「金利が上がると株価は下がる」は本当?個人投資家が最初に押さえる基本
「日銀が利上げしたから株安」
「長期金利が上がったので成長株は売り」
株式投資を始めると、こうした解説をよく目にします。この通説は半分正しく、半分足りません。金利は重要な材料です。ただし、「上がれば必ず株が下がる」ほど単純ではありません。

2026年9月が示す実際の値動き
9月17〜18日、日銀は政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げました。約31年ぶりの水準です。前回6月から約3カ月。正常化開始後では最も短い間隔でした。長期金利の動きはさらに象徴的です。新発10年国債利回りは9月初めに3.00%、25日には一時3.115%と、1996年以来の高水準を更新しました。
それでも日本株は一方向に崩れたわけではありません。地方銀行が買われ、建設や不動産が売られる。指数より中身の入れ替わりが目立ちました。見るべきなのは「金利が上がった」という事実そのものではありません。上がったあとに、何が買われ、何が売られたかです。
金利とは何か
金利とは、お金を借りる対価です。「今すぐ使えるお金」の値段と考えれば十分です。ニュースでよく出るのは次の2つです。
政策金利
日銀が誘導する、ごく短い期間の金利。金融政策のハンドルです。
長期金利
代表は新発10年国債利回り。先行きの景気、物価、日銀の政策を市場が織り込んで決まります。
株式投資でより重要なのは、多くの場合、長期金利です。なぜなら企業価値は「何年も先まで続く利益」を、今の価値に直して見るためです。
なぜ「金利上昇=株安」と言われるのか
理由は3つあります。
1. 将来の利益の評価が下がる
株価は、これから稼ぐ利益と、その利益をどれだけ高く見るかの掛け算です。金利が上がると、安全な国債の魅力が増し、先の利益を待つ株式の評価は厳しくなりやすい。成長期待が大きく、利益が遠い会社ほど影響を受けます。
2022年の米国が典型です。急速な利上げのなか、ナスダック総合指数は年間で約3割下落しました。利益が消えたというより、高い期待を織り込んでいた株の評価が切り下がった面が大きかった、と整理できます。
2. 債券と比べた魅力が変わる
10年国債の利回りが3%台まで上がると、「無理に株を持たなくてもよい」と感じる人が増えます。株式の益回りと国債利回りの比較は、今後の連載で触れていきます。
3. 景気を冷やす可能性がある
住宅ローンや設備投資のコストが上がれば、消費や投資は鈍りやすい。この経路は評価ではなく、利益そのものが傷むルートです。ただし落とし穴があります。金利が「景気や物価が強いから」上がっている場合、利益は増えていることがあります。
金利が上がっても株が上がることがある
金利は単独では動きません。景気、物価、業績、為替が連動して動きます。
見分けの軸は、この問いです。
『なぜ金利が上がったのか。
その理由は、企業の利益を増やすか、減らすか。』
良い金利上昇
景気や物価が伴い、利益も増える上昇。割引率は上がっても、利益増が上回れば株は上がり得ます。また銀行は、金利そのものが収益源になりやすいです。
悪い金利上昇
景気が弱い、あるいは想定以上の速さで金利だけが上がる場合。評価の切り下げが先行し、株安になりやすい。
2000年以降、日本の10年国債利回りが上昇した年の多くで、日経平均も上昇していました。「景気が強いから金利が上がり、株も高い」という関係は、日本でも見えます。2026年も近い構図です。政策金利は1%を超え、長期金利は3%台です。
それでも東証の銀行業株価指数は、9月末時点の年初来上昇率が約51%と、日経平均やTOPIXを上回っています。金利上昇は、指数全体の下落というより、選別として表れています。
日本株で見られるイレギュラーな値動き
織り込みとサプライズ
2024年3月のマイナス金利解除は、事前にかなり織り込まれ、株は高い水準を更新する場面がありました。一方、同年7月末の利上げは想定を上回り、直後に日経平均は短期間で1割超下落しました。2026年9月の利上げは前者に近く、事前に織り込まれていました。利上げ発表=株安、ではありません。
指数は同水準でも中身は入れ替わる
追い風になりやすいのは銀行や一部の保険。逆風になりやすいのは高PERの成長株、不動産、住宅関連、建設です。「日経平均が下がっていないから影響はない」とは限りません。
為替が素直に反応しない
日本の金利上昇は本来、円高要因です。ただ、9月の利上げ後も円安修正は進みにくい、との指摘が続いています。金利、為替、輸出株はセットで見る必要があります。
金利ニュースを見たときの3つの問い
株の売買を行う前に、確認してもらいたい事項は以下の3点です。
1.どの金利が上がっているか
政策金利か、2年債か、10年債か、30年債か。影響を受けるセクターが違います。
2.なぜ上がっているか
景気や物価の反映か、財政への警戒か、日銀のサプライズか。2026年秋の上昇には、利上げ観測に加え、原油高や財政運営への警戒も重なっています。
3.利益は増えるのか、評価だけ下がるのか
上昇を吸収できる会社と、評価の切り下げだけで終わる会社では、その後が違います。
次回は、株価を「将来の利益の現在価値」として見たとき、金利が計算のどこに入るのかを扱います。PERの高い株が金利に弱い理由を、数式なしで整理します。