エヌビディア決算と長期金利の行方:中東情勢とフィジカルAIが動かす株式市場

2026年08月21日

エヌビディア決算と長期金利の行方:中東情勢とフィジカルAIが動かす株式市場


今週の東京株式市場:自動車・医薬品やグロース株へ広がる「出遅れ銘柄」の循環物色

今週の東京株式市場は、日米の金利動向や中東情勢に神経質に反応し、週前半は上昇したものの週後半は調整含みとなりました。

週初17日は、米国の利下げ期待や好決算への安心感から日経平均株価は5日続伸し、一時6万9,000円台に到達しました。しかし、週半ばにかけては米長期金利の上昇やホルムズ海峡再開が遠のくことによる原油高が嫌気され、18日と19日の2日間で日経平均は約3,900円下落する展開となりました。米半導体株指数の急落も響き、主力銘柄が軒並み売られました。

20日は、米国の国債買い入れ消却(バイバック)増額に伴う日米の長期金利低下が好感され、買い戻しが優勢となりました。ただ、上値でのシコリが多いAIデータセンター関連ではなく、出遅れ感のあった自動車や電力、医薬品、不動産のほか、金利低下が追い風となる新興グロース市場など、幅広いセクターに資金が流入しました。ただ、バイバックに伴う金利低下は持続せず、21日は再び売られて取引を終えました。

足元の相場は日米の金利動向に左右される展開が続いており、日米の10年債利回りを確認しつつ投資戦略を練る必要がありそうです。


今週の個別銘柄解説:ソフトバンクグループ、個人向け社債1兆円発行へ

ソフトバンクグループ(9984)は、国内企業として過去最大となる1兆円規模の個人向け社債の発行を準備しています。世界的なAI投資競争が激化する中、潤沢な国内の個人マネーをターゲットに資金調達を加速させる狙いです。調達資金は、ロボットを自律制御する「フィジカルAI」分野のM&A(スイスABBのロボティクス部門買収など)や、米オープンAIへの追加出資に向けたつなぎ融資の返済などに充てられる見通しです。

資金調達拡大の背景には、傘下の英アーム・ホールディングスの株価上昇により、保有株に対する純負債の割合(LTV)が13%まで改善し、負債を増やす余力が生まれたことがあります。

一方で、株価は19日一時10%以上と大幅に続落しました。想定される金利が4%代後半となる見込みで、重い金利負担が警戒されています。また、米オープンAIの売上成長鈍化や損失拡大、競合アンソロピックに対する劣勢が報じられたことで、将来のIPO(新規株式公開)を通じた収益貢献への警戒感も強まっています。巨額の資金調達による攻めのAI戦略を評価する声がある一方で、投資資金を本当に回収できるのか市場のシビアな視線が浮き彫りとなっています。

日本郵船・川崎汽船連日の最高値、中東緊迫で

大手海運株が18日に逆行高を演じ、日本郵船(9101)川崎汽船(9107)が上場来高値を更新しました。中東情勢の緊迫継続を背景に、紅海やホルムズ海峡の航行への懸念から海上運賃が上昇し、収益を押し上げるとの思惑が広がっています。

足元の好業績も追い風となっており、大手3社は2027年3月期の業績予想をそろって上方修正済みです。また、アナリストによる投資判断の引き上げや目標株価の上方修正も買い材料視されており、市況の改善と地政学リスクを背景とした運賃高止まりへの期待から、セクター全体が強い動きを見せています。

期間:2026年1月5日(=100として指数化)~8月21日 出所:QUICKより松井証券作成

三井不動産、年初来安値を更新

三井不動産(8801)三菱地所(8802)住友不動産(8830)といった大手不動産株が18日、相次いで年初来安値を更新しました。長期金利が約30年ぶりに2.9%台へと上昇したことを受け、金利上昇による業績への悪影響を懸念した売りがでていました。水曜日に米国の国債買い入れ消却増額で日米の長期金利は一時的に低下し不動産セクターも買われましたが、金曜日には再び金利が上昇し不動産セクターも売られました。

不動産セクターは金利変動に対して敏感であり、今回の急落の背景には、借入コストの増加による収益圧迫や、住宅ローン金利の上昇に伴う需要減退への警戒感があります。市場では金利上昇局面における「逆風」が一段と意識されており、セクター全体で厳しい展開が続いています。

期間:2026年1月5日(=100として指数化)~8月21日 出所:QUICKより松井証券作成

伊藤忠、データセンター開発へ

伊藤忠商事(8001)がデータセンター(DC)開発事業への本格参入を発表しました。2030年までに首都圏、関西、九州で数千億円を投じて10棟程度(電力容量50メガワット級、年1〜2カ所のペース)を開発し、生成AIの普及で需要が急増する米テック大手などのハイパースケーラー(大手クラウド事業者)に貸し出します。開発した施設は長期保有せず、外部に売却することで資産効率を高める方針です。

DC開発において高いハードルとなる用地や電力の確保に向けて、2025年12月に戦略提携したJR東日本(9020)との協業も視野に入れています。JR東日本が持つ豊富な社有地や発電インフラ、電力会社との繋がりを活用できれば、開発の大幅な加速が期待されます。競合の三菱商事などもDC事業に注力する中、不動産事業の新たな収益源として同社の中長期的な成長に大きな注目が集まっています。

上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を8/21(金)21:00までに
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。


来週の注目材料

米エヌビディア5~7月期決算発表

エヌビディアは一企業の決算の枠を超え、世界的なAIブームの継続性を審判する市場全体のイベントとなっています。

8月26日(米市場引け後)発表のエヌビディア5-7月期決算の会社ガイダンスは、売上高約910億ドル(±2%)、粗利率約75%。市場予想は売上約919〜920億ドル、調整後EPS約2.08〜2.09ドル(前年比約97%増)です。

主なポイントとして①売上・EPSがガイダンス/予想を上回るか(特にデータセンター部門)、②次四半期(Q3)ガイダンスの強さ、③粗利率75%前後の維持、④Blackwell需要の持続とVera Rubinの量産・出荷状況、⑤受注残の積み上がりや供給制約・中国関連のコメントです。

過去数回は好決算でも株価が下落する傾向があり、実績より先行きガイダンスが株価の鍵となります。

発表直後の東京株式市場(27日木曜日の朝)は大きく乱高下することも考えられます。例え過去最高の業績であっても、市場の極めて高い期待値に届かなければ、事実上の材料出尽くしとして激しい利益確定売りに押されます。日経平均株価全体の足を大きく引っ張るリスクがありますので要注意です。

日米物価指標

日米の物価動向を占う重要指標が相次ぎます。注目は26日発表の米7月PCEデフレーターです。FRBが最重視するコア指数は直近4ヶ月間、前年比3.3%で高止まりしており、ここからの鈍化が確認できるかが焦点です。

予想に反してインフレの粘着性が示されれば、9月FOMCでの利上げ観測が再燃するリスクも孕んでいます。

一方、国内では東京都区部CPIが発表されます。日銀が警戒するサービス価格の粘着性が示されれば、9月の追加利上げの可能性が高まるでしょう。

日本株相場については、米インフレの動向が依然不透明な中、日米の長期金利がどのような反応を示すのか注意が必要です。

特にサービス価格の動向次第では、米金利の再上昇が指数の重石となる恐れもあります。ウォーシュ議長下でのFRBの政策見通しがが不透明なこともあり、為替の乱高下リスクを警戒しつつ慎重に見極める姿勢が求められます。

ジャクソンホール会議

世界中の中央銀行総裁や経済学者が集まるこの会議は、秋以降のグローバルな金融政策の転換点として市場が警戒するイベントです。最大の焦点は、新議長に就任したウォーシュ氏による基調講演です。公式テーマは「決済分野の金融イノベーション」ですが、市場の最大の焦点は、インフレ抑止への姿勢をどこまで明確に示すかに注目が集まっています。

9月FOMCでの利上げ示唆の有無や政策方針のヒントを期待する声が強い一方、議長はフォワード・ガイダンスを避けデータ重視を貫くため、明確なシグナルは限定的との見方も多い状況です。足元の長期金利上昇に対しても、何らかの発言が出るのかにも注目が集まります。


著者プロフィール

窪田朋一郎

窪田朋一郎

松井証券チーフマーケットアナリスト。
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「マーケットラボ アクティビスト追跡画面」など、これまでにない独自の投資指標を開発。


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