GDP(国内総生産)とは?計算方法やGNPとの違い、投資との関係性をわかりやすく解説
投資をする上で、経済ニュースを日々チェックする習慣を身につけることはとても大切です。しかし、専門用語が多く、初心者には内容が難しく感じられることもあるでしょう。
GDPもそんな経済の専門用語の一つで、よく耳にするものの、実際にはどんな意味を持つのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、GDPの基本的な意味や計算方法、よく混同されるGNPとの違いについてわかりやすく解説します。
GDP(国内総生産)の基礎知識
経済を語る上で欠かせない指標の一つがGDP(国内総生産)です。まずは、GDPの基本的な意味や考え方を理解しておきましょう。
GDP(国内総生産)とは?
GDPとは「Gross Domestic Product」の略で、直訳すると「国内総生産」となります。これは、一定期間内に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の総額を指します。付加価値とは、商品やサービスから原材料やコストを差し引いた、生産過程で新たに加えられた価値のことです。
わかりやすく言うと、GDPは国内で生み出された商品やサービスの「儲け」を合計したものです。例えば、企業が製品を生産し販売して得た利益、レストランのサービスで得た収益、政府が提供する公共サービスの価値などが含まれます。GDPは国の経済活動の規模や健康状態を把握するために重要であり、経済政策の基盤となる指標です。
GDPの考え方
パンの販売を例にGDPについて考えてみましょう。
農家が小麦を栽培する
まず農家が小麦を栽培します。肥料や種子などの資材に100円を費やし、その小麦を製粉所に200円で販売するとします。
この時、農家の得られる付加価値は200円-100円=100円となります。
製粉所が小麦粉を作りパン屋に売る
次に、製粉所が、農家から100円で仕入れた小麦を加工して小麦粉を作り、パン屋に300円で販売します。
この時、製粉所の付加価値は300円-100円=200円です。
パン屋がパンを焼いて消費者に売る
最後に、パン屋が、製粉所から300円で仕入れた小麦粉を使ってパンを焼き、消費者に400円で販売します。
この時、パン屋の付加価値は400円-300円=100円となります。
付加価値の合計
以上から、農家の100円+製粉所の200円+パン屋の100円=合計400円が付加価値の合計となり、これがGDPとして計上されます。
GDPの計算方法
GDPを算出するためには、以下の計算式を使用します。
民需(日本人の消費金額+国内企業の投資額の合計)
+政府支出(国や地方自治体が公共サービスやインフラ整備などに使った金額)
+貿易収支(輸出額-輸入額)
=日本のGDP
GDPは国の経済規模や活力を数値化した指標であり、国際比較の際にも使用されます。
三面等価の原則について
GDPを理解する上で重要な考え方の一つに「三面等価の原則」があります。この原則は、「生産」「支出」「分配」のいずれの面から算出しても、GDPの値は等しくなるというものです。
どの面から算出してもGDPの値が一致するのは、経済活動が「生産 → 分配 → 支出」のサイクルで成り立っているからです。
国内で生産された商品やサービスの付加価値の合計から算出するGDP(国内総生産)に対して、労働者の賃金や企業の利益など、生産で得られた価値がどのように分配されたかを基に算出する数値は「国内総所得(GDI: Gross Domestic Income)」と呼ばれます。また、民間で消費された金額や投資額、政府支出、貿易収支を合計して算出する数値は「国内総支出(GDE: Gross Domestic Expenditure)」と呼ばれます。
2024年のGDPランキング
2024年の世界GDPランキングを見ると、各国の経済規模の把握が可能です。
順位 | 国名 | 2024年名目GDP |
---|---|---|
1位 | アメリカ | 29兆1,677億7,900万ドル |
2位 | 中国 | 18兆2,733億5,700万ドル |
3位 | ドイツ | 4兆7,100億3,200万ドル |
4位 | 日本 | 4兆700億9,400万ドル |
5位 | インド | 3兆8,891億3,000万ドル |
(出典:International Monetary Fund(国際通貨基金)2024年10月世界経済見通し)
2023年まで世界第3位の経済規模を誇っていた日本は、2024年にはドイツに抜かれ、4位へとランクを落としました。この順位変動には、円安による影響と生産性の低迷が関係していると考えられます。
名目GDPランキングはドル換算で計算されるため、為替レートの変動が直接的に影響を及ぼします。特に円安が進行すると、日本のGDPはドル建てで低く見積もられる結果となり、順位を押し下げる要因となります。
また、日本経済は少子高齢化や生産性の伸び悩みといった構造的な問題を抱えており、他国に比べて経済成長が低調である点も、順位変動の一因となっていると考えられるでしょう。
GDPの種類とGNP(国民総生産)、GNI(国民総所得)との違い
GDPは経済規模を測る重要な指標ですが、その計算方法や関連する指標にはいくつかの種類があります。
GDPの種類
GDPは、名目GDPと実質GDPの大きく2種類に分けられます。
名目GDP
名目GDPは、対象となる期間に生み出された付加価値をその時点の市場価格で計算した値です。この値には物価の変動が反映されるため、インフレやデフレの影響を受けます。例えば、物価が上昇した場合、実際の生産量が変わらなくても名目GDPは増加することがあります。他国と経済規模を比較する際は、名目GDPが用いられるケースが一般的です。
実質GDP
実質GDPは、ある年(基準年)の価格水準を基準として、物価変動の影響を除外した値です。経済活動の実態や経済成長の度合いをより正確に評価できる指標として、長期的な経済動向の分析や政策立案に用いられることが多くなっています。
GDPデフレーターとは
GDPデフレーターは、名目GDPと実質GDPの比率を示す指標で、国内の物価動向を測るために使用されます。
GDPデフレーターは次の式で求められます。
GDPデフレーター = (名目GDP ÷ 実質GDP) × 100
GDPデフレーターの値が上昇している場合は、インフレの傾向が強く、逆に値が下がっている場合はデフレ傾向にあることを示します。
GDP(国内総生産)とGNP(国民総生産)、GNI(国民総所得)の違いは?
GDP(国内総生産)は、国内で生産された商品やサービスの付加価値の合計を示す指標であり、その範囲は日本国内に限定されます。
一方、GNP(国民総生産)は国内に限らず、国民が生み出した付加価値を対象とするため、海外で展開する日系企業の収益や、国外で働く日本人が得た利益も含まれるのが特徴です。現在では、GNI(国民総所得)と呼ばれることが一般的になっています。
国境を越えた経済活動が増える現代では、GNIの活用で一国の国民が享受している実際の所得の姿をより正確に把握できるといえます。
GDPと投資の関係性
GDPについての理解を深めることで、短期的な市場動向や長期的な景気の流れを把握しやすくなり、より適切な投資判断が可能になるでしょう。
GDPと株価の関係性について
名目GDPは、短期的な経済規模を示し、現在の市場の動きを把握する手がかりとなります。一方で、実質GDPは物価変動の影響を除いた数値であり、長期的な景気の状況を示すものです。
例えば、前期と比べて経済が好調な場合、実質GDPや経済成長率が高くなり、株価の上昇に繋がる可能性があります。
しかし、GDPと株価は必ずしも常に相関関係にあるわけではありません。例えば、GDPがマイナス成長となった場合でも、将来的な経済回復が期待される局面では株価の上昇があります。これは、投資家には市場の先行きを見越して行動する傾向があるからです。
また、直近ではGDPの伸び率に比べ、株価指標の伸びが大幅に増加しているケースも見られます。これは、株価指標に海外収益を含む上場企業の実績が反映される一方で、GDPには海外の収益は含まれないことが関係していると考えられるでしょう。
テクニカル分析と組み合わせて判断する
GDPは経済全体の動きを示す重要な指標ですが、それだけで相場の予測を行うのは難しい場合があります。そのため、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両方を活用することで、より精度の高い投資判断が可能になります。
GDPや経済成長率、失業率などの経済指標や金融施策などを根拠に市場動向を分析する方法が、ファンダメンタルズ分析です。
一方、テクニカル分析は、株価や為替などの過去の値動きを示す「チャート」をもとに、将来の価格を予測する手法です。「移動平均線」や「RSI(相対力指数)」などの指標を利用して売買のタイミングを探ります。
長期的な市場動向を把握する際に役立つファンダメンタルズ分析と、短期的な売買タイミングを見極めるのに役立つテクニカル分析を組み合わせることで、投資判断の精度を上げることができます。
例えば、GDPが上昇しており、市場全体が好調とわかった場合、次にテクニカル分析を使って株価が上昇傾向(上昇トレンド)にあるかを確認します。もし上昇トレンドが見られれば、買い時と判断でき、利益を狙えるかもしれません。
GDPとは経済の全体像を掴むための出発点となる指標
GDPは国の経済状況を理解する上で欠かせない指標であり、投資の判断材料として重要な役割を果たします。名目GDPや実質GDPの違いやGDPデフレーターやGNIなどの関連指標も活用することで、より多角的に相場を分析できるようになるでしょう。
また、GDPなどのマクロ経済指標を使ったファンダメンタルズ分析だけではなく、チャートを基にしたテクニカル分析を組み合わせることで、さらに相場予測の精度を高められるかもしれません。
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