自民党が衆院選圧勝! 株は? 金利は? 今後のマーケットを占う

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2026年02月10日

自民党が衆院選圧勝! 株は? 金利は? 今後のマーケットを占う

2月8日投開票の衆議院総選挙において、自民党は単独で議席定数の「3分の2」である310議席超を獲得、歴史的圧勝を収めた。これによって、参議院で否決された法案も衆院で再可決して成立させられるようになる。国民からの絶大な人気もあり、高市早苗首相は名実とも非常に大きな政治的権力を掌握したといえよう。


今回も「選挙は買い」だったか?

「選挙と株価」のアノマリーについてまとめた1月20日のコラムでは、過去の衆院総選挙に絡む期間の日経平均株価の動き掲載した。その基準を今回に当てはめると、日経平均の終値は解散日(1月23日)が5万3846円87銭、総選挙直前(2月6日)が5万4253円68銭となり、その間の上昇率は0.8%とほぼ横ばいだった。

ただ、選挙戦の端緒となったのは、高市首相が通常国会冒頭における衆院解散を検討していることを報じた、1月10日付(インターネット配信は前日夜)の読売新聞のスクープだ。同報道を受け、3連休明け、1月13日の日経平均は3.1%の大幅上昇となった。また、それを上回る3.9%の上昇となった2月3日は、米国株式相場の上昇に、メディアの情勢調査で自民優勢が伝わったことも重なった結果だ。

当初は「政権選択選挙」の色彩も帯びていたが、立憲民主党と公明党の合流で結成された中道改革連合が、実際には政権交代が可能なほど候補者を擁立しなかったこともあり、焦点は徐々に「自民・維新の与党がどの程度勝つか」に絞られていった面がある。

自民党中心の安定した内閣誕生に対する期待が高まった選挙戦後半になると、マーケットは上昇基調を強めていく。そして、投開票翌日の2月9日、日経平均の上げ幅は一時3000円を超え、5万7300円台に乗せる場面もあった。一連の流れをみると、今回も「選挙は買い」が当てはまった部分は大きかったと言えよう。

日経平均の推移(2026年1月以降)

重要なのは今後だ。マーケットは「ある程度の」政治の安定を求めるものの、「一方的になり過ぎる」のも嫌う傾向がある。今回の選挙で、国民は高市氏に強いリーダーシップを与えたことになるのだが、米国のトランプ大統領を見れば分かる通り、強いリーダーシップは不確実性と紙一重である。不確実性はマーケットにおけるリスクそのものだ。今後の高市氏の発言や政策転換などにマーケットが大きく影響する可能性もあることは、念頭に置いておくべきだろう。


「最後通牒ゲーム」と「独裁者ゲーム」

そこで気になるのが、単独で3分の2という議席を手に入れた高市氏の今後の振る舞いだ。ゲーム理論の「最後通牒ゲーム」と「独裁者ゲーム」が今後を見通すうえで参考になる。最後通牒ゲームの内容はこうだ。2人のプレイヤーが一定の金額を分ける。提案者が配分を決め、もう片方がそれを受け入れるか判断し、受け入れたら双方が配分通りの金額を得て、拒否すれば2人とも1円も受け取れない。

例えば1000円を2人で分けるとしよう。合理的に考えれば、提案者は「999円が自分、相手が1円」という配分にするだろうし、もう片方は、「1円でももらえないよりはマシ」だから、それを受け入れるだろう。しかし、実際に実験をしてみると、提案者は相手にそれなりの取り分を与えることも多く、もう片方は1円より多い額でも、受け取りを拒否するケースも多いとされる。

最後通牒ゲーム

実は解散前の高市氏の立場はこのゲームの提案者に近かった。自民党単独では過半数に届かない状況で、拒否されてしまえば、法案を通すことができない。そのため、連立パートナーである日本維新の会や野党の国民民主党に必要以上に譲歩する姿勢を鮮明に出していた。しかし、選挙を経て単独で3分の2の議席を得た現在は全く状況が異なる。そこで登場するのが「独裁者ゲーム」だ。

独裁者ゲームでは、仮に1000円の分け前を決める場合、一方が配分を決め、もう片方はそれを受け入れるしかない(拒否権はない)。選挙後の高市氏の置かれている状況に近い。実は実験によると、このゲームにおいても提案者(独裁者)は、相手にそれなりの額を分け与えることが多いとされる。「相手に喜んでほしい」「相手に認められたい」という情緒的な心理が働くためだ。政治家の本能で言えば「善政を敷くことで歴史に名を残したい」と思案する力が働くともいえよう。

独裁者ゲーム

「責任ある積極財政」が辿る道は?

「独裁者ゲーム」を現在の政治情勢に当てはめた場合、今後も野党や連立パートナーに気を配り続けると解釈すべきだろうか。そうとはいえない。圧倒的なパワーを手に入れただけに、短期的な成果を追求するのではなく、より慎重に「善政を敷く」ことにベクトルを向けるようになると考えるのが、現在の政治情勢を「独裁者ゲーム」に例えた場合の自然な解釈ではないか。つまり、非常に強い力があるがゆえに、横暴さをなるべく見せないように配慮するのではないかと筆者は考える。

無論、実際どのように行動するかは首相のパーソナリティーにも依存するので何とも言えない面もある。しかし、筆者は開票センターでの花付けやインタビューの時、高市氏があまり笑顔を見せなかったことが非常に印象に残っている。疲れもあっただろうが「勝って兜の緒を締めよ」という気持ちも少なからずあっただろう。高市氏の真面目な一面が垣間見えたような気がする(全くの見当違いかもしれないが)。

株式市場は高市氏が掲げる「責任ある積極財政」を概ね好感している。しかし、積極財政は財政不安による「悪い金利上昇」と隣り合わせでもある。圧勝を受けて、市場では「早期の消費減税が実現する」という見方と、逆に「金利上昇・円安進行を受けて消費減税が見送られる」という2つの見方があるようだ(鈴木翔マーケットアナリストの速報動画を参照)。

素直に選挙結果を受け止めれば前者である。しかし、今回の勝利によって、長期的な視点で、じっくりと成長戦略を考えられる環境が整ったともいえる。「独裁者ゲーム」の文脈も踏まえて考えると、無暗に日本の通貨や財政に対する信認を壊すような行動を今後は避ける可能性もあるだろう。もしかしたら、歴代の多くの首相と同じように、結局は財務省の意向にも配慮した、規律重視の財政運営に少しずつ舵を切っていくかもしれない。むしろ、その可能性は十分あるだろう。金利急上昇の懸念は選挙を経て小さくなったというのが筆者の見立てだ。

※次回の公開は2週間後の2月24日(火)を予定しています。


著者プロフィール

海老澤界

海老澤界

松井証券ファンドアナリスト。横浜国立大学経済学部卒業後、日刊工業新聞記者を経て格付投資情報センター(R&I)入社。年金・投信関連ニューズレター記者、日本経済新聞記者(出向)、ファンドアナリストを経て、マネー誌「ダイヤモンドZAi」アナリストを務める。長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。投資信託を多面的にウォッチし、豊富な投信アワードの企画・選定経験から客観的にトレンドを解説。


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