YouTube登録者100万人達成で敢えて考える 「アナリスト」とは?
筆者はアナリストを名乗っている。給与をもらって名乗っている以上、アナリストと言う職業が生み出す付加価値について自問自答する日々だ。そういえば、コラムを書き始めてそろそろ3年になるが、「アナリストとは?」というテーマで書いたことがなかった。今回はこのテーマでまとめてみよう。
「analyst」を英英辞典で引いてみると…
カタカナで表記される職業であるため、まずは手元にある『ロングマン現代英英辞典』(ピアソン、第6版)を引いてみた。analystは次のように定義されている。
“someone whose job is to think about something carefully in order to understand it, and often advise other people about it”
(何かについて理解するために深く考え、多くの場合、そのことを他の人々にアドバイスすることを仕事とする人 ※筆者訳)
2つの気づきがある。まずは、「financial」や「investment」といった単語は使われておらず、金融、投資といった分野に限定していないということだ。確かに「フットボールアナリスト」「マンションアナリスト」と言った肩書きで活動している人もいるので、アナリストという職業が適用される分野は案外広いのかもしれない。
もう1つは、「理解するために深く考える」(インプット)と「他の人々にアドバイスする」(アウトプット)がセットになって、アナリストと言う仕事を形作っているという点。これは、より本質的な話になってくる。例えばインプットに力を注ぐのが学者や研究者の仕事であるならば、「他の人々にアドバイス」とあるように、インプットした情報をより有効に使えるように咀嚼し、分かりやすい言葉に翻訳したうえで、人に伝えるところまでがアナリストの仕事ということになる。
「セルサイドアナリスト」と「バイサイドアナリスト」
ここからは証券や投資にかかわるアナリストに限定して話をしたい。筆者が所属する松井証券も証券会社であるが、所属会社を念頭に置いたものではなく、あくまで一般的な話を展開している点はご留意いただきたい。
アナリストは大きく分けて「セルサイド」と「バイサイド」に分かれる。セルサイドアナリストは主に証券会社に所属するアナリストであり、顧客(多くの場合は証券会社に注文を出す機関投資家)向けに情報を提供する。商社、自動車、医薬品といったセクター(業種)ごとに担当が分かれており、業界のスペシャリストとして、多方面から企業を深掘りする。セクターアナリスト以外にも、テクニカル分析を専門とするテクニカルアナリスト、金利やクレジット、為替の分析を専門とするアナリストなどもセルサイドに在籍することが多い。
セルサイトアナリストとバイサイドアナリスト
| セルサイドアナリスト | バイサイドアナリスト | |
|---|---|---|
| 所属 | 主に証券会社 | 主に運用会社 |
| 情報提供先 | 主に機関投資家 | ファンドマネジャーおよび運用チーム |
| 専門性 守備範囲 |
セクター特化のアナリストが中心。テクニカルアナリストや金利・為替などの専門アナリストも | 運用戦略などによって異なり、幅広くカバーすることも |
| キャリアパス | アナリストランキングなどで上位常連になりスターアナリストとしてプレゼンスを高めるケースも | ファンドマネジャーへの登竜門になっているケースが多い |
(出所)筆者作成。※一般的なケースをまとめたもので筆者所属会社を意図したものではない
かつての証券会社のビジネスモデルにおいては、アナリストがレポートを書き、情報を受け取った機関投資家が払う取引手数料でアナリストの分析および在籍のコストを回収していた。ただ、世界的な流れとして、分析そのものの対価の明確化が求められるようになり、セルサイドアナリストが生み出す付加価値はよりシビアに問われるようにもなっている。
例えば、時価総額の小さい中小型株はもともとアナリストによるカバーが少ないが、「対価明確化」によって、採算の合わない中小型株分析の労力を省くことが世界的な潮流となっている。結果的に、中小型株の価格発見機能に甚大な影響を与えているとの指摘も多い(※このあたりは「MiFID 2=ミフィッドツー」以降の流れを調べてみるとよいだろう)。
時価総額の規模別・担当アナリスト数
(出所)QUICKのデータを元に松井証券作成 2026年8月23日取得データ(時価総額は8月21日時点)
セルサイドに対し、バイサイドアナリストは主に運用会社に所属するアナリストだ。運用責任者であるファンドマネジャーや運用チームに情報を還元する立場であり、最終的にファンドマネジャーになるためのキャリアパスであることも多い。セルサイドほど担当が細分化されていることはなく、場合によってはカバーする業種や銘柄数も多くなるため、セルサイドアナリストのレポートを活用しながら、独自の情報を積み上げていく。
なお、運用会社の投資対象は株式に限らない。債券、不動産、コモディティと多岐にわたるため、それぞれの資産において、専門のアナリストが在籍する。
日本のアナリスト資格は「CMA」 メジャーリーグは「CFA」
日本において、アナリストの職能団体には「日本証券アナリスト協会」があり、認定アナリスト(CMA)制度を設けている。もっとも、弁護士のような業務独占資格でもなければ、「アナリスト」と名乗るために必須な資格でもない。資格と言うよりも「共通言語の取得証明」に近い。ただ、アナリスト資格取得の過程において、財務分析や投資理論、マクロ経済からゲーム理論まで、かなり幅広い分野を学ぶ機会にもなるため、金融業界以外でも取得を目指す人は多いようだ。
国際的なアナリスト資格としては米国証券アナリスト(CFA)と国際公認投資アナリスト(CIIA)がある。CFAは米国のCFA協会が主導する資格であり、CIIAは欧州や日本など、米国以外の各国の証券アナリスト協会が認定する資格だ。
WBCのようにメジャーリーガーが参加する野球の国際大会がCFAで、WBSC野球プレミア12やオリンピックの野球競技のようにメジャーリーガーが参加しない野球の国際大会がCIIAだとイメージすれば分かりやすい(この比喩、筆者にはストンと腹落ちするのだが、余計分かりにくかったら申し訳ない)。両者の知名度を比べれば、金融の本場、米国の資格であるCFAの方が圧倒的に高い。CFA試験は英語で実施されるため、ホルダーであることは英語力の証明にもなる。
余談だが資格によって「テクニカル分析」の捉え方が異なっているのも興味深い。日本のCMAは、現代ポートフォリオ理論やキャッシュフロー割引モデルなどに主眼を置いた、ほぼ「ファンダメンタル分析」のための資格で、「テクニカル分析」はほとんど登場しない(※日本においては日本テクニカルアナリスト協会という別団体がテクニカルアナリスト資格を認定している)。
学術的な研究に直結するファンダメンタル分析に対し、過去の値動きから未来を予測するテクニカル分析は非科学的であると敬遠する向きがあるためだろう。実際、筆者の周りにもテクニカル分析を否定する人は一定数いる。一方、米国のCFAの試験範囲にはテクニカル分析が含まれる。市場センチメントや需給を知るためには排除できないツールであるとの考えが背景にあるのかもしれない。「金融は結果を残してナンボ」という米国の合理的な考え方が背景にあるようにも思えるが、いかがだろうか。
公式YouTubeで金字塔達成!
ここからは筆者が所属する松井証券の話になる。このほど、松井証券の公式YouTubeチャンネルのチャンネル登録者数が100万人を突破した。コンテンツ制作に関わるプロデューサー達の創意工夫と才能、そして努力が実を結んだ結果である。同じ会社ながら、心から敬意を表したい。
証券会社所属のアナリストと言う点では筆者もセルサイドアナリストになるのかもしれないが、機関投資家の顧客を抱えないネット証券所属と言う点では毛色が異なる。そんな筆者の仕事は、個人とプロの間に存在する情報の非対称性をなるべく埋めること、そして、個人投資家の伴走者として、常に役に立つ情報を提供することだと考えている。おそらく動画コンテンツも目指すべきゴールは同じだろう。
英英辞典の定義に戻ると、「理解するために深く考える」対象が、アナリストの場合はマーケットや金融商品であり、動画コンテンツ制作者の場合は、個人投資家の興味や関心ということなのかもしれない。
【補足】
セルサイドとバイサイドという形でアナリストを大きく分けて解説したが、このほかにも信用格付け会社に所属するアナリストも資本市場に必要不可欠なインフラとして重要な役割を担っている。また、調査・研究所に所属するアナリストや、独立して活動しているアナリストもいる。ファンドを分析するファンドアナリストは主にファンド評価会社に在籍するが、販売会社に在籍し、ファンドの採用、モニタリング、顧客への情報提供を担っていたり、運用会社に在籍して、自社ファンドの運用状況や業界動向を分析したりするアナリストもいる。