セル・イン・メイとは?株式市場の格言を実際のデータを用いてわかりやすく解説!
株式投資の世界には「セル・イン・メイ」という有名な格言があります。「5月に株を売れ」という意味のこの言葉、聞いたことがあるでしょうか?投資を始めたばかりの初心者にとっては、「本当に5月に売ったほうがいいの?」「なぜ5月なの?」と疑問に思うかもしれません。
この記事では、投資の世界で長年語り継がれてきた「セル・イン・メイ」について、その意味や由来、実際のデータ分析、そして初心者が知っておくべき活用方法まで、わかりやすく解説します。
目次
セル・イン・メイ(Sell in May)とは?
セル・イン・メイ(Sell in May)は、正式には「Sell in May, and go away, don't come back until St Leger day.」というアメリカ・ウォール街の相場格言です。直訳すると「5月に売って去れ、そしてセントレジャー・デーまで戻ってくるな」となります。
わかりやすく言い換えると、「5月に保有している株を売却して、秋(9月頃)まで株式市場から離れておこう」という意味です。つまり、夏場(5月から9月)は株価が上がりにくい、または下がりやすい傾向があるため、一旦売却して様子を見るのが賢明だという教えです。
このセル・イン・メイは、アノマリーの一つとして知られています。アノマリーとは、一般的な市場理論では合理的な説明ができないものの、過去のデータに基づいて繰り返し観測される価格変動の傾向のことを指します。
アノマリーはマーケットごとに存在しますが、「セル・イン・メイ」は世界的に有名な格言として知られています。
セル・イン・メイの由来と歴史
セル・イン・メイという格言はイギリスで生まれました。格言に出てくる「セントレジャー・デー(St Leger day)」とは、毎年9月の第2土曜日にイギリスで開催される競馬の大レース「セントレジャー・ステークス」のことを指します。つまり、「5月に株を売って、9月の競馬シーズンまで戻ってくるな」というのが元々の意味でした。
この格言が生まれた背景には、当時のイギリスの投資家たちのライフスタイルがありました。貴族や商人、銀行家などの裕福な投資家たちは、夏の間は避暑地でバカンスを楽しみ、秋になってから投資活動を再開していました。そこで、多くの投資家が市場を離れることで、夏場の取引量が減り、株価も停滞しがちになるという現象が観察されたのです。
この格言はその後アメリカにも伝わり、10月末のハロウィンの時期に株を買うと翌年4月に向けて相場が上昇しやすいという経験則として「ハロウィン効果(Halloween Effect)」とも呼ばれるようになりました。
なぜ5月に株を売れと言われるのか?
セル・イン・メイが語り継がれる背景には、いくつかの理由が考えられています。ただし、これらはあくまで仮説であり、合理的に証明されているわけではありません。
ヘッジファンドの決算や株主総会の時期
ヘッジファンドの決算月は12月が最も多いとされていますが、6月決算を採用しているファンドも存在します。これらの6月決算ファンドには、決算の45日前までに解約を通知する必要があるため、5月にポジション整理の売りが出やすくなるという説があります。
投資家の夏季休暇
ヨーロッパやアメリカの投資家は、6月から8月にかけて長期の夏季休暇を取る傾向があります。市場参加者が減少することで取引量が減り、流動性が低下するという面があります。また日本でも夏場は相場参加者減少により出来高が減り、相場が閑散としやすく、「夏枯れ相場」と呼ばれています。
企業決算のタイミング
3月が決算月である企業が多い日本では、4月下旬から5月中旬にかけて本決算の発表が集中します。そのため、5月下旬以降は取引材料が不足し、株価が上昇しにくいということが考えられます。
日本においてもセル・イン・メイは有効なのか?実際のデータで検証!
では、セル・イン・メイは日本においても本当に有効なのでしょうか?日経平均株価の過去のデータを見てみましょう。
月別の平均騰落率(1980年1月~2025年9月)
| 1月 | 0.51% | 7月 | -0.06% |
|---|---|---|---|
| 2月 | 0.09% | 8月 | -0.34% |
| 3月 | 1.01% | 9月 | -0.84% |
| 4月 | 1.53% | 10月 | 0.34% |
| 5月 | 0.45% | 11月 | 1.66% |
| 6月 | 0.31% | 12月 | 1.36% |
実際の日経平均の月別の平均騰落率を見てみると、3月が1.01%、4月が1.53%と高いパフォーマンスを示している一方で、9月のパフォーマンスが-0.84%と最も悪いことがわかります。
日本でセル・イン・メイが意識される背景には、3月決算企業の存在があります。日本企業の多くは3月決算を採用しており、4月下旬から5月中旬にかけて前年度の決算発表が集中します。好業績の発表を受けて3月・4月に株価が上昇すると、その利益を5月に確定しようとする投資家の動きが活発になります。この利益確定売りが、まさに「5月に売れ」というセル・イン・メイの格言と合致するのです。
つまり、日本市場においては「決算シーズンで上昇した株を5月に売る」という投資行動が、セル・イン・メイのアノマリーの可能性を高める一因になっていると考えられます。
ただし、必ずしもセル・イン・メイが当てはまらない年も多いという点には注意が必要です。5月から9月にかけて株価が上昇した年として、例えば2020年は新型コロナウイルスの影響で3月に株価が暴落した後の回復局面では5月の日経平均株価は上昇しました。このように、市場環境や経済状況によっては、アノマリーが当てはまらないケースもあります。
セル・イン・メイをどう活用すべきか?
投資初心者の方は、セル・イン・メイをどのように捉え、活用すればよいのでしょうか?
絶対的なルールではなく、参考程度に
最も重要なのは、セル・イン・メイはあくまでアノマリーであり、必ず当てはまるルールではないということです。「5月だから絶対に売らなければ」と焦る必要はありません。
長期投資家は慌てる必要なし
10年、20年といった長期スパンで投資をしている場合、数ヶ月の季節的な変動は大きな問題ではありません。むしろ、短期的な値動きに一喜一憂せず、腰を据えて保有し続けることが重要です。
リスク管理の一環として意識する
絶対的な根拠はありませんが、「5月以降は株価が軟調になりやすい」という可能性を頭の片隅に置いておくことで、過度に楽観的にならず、冷静な判断ができるかもしれません。
買い増しのチャンスと捉える
逆に考えれば、5月から9月に株価が下がるなら、その期間は「安く買えるチャンス」とも言えます。長期投資家にとっては、むしろ仕込み時と捉えることもできるでしょう。
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会員限定動画では、「投資にまつわる都市伝説」と題し、経済アナリスト・森永康平さんが投資の世界にはびこる、 「根拠不明」「曖昧」でも事実のように語り継がれているアノマリーを解説します。
以下の動画では「セル・イン・メイ」について、なぜ株は5月に売った方がいいのか、その根拠を解説するとともに、「有名人ショック」について、なぜ有名人が結婚すると株価が下がるのかを解説しています。是非ご覧ください。
「セル・イン・メイ」に関するよくある質問
セル・イン・メイに関して、初心者の方が疑問を感じやすい点をQ&A形式でわかりやすくまとめます。
Q.セル・イン・メイに従わなかったら損しますか?
そんなことはありません。2020年のように、5月以降も株価が上昇した年も多くあります。アノマリーはあくまで「過去の傾向」であり、未来を保証するものではありません。
Q.セル・イン・メイとハロウィン効果の違いは?
基本的には同じ現象を指しています。セル・イン・メイはイギリス発祥の格言で、ハロウィン効果はアメリカで広まった呼び方です。ハロウィン効果では「10月末(ハロウィン)に買って5月末に売る」という表現になっています。
Q.セル・イン・メイのような有名なアノマリーは他にもありますか?
株式市場には他にも多くのアノマリーが存在します。代表的なものをいくつかご紹介します。
1月効果
1月は株価が上昇しやすいという現象。特に小型株で顕著とされています。年末の税金対策による売りの反動や、新年の投資資金の流入が理由とされています。
節分天井・彼岸底
日本で最も有名なアノマリーの一つ。「節分(2月初旬)に高値をつけ、彼岸(3月下旬)に安値をつける」という格言です。年初の期待感で株価が上昇した後、3月決算前に調整が入るという傾向を表しています。
大統領選挙サイクル
アメリカの大統領選挙の年は株価が上昇しやすいというアノマリー。政権が景気対策を実施しやすい時期であることが理由とされています。
これらのアノマリーも、セル・イン・メイと同様に「必ず当てはまる」ものではなく、参考情報として知っておく程度が適切です。代表的なアノマリーについては、以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
セル・イン・メイを理解して今後の投資戦略に活かそう
セル・イン・メイ(Sell in May)は、「5月に保有している株を売却して、秋(9月頃)まで株式市場から離れておこう」という意味のアメリカ・ウォール街の相場格言で、アノマリーのひとつです。
ただし、アノマリーは絶対的なものではなく、あくまで過去の値動きの傾向に過ぎません。過信はせず、自身の投資スタイルに合わせて、またファンダメンタルズ分析やテクニカル分析といった判断材料と組み合わせて、上手く活用しましょう。