スペースXはS&P500に1年以上入らない?オルカンとの差が生まれる理由

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2026年06月30日

スペースXはS&P500に1年以上入らない?オルカンとの差が生まれる理由

イーロン・マスク氏率いる宇宙企業、スペースXが6月12日に米ナスダック市場に上場した。時価総額2兆ドル(300兆円超)を超える前例のない大型上場で、一時、アマゾンやマイクロソフトといった巨大IT企業の時価総額も上回った。お金が集まる背景の1つに、インデックスファンドが参照する指数への組み入れを見越した買いがあるとの見方は根強い。実際、どのタイミングで組み入れられるのか。日本の投信のインデックスファンドで参照されることが多い主要指数で探ってみた。


S&P500への組み入れは1年以上先

S&P500は米国株のインデックスファンドに参照される最もメジャーな株価指数であるため、同指数のスペースXの取り扱いは非常に気になるところだ。結論から言えば、S&P500のスペースX採用は早くても1年以上先になるだろう。

国内の米国株インデックス型投信の主な参照指数(26年5月末時点)

そもそもS&P500のルール上、IPO後12カ月経ってから、指数への追加が検討されるという決まりがある。また、スペースXの株式上場目論見書によれば、2023年度と2025年度は大幅な最終赤字となっており、黒字の定着には程遠い。S&P500に採用されるためには、一般会計原則(GAAP)ベースの純利益が「直近4四半期黒字」および(∧)「直近の連続4四半期の合計で黒字」という財務の健全性に関する基準を満たす必要もある。

S&P500を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは4月以降、これらの基準を緩和するか否か、市場関係者とコミュニケーションをとってきたが、6月4日にルール変更を見送る発表をしている。そもそもS&P500の新規採用銘柄に対する態度は厳しいことで有名だ。テスラですら、上場からS&P500採用まで10年以上の年月を要した(2010年上場、2020年にS&P500に組み入れ)ことを考慮すれば、スペースXのS&P500組み入れは数年先となってもおかしくない。

もっとも、裏を返せば「S&P500がスペースXを構成銘柄に加える」という巨大な需給イベントが残されているということでもある。少し古いデータにはなるが、S&P500に連動する金融商品(ETF=上場投信を含む)の総額は2024年末時点で約9兆米ドルと巨額だ。S&P500のルールを念頭に置いたうえで、スペースXの決算動向などを注視し、常に組み入れのタイミングを意識しておくとよいだろう。


MSCI系は6月29日にスペースXを組み入れ済み

ETFを除いて国内で純資産総額が国内最大の投信「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)が参照するのがMSCIオール・カントリー・ワールド(ACWI)指数だ。日本を除く先進国株で構成するMSCI KOKUSAIに連動する投信の純資産も国内ではそれなりに大きい。

国内の複数地域インデックス型投信の主な参照指数(26年5月末時点)

MSCIウェブサイトでの発表に基づけば、スペースXは6月29日にすでに指数に組み入れられている。IPO時の時価総額が非常に大きいため、あらかじめ定められている早期の組み入れルールが適用されるためだ。この点、財務の健全性といった経営の「質」を重視するS&P500と、マーケットの形に追随することを優先するMSCIといった具合で、指数設計に対する思想の違いが出ているとも言える。

いずれにせよ、ここまでの話で分かるのが、「スペースXがオルカンには入るが、S&P500には当面入らない状況が続く」という事実だ。オルカンの受益者は間接的ではあるものの、スペースXの株主となる。一方、S&P500の受益者はそうではない。インデックスファンド選びにおいて、無視できない要素になるのではないか。



「FANG+」には入る? その他のインデックスの対応

日本で純資産総額が大きいインデックスファンドが参照しているほかの株価指数を含めスペースXへの対応を表にしてみた。

日本のインデックスファンドで参照される主要指数とスペースXへの対応

ナスダック上場企業で構成する「ナスダック100」に加え、中小型も含む全世界株指数「FTSEグローバル・オールキャップ指数」もスペースXの組み入れを決めている。これらの指数のプロバイダーは、スペースX上場前に早期組み入れ基準の緩和といったルール変更を実施。IPOが有力視されるアンソロピックやオープンAIなども視野に、巨大企業に門戸を広げる姿勢が浮き彫りになる。

なお、ほぼすべての米国上場株を対象とする「CRSP USトータル・マーケット指数」については、スペースXの早期組み入れにおいて、最大の障壁である浮動株比率に関する基準を4月に緩和している。当コラムを書いている6月29日時点で、公式発表は見当たらないものの、「網羅性」という指数の生命線を考慮すれば、いずれ組み入れられる公算が大きいだろう。

日本において個人投資家に人気のインデックスファンドが参照する「NYSE FANG+指数」についてはどうだろう。ルール上、上場後60日経過すれば、組み入れ対象になることができることに加え、利益に関する基準がないことから、S&P500よりも早い採用となる可能性も否めない。もっとも、構成銘柄数が10と限られており、そのうち、FAANMG(メタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾン、ネットフリックス、マイクロソフト、アルファベット)とエヌビディアの7社がほぼ固まっている状態で、割って入るのは至難といえよう。


NYダウにスペースXが採用される日が来るとしたら…?

主要指数の中で、スペースX採用までの距離が最も遠いとみられるのが「NYダウ(ダウ工業株30種平均)」だ。そもそもS&P500とNYダウは算出会社が同じということもあり、S&P500への採用はNYダウ採用の必要条件である。つまり、S&P500に採用されなければNYダウ採用の道は開けない。

加えて、①評判が高い②持続的成長を達成している③投資家の関心が高い――の3つの条件を満たす必要がある(指数委員会が判断して銘柄を決める)。特に②の「持続的な成長」が最大のネックとなるとみられ、現時点では将来の業績の不確実性が大きいスペースX採用のハードルは極めて高い。

米国においてNYダウはあくまで「株価のシンボル」であり、インデックスファンドの参照指数としての認知はさほど高くない。一方、日本ではNYダウのインデックスファンドは一部で根強い人気がある。将来、スペースXがNYダウに組み込まれる日が来るとしたら、その時は、マスク氏が描く宇宙へのロマンが誰もが認めるビジネスとして結実した瞬間と言えるのかもしれない。

※指数を公表するプロバイダーによって、スペースX組み入れ発効日について、当日の取引開始時点を指しているケースと取引終了時点を指しているケースの両方があるようにみられます。また、「上場から〇日」といった表現も上場日を含めるのか含めないのか不明瞭な場合があります。詳しいニュアンスについては指数公表会社(指数プロバイダー)が公表する情報を直に確認することを推奨します。


著者プロフィール

海老澤界

海老澤界

松井証券シニアファンドアナリスト。横浜国立大学経済学部卒業後、日刊工業新聞記者を経て格付投資情報センター(R&I)入社。年金・投信関連ニューズレター記者、日本経済新聞記者(出向)、ファンドアナリストを経て、マネー誌「ダイヤモンドZAi」アナリストを務める。長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。投資信託を多面的にウォッチし、豊富な投信アワードの企画・選定経験から客観的にトレンドを解説。


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