場価値3000万€、佐野海舟選手4000万€はどうなのか?After W杯サッカーで市場価値が変わるのだろうか?左ウイングバックの中村選手1000万€は安すぎないか?などなど・・・今後大会後の日本人選手の動向にも注目だと思っています。

それでは本編に入ります。


誰がこのAI請求書を払うの?OpenAI上場延期が炙り出した本命オフテイカーの足踏み

OpenAIが公開市場での資金調達(IPO)を来年へ先送りする・・・NYT紙がそう報じた先週末(6/25-26)、ウォール街が最初に問うたのは「では、AIの巨額請求書は誰が払うのか」でした。
OpenAIの前年(2025年)の年間支出総額は約$340億ドル。340億ドルを溶かしたAIの“本尊”が、現金化のタイミングを後ろにずらした瞬間、9984ソフトバンクは急落し、日経平均は約4%沈みました。これはAI需要そのものの否定というニュースではなく、狙い撃ちされたのは「投資する側オフテイカー」でありました。※オフテイカー:需要家

最も鋭く突かれたのがオラクル<ORCL>です。
受注残(RPO)は$6380億ドル(前年比+363%)という空前の規模に膨らんでいますが、決算書はその急増を「特定の大型クラウド契約」由来と説明しました。その筆頭にAIの本命オフテイカーOpenAI(報道で約$3000億ドル規模のStargate系契約)が横たわる、というのが市場の見立てです。単一顧客への集中度は推計で15-20%とも報じられています(会社は内訳非開示で、むしろ分散を強調)。
最大顧客が資金調達の窓を狭める局面では、大型契約の履行・回収に疑問符がつくのは当然で、事実、オラクル株は6/15→6/25の2週間で約▲20%と急落しています。

懸念はOracle単独に留まらず、Microsoft・Google・Amazon・MetaのAIインフラ投資は2026年に巨額(外部推計で合計$850B規模、うち約19%が新規借入)に達するとされ、この1週間(6/18→6/25)で4社の株価はおおむね▲6-7%(MSFT-7.0%/AMZN-7.1%/GOOGL-6.6%/META-6.0%)下落しています。本命顧客が現金を調達できない間、オフテイカーの支払い能力への疑念は燻り、信用スプレッドのじわり拡大とハイテク株のバリュエーション調整が当面のリスクシナリオとして浮上しています。


オラクル:「依存」と「分散」が同居する$6380億ドル

Oracleの本質は、$6380億ドルという受注残の“質”をめぐる綱引きにあります。
市場が「筆頭顧客はOpenAIだろう?」と凄むのに対し、経営陣は決算で「直近30日で$650億ドルを7契約・4顧客から受注したが、いずれもOpenAIではない」「4顧客が各$80億ドル超を契約」と分散を強調しました。ともかく需要の勢いは本物のようです。AIインフラ売上+243%、マルチクラウドDB+531%、電力10GW超確保という結果です。

それでも市場で株価が下落したのは「キャッシュの符号」ゆえと言えます。営業CFは$320億ドル(+54%)と力強い一方で、FY26の設備投資は$557億ドル(前年$212億ドルの約2.6倍)に達し、FY27は報告ベース約$700億ドルへさらに増える計画です。
営業CFを超える投資を債務で賄う構造に、「最大顧客の支払い能力低下」という時間リスクが重なってきました。Oracleの帳簿には「いつ回収できるか」に加えて、「そもそも相手の財布は持つのか」という第二の問いが点灯した格好。


マイクロン:「希少性を握り、現金を抜く者」

対照的なのがメモリの“超殿様”Micronという構図が明らかになりました。
直近四半期は売上$415億ドル(前年同期比+196%)、DRAMの平均単価(ASP)はほぼ2倍に跳ね上がり、会社開示の粗利率は62→85%へ急改善。需要を支えるのは分散とロックであります。

最大顧客でも売上の13-15%にとどまり、複数年・数量拘束の戦略的顧客契約(SCA)で需要を固定。だからOpenAI1社のIPO時期に業績が直結しません。延期報道の同じ6/25に+15.7%で52週高値を更新(年初来YTDでは+325%、1年+854%)した事実が、構図を雄弁に物語る感じです。


そしてApple:「買い手市場の帝王」が列の最後尾に回る日

そして同じメモリ不足は、買い手の頂点に君臨していたAppleをも襲ったわけです。
これまでAppleは圧倒的な購買力でサプライヤーを叩く「買い手市場の帝王」でした。

ところがChatGPT以降のAI特需が構図を裏返しています。Appleは、このBefore ChatGPT/After ChatGPTの変化、つまり、関ヶ原の前と後の世の中というか、世界史で習ったBC/ADのような大きな変化が生じていたことに気が付くのが遅れてしまいました。
エヌビディアやハイパースケーラーが高帯域幅メモリ「HBM」を中心に前払い・数量拘束の長期契約で生産枠を押さえた結果、スポット中心調達のAppleが生産枠の最後尾に回された、という筋書きに。

報道はこの緊張を生々しく伝えています。
WSJ/Barron’sに対しクックCEOが、最新の値上げをメモリ不足のせいだとサプライヤーに帰属させた(Tim Cook Warns Apple Price Hikes Are Coming:‘Unavoidable’)と述べ、これにMicronのCBOサダナがWSJで反撃しています。過去の不況期に「特定の顧客(Appleのことです)」が価格を底値まで叩き、利益急落の中で同社の投資を妨げた・・・その強引な価格要求こそが業界投資を枯渇させ、今日のメモリ不足と値上げを招いた、と示唆(Apple名指しはせず)。
市況産業として虐げられてきたメモリ側の、歴史的な“下剋上”であります。買い負けの兆候は早く、1月末には「Samsung・SK HynixがAI向けを優先しPC・スマホ向けが逼迫」とApple自身が警告したと報じられ、値上げはMacBook/iPadへも波及(https://www.wsj.com/tech/apple-raises-prices-on-macs-ipads-by-200-or-more-on-some-models-a7463f99 6/25、当日AAPL-6.12%、6/15→6/26で-7.18%)。

追い詰められたAppleは、ペンタゴンのブラックリスト企業CXMTからの調達許可をロビー活動で求めているとFTが報じています(6/27)。
ただしこの「禁じ手」には二重のオチがあるようで。

第一に、対中強硬のトランプ政権が安全保障リスクを冒して即承認する公算は小さいこと。
第二に、仮に認められてもCXMTが作るのは主に旧世代の汎用DRAMで、AIサーバーが爆食いする最先端HBMの不足は解決しないので、このロビー活動は、MicronやSK Hynixの強気シナリオ(HBM)を脅かすというより、「世界最強のディフェンシブ消費者ブランドAppleですら、AIインフラのコスト爆発に白旗」という事実を市場に証明してしまった、という読み筋も。

この件は、一次情報も裏打ちしていまして、Apple10-Q(Q2-2026、5/1提出)は「NAND/DRAMを含む部材の供給制約とコスト上昇を経験し、傾向は今後強まる」「(結果)売上・コスト・粗利・業績に重大な悪影響が及び得る」と明記。


オラクルの受注残$6380億ドルは資産であり、同時に「誰の財布に依存しているか」という負債の問いでもあります。

AI相場は「夢を語り、現金を“今”使う者(Oracle)」から「希少性を握り、現金を抜く者(Micron)」への富の移動であって、買い手の帝王Appleですら列の最後尾で待たされたうえでカツアゲされる始末。OpenAIの先送りは、その地図を一段くっきり描き直しただけかも。

片やOracleは続落、片やMicronは高値更新、Appleは値上げと禁じ手のロビー活動

同じ週、同じAI、正反対の符号が見て取れたのです。非常に象徴的な動きでありました。
市場はいま「AI需要があるか」ではなく「その投資が利益とフリーキャッシュフローに変わるか」「誰が実際に現金を中抜きしているのか」を冷徹に選別し始めています。


著者プロフィール

大山季之

大山季之

松井証券シニアマーケットアナリスト。1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。


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