30年ぶりの10年国債金利3%超え!株価への影響から日本株投信の未来を展望する

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2026年09月08日

30年ぶりの10年国債金利3%超え!株価への影響から日本株投信の未来を展望する

日本の長期金利(新発10年物国債利回り)が約30年ぶりに3%を超えた。長期金利(特に10年)は政策金利の見通しと政府の財政政策、経済成長の見通しなど複合的な要因がミックスされて決まる。足元の長期金利上昇については、日銀の利上げ観測と、高市政権が推し進める積極財政に対する不安の両面が映し出された結果とみる向きが多い。


なぜ金利上昇は株価に逆風なのか? 3つの観点で考える

金利上昇の局面で取り沙汰されるのが金利と株価の関係だ。立ち止まって整理してみよう。一般論でいえば、金利上昇は株価に逆風となる。その理由は、①借り入れコストの増加②企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の低下③益利回りの面で株式の投資妙味が債券に比べて劣後――の3つに整理できる。

①は分かりやすい。金利が上昇すれば企業が銀行から融資を受けたり、社債を発行したりして資金調達する際の金利が上がるため、利益を圧迫する。株価は「EPS(1株あたり純利益)×PER(株価収益率)」なので、利益が縮小すれば理論上、株価は下がる。

②については、少し丁寧な説明が必要だろう。株価は言わば、「企業価値」を示したものでもある。企業価値が何かと言えば、将来その企業が生み出すキャッシュフローの現在価値の合計だ。金利が上がれば将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くための割引率が大きくなり、企業価値が低く評価され、株価を押し下げる要因になる。

企業価値は将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計

ここで補足しておきたいのが、より遠い未来に生み出されるキャッシュフローほど、現在価値は小さくなるという点だ。例えば、現在はそれほど大きな利益を出せていないが、将来、莫大なキャッシュフローを生みだすことが期待され、株価の面で評価が高い成長企業ほど、金利上昇の悪影響は大きい。これが「グロース株は金利上昇に弱い」の理屈だ(※)。

③の「益利回り」はEPSを株価で割った値のことで、PERの逆数(1÷PER)でもある。例えば、PERが20倍の企業Aの益利回りは「1÷20=0.05(5%)」。株主は企業の純利益をすべてキャッシュとしてもらえるわけではないので、この指標に違和感を覚える人もいるかもしれない。確かに株主は配当を通じて利益の一部しか手にできないわけだが、株主はその企業のオーナーでもあり、株主総会などを通じて、企業が稼いだ利益の使い方に関する意思決定に参加しているともいえる。企業の純利益は株主に帰属していると解釈できる。

仮定の話として、金利が上昇し、国債の利回りも5%と企業Aの益利回りと同水準になったらどうか。企業Aと国債のどちらに魅力を感じるだろう。多くの投資家はほとんどリスクのない国債を投資先として選ぶだろうし、リスクを伴う株式には高い益利回りを求めるだろう。仮に企業Aに8%の益利回りが要求された場合、PERは12.5倍になる。株価=EPS×PERであるため、理屈の上で株価は下落する。

長期金利と日経平均益利回りの推移

「金利上昇=株価下落」とも単純には言えないワケ

もっとも、金利と株価の関係は「金利上昇=株価下落」で語れるほど単純ではない。金利が上昇し、株価が上昇することは頻繁に起きているし、逆にかつての日本株のように、低金利でも株価が振るわないようなこともあった。

債券の場合、キャッシュフローにあたる利子は一定なので、金利上昇は確実に現在価値を引き下げる。ただ、企業が生み出すキャッシュフローは一定ではない。景気拡大を反映した良い金利上昇であれば、企業が創出するキャッシュフローも拡大するので、金利上昇のネガティブ要因を打ち消すことはあり得る。

もう一つ重要なのは、株価は将来の期待を織り込むという点だ。ある技術やテーマに対する投資家の期待が相当高まっている場合、金利が上昇しても、関連銘柄のPERは高水準に保たれる。昨今のAI相場が典型例だろう。

このほか、金利上昇が将来のインフレ予測を反映したものであれば、企業の名目上の利益が上がることが期待され、株価が上昇することもある。インフレはモノの値段が上がることであり、裏返せばお金の価値が下がることでもある。急速にインフレが進んだ場合、インフレヘッジのために現金が株式市場に流れ込み、相場を押し上げることも稀にある。実際、トルコやアルゼンチンといった新興国ではそうしたことが起きている。


マーケットで意識される「ドーマー条件」

このように金利上昇が株価にもたらす影響は一概には言えないのだが、足元の日本の金利上昇は日本株にどう影響するのだろうか。今の日本の金利上昇を「良い金利上昇」と捉えるのは苦しい。コストプッシュ型の要素が強いインフレの進展と、将来の財政懸念の高まりによるタームプレミアム上昇を映した「悪い金利上昇」と考えるのが自然だ。その意味において、日本株が厳しい局面を迎えているのは間違いないだろう。

現在、市場関係者は「ドーマー条件」という考え方への関心を高めているとされる。「名目GDP(国内総生産)成長率>国債金利」であれば、利払い負担を経済成長で吸収でき、GDP比の政府債務残高が安定するという理屈だ。2026年4~6月の日本の名目GDP成長率は季節調整済前期比の年率換算では4.8%だが、前年同期比でみると3.2%(内閣府発表)であり、足元の長期金利の水準に近い。

名目GDP成長率と長期金利の推移(1995年以降)

厳密に言えばドーマー条件は足元の金利ではなく、今よりもずっと金利が低いころに発行された既発債も含めた平均調達金利で考える。そのため、金利上昇でただちに条件を満たさなくなるとはいえないが、市場では名目GDP成長率と長期金利の差は意識されているとみられ、その逆転は異常事態のトリガーとみなされる可能性も否めない。

いずれにしても高市政権はこうした点を意識しながら、「戦略17分野」への投資といったアグレッシブな施策も実行する必要がある。針の穴に糸を通すような政策運営が迫られるが、持ち前の胆力と手腕に期待したい。


今こそ国内株アクティブファンドに注目したい

足元の金利上昇は長く続いたデフレ時代の終焉を印象付けている。これまでとは異なり、金利に負けない付加価値を提供できる企業と、そうでない企業が選別される時代に突入したともいえよう。投資信託で言えば、国内株のアクティブファンドに注目したい。金利上昇の影響度合いや耐性はセクターや銘柄によっても異なる。そうしたことを考慮したうえで、日本の「勝ち筋」に乗る銘柄を見抜くファンドマネジャーの目利きが重要な意味を持つ局面になってくる。

現在の日本に必要なのは、産業の新陳代謝や前例にとらわれない発想だろう。アクティブファンドは、投資先を公正価値に導く「価格発見機能」に加え、有望な企業に資金を多く供給し、そうではない企業には市場からの退場を促す「資金配分機能」を持つ。日本経済が再び輝くためにアクティブファンドの役割は小さくない。

【※補足】グロース企業は成長のために多額の資金を借り入れているケースも多いため、「グロース株は金利上昇に弱い」というのは、借り入れコストの増加という側面からも説明できる。また、グロース企業は高PER企業であり、益利回りは小さくなる。金利上昇で、投資妙味が債券に対して劣後する点においても影響が大きい。


著者プロフィール

海老澤界

海老澤界

松井証券シニアファンドアナリスト。横浜国立大学経済学部卒業後、日刊工業新聞記者を経て格付投資情報センター(R&I)入社。年金・投信関連ニューズレター記者、日本経済新聞記者(出向)、ファンドアナリストを経て、マネー誌「ダイヤモンドZAi」アナリストを務める。長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。投資信託を多面的にウォッチし、豊富な投信アワードの企画・選定経験から客観的にトレンドを解説。


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