窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~

2026年06月05日

窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~


今週の東京株式市場:日経平均初の6万8000円台へ、巨額の売買代金で乱高下

今週の東京株式市場は、日経平均株価が史上最高値を更新する中、値動きの激しい展開となりました。売買代金は連日10兆円から12兆円規模に達する大商いが続いています。
週初1日はAI・半導体関連の値がさ株が主導し、連日の最高値を更新しました。2日はスピード警戒感から一時1300円超の下落を見せたものの、後場に急速に下げ渋るなど荒い値動きとなりました。3日には米半導体株高や円安を追い風に1600円超の急反騰を演じ、終値で初の6万8000円台に乗せています。しかし4日は、米ハイテク大手の決算を受けた時間外取引での下落や利益確定売りに押され、大幅反落して引けました。
個別では、連日大商いのキオクシアやソフトバンクグループ、東京エレクトロンなどが市場の関心を集めました。全体としては指数の上昇に反して値下がり銘柄数が全体の約7割を占める日も多く、AI関連とそれ以外で明暗が分かれる選別物色が続きました。今後も米国のハイテク景況感や国内の追加利上げ観測を注視する局面が続くでしょう。


今週の個別銘柄解説:主役交代が進む日本市場

ソフトバンクグループ(9984)

1日にトヨタを抜き、時価総額で国内首位に立ちました。仏AIデータセンターへの14兆円規模の投資発表が刺激となり、時価総額は一時49兆円を突破。背景にはオープンAIの上場期待や、AI推論に強いアームの成長があります。日本経済の象徴が製造業からAIへとシフトした歴史的転換点であり、AI革命の加速を背景とした強気な投資姿勢が、市場から高く評価されています。ソフトバンクグループは、この他にもフィジカルAIに強いスイスのABBに投資するなどAI投資に先行する一方で、その評価は市況によって大きく変動します。この先も荒い値動きが続きそうです。

三菱重工業(7011)

投資家の関心がAIや半導体にシフトする中で防衛関連への物色意欲が後退し、2日に年初来安値を更新しました。信用倍率が約30倍と高水準な中、個人投資家の投げ売りが下げを加速させています。食料品の消費減税を行うと防衛予算に割く余裕がなくなると見られているほか、防衛相の慎重な発言を受け、防衛費増額の具体策や時期が見通せないことが重荷となっており、中長期的な業績拡大期待はあるものの、短期的には買いのきっかけが乏しい状況となっています。

キオクシアホールディングス(285A)

時価総額が3日に一時45兆円を超え、トヨタを抜き国内2位に浮上しました。AIのエージェント機能にはNANDメモリーが必要なことから需要が急拡大し価格が高騰しているため、今期利益は記録的な拡大見通しです。初の累進配当導入や2.1兆円の成長投資に加え、ハイパースケーラーとの超長期契約による収益安定化も高く評価されました。次世代SSDでエヌビディアのHBMを補完するなど、AI革命を支える基幹企業として市場の信頼を不動のものにしています。

商船三井(9104)

米国の洋上LNG生産プラント(FLNG)に約480億円を出資し、海運大手として初めて生産事業に参画します。中東リスクに伴う調達網分散が急務となる中、従来の輸送から生産・貯蔵といった上流工程へ関与し、収益源を多角化する狙いです。2030年度のエネルギー事業純利益目標920億円の達成に向け、脱炭素への「つなぎ」として需要が続くLNGを成長の柱に据える、攻めの戦略転換が評価されます。

パナソニックホールディングス(6752)

これまでEV向けの電池需要が減少すると見られていましたが、AIデータセンターでは電力消費量の変動が激しいほか、電力インフラ整備に多額の資金が必要となることから、AIデータセンターに蓄電池を搭載する流れが強まっており、3日に上場来高値を更新しました。ポートフォリオ変革による各事業の価値最大化も材料視されています。一方で、車載電池事業の不確実性やメモリコスト上昇懸念といったリスク要因が残るため、PERは20倍台とAI関連の中ではまだまだ割安な水準です。市場では強弱感が対立する中、上昇が続いています。

上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を6/5(金)21:00に
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。
下記リンクから是非ご覧ください。


来週の注目トピック

米・消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)

6月10日に5月のCPI、11日にPPIが発表されます。翌週のFOMCでの政策決定を占う最終的な判断材料となります。4月分のCPIは前年比3.8%と依然として目標の2%を大きく上回っており、PPIも6.0%と市場予想を大幅に上振れました。インフレの鈍化が確認できなければ、FRBによる利下げではなく、場合によっては追加利上げの議論が始まる可能性もあり、米国の長短金利の上昇を通じて株価の重荷となる可能性があります。

スペースXの新規株式公開(IPO)

6月12日にナスダックへ上場予定です。市場では1.77兆ドルという史上最大規模の時価総額が見込まれています。同社は商業宇宙セクターと見られていますが、実態はAIが投資の中心となっており関連銘柄に対する関心を高める起爆剤になると期待されています。日本の宇宙関連銘柄は早々に失速する一方、AI関連株にはプラスの影響を与える可能性があります。また、もし上場後にS&P 500指数などに採用されれば、パッシブ・ファンド(指数連動型投資信託など)の買い需要が発生すると予測されており、これが市場に大きな価格歪みとボラティリティ(変動)をもたらすリスクが指摘されています。


著者プロフィール

窪田朋一郎

窪田朋一郎

松井証券チーフマーケットアナリスト。
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「マーケットラボ アクティビスト追跡画面」など、これまでにない独自の投資指標を開発。


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