スタグフレーションとは?インフレやデフレとの違い、市場に与える影響

(更新)2026年05月29日

スタグフレーションとは?インフレやデフレとの違い、市場に与える影響

スタグフレーションとは、景気が停滞しているにもかかわらず物価が上昇する状態を指します。市場の動きや資産価値に大きく影響するため、投資をする上で知っておきたい重要な経済用語の一つです。

本記事では、スタグフレーションの意味や原因、インフレ・デフレとの違いや日本の現状について初心者にもわかりやすく解説します。


スタグフレーションとは?

「スタグフレーション」は、景気の停滞を意味する「スタグネーション (Stagnation)」と、物価の上昇を意味する「インフレーション (Inflation)」を組み合わせた造語です。

通常、景気が後退(リセッション)すると、需要の減少により物価も下がる傾向がありますが、スタグフレーションは、景気の停滞と物価の上昇が同時に発生するという、通常の経済理論では説明しづらい特殊な経済状況を指します。

スタグフレーションは、不況とインフレという二重の苦しみをもたらすため、その国の経済状況に深刻な影響を与えることも懸念されます。



「インフレ」や「デフレ」との違いは?

インフレ(インフレーション)とは、物価が継続的に上昇する現象を指し、景気が拡大しているときに発生することが多いものです。一方、デフレ(デフレーション)は、物価が継続的に下落する現象を指し、景気の停滞や後退時に発生することが多いものです。

スタグフレーションは、これらの特徴が混在する異常な状態であり、インフレのように物価が上昇する一方で、デフレに近い景気停滞も同時に起こる点が特徴的です。このため、従来の経済政策では効果的な対処が難しいことも少なくありません。スタグフレーションとインフレ・デフレの各方面への影響は、次の表のように纏めることができます。


スタグフレーション インフレ デフレ
景気 弱い、または停滞 強いことが多い 弱いことが多い
物価 上がる 上がる 下がる
家計への影響 収入が伸びにくいのに支出増 賃金上昇が伴えば吸収しやすい 物価は下がるが収入も伸びにくい
企業への影響 コスト増と需要の弱さが同時に重い 値上げしやすく売上も伸びやすい 値下げ圧力で利益が出にくい
雇用環境 悪化リスクがある 比較的安定しやすい 悪化しやすい

インフレについてのより詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。


なぜ起こる?スタグフレーションの主な2つの原因

スタグフレーションは、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。典型的な原因として、供給コストの急騰と、金融政策の失敗が挙げられます。

供給コストの急騰

スタグフレーションの代表的な原因として挙げられるのが供給コストの急騰です。具体的には、原油・エネルギー・食料・物流費などの急騰により、製品の生産コストの負担が増加する企業にとっては利益が圧迫されることに繋がります。販売価格への転嫁に繋がると、消費の冷え込みにより、さらに企業収益の悪化に繋がることが懸念されます。

供給コストの急騰は家計・企業ともに負担の増加から始まるため、景気が低迷したまま物価だけが上昇する構造が生まれやすくなります。特に電気・ガス・燃料といったエネルギーコストや、小麦・大豆・食肉といった食料コストの上昇は、幅広い業種に連鎖しやすい面があります。

金融政策の失敗

スタグフレーションのもう一つの原因として挙げられるのが、中央銀行による金融政策の失敗です。例えば、景気が低迷しているときに中央銀行が金利を引き下げる金融緩和を行うと、自国通貨安を引き起こし、結果として物価上昇を招くことにつながるケースがあります。

一方、インフレを抑制しようと中央銀行が政策金利を急速に引き上げる金融引き締めを行うと、企業の借入コストが上がり、投資や雇用が冷え込む要因となる可能性があるのです。


スタグフレーションが発生した世界的な事例

スタグフレーションは、過去に何度も発生し、そのたびに世界経済に深刻な影響を与えてきました。ここでは代表的な事例を2つ紹介します。

1970年代のオイルショック

1970年代に発生した2度のオイルショックは、典型的な供給ショックによって引き起こされたスタグフレーションです。

1973年の第四次中東戦争をきっかけとした第1次オイルショックでは、OPECが石油の価格引き上げと供給制限を実施し、原油価格が短期間で約4倍に急騰しました。また1979年の第2次オイルショックでは、イラン革命による中東の政治情勢が不安定化し、原油供給が減少したことが引き金となり、原油価格が上昇しました。

いずれの局面でも、原油というエネルギーコストの急騰が企業の生産コストを押し上げ、物価上昇と景気低迷が同時進行するスタグフレーションが日本を含む先進国に広がりました。

イギリスのEU離脱

イギリスのEU離脱(ブレグジットBrexit)は、同国の経済に大きな混乱をもたらしました。

EU離脱をきっかけにポンドの価値が下落したことで、海外からの輸入品の価格が上がり、インフレが加速しました。さらに、イギリスはEU離脱により、ヨーロッパ諸国との貿易コストが増加し、EU諸国からの労働者も減少したことで、経済活動が低迷しました。

こうして、物価上昇と景気低迷が同時進行したことから、スタグフレーションに近い状態が生じたともいわれています。


スタグフレーションが私たちへ与える影響とは?

スタグフレーションが発生すると、給与の実質的な価値や預金の購買力、雇用の安定まで広く揺さぶられます。生活費のやりくりが難しくなるだけでなく、物価が上がり続ける中で収入が増えなければお金の価値は目減りし、老後の資産づくりや住宅購入といった長期的な資産形成の計画も立てにくくなります。

スタグフレーションの影響を受けやすい産業や業界

スタグフレーションは、多くの産業や業界にコスト増加や需要低迷をもたらします。

例えば、製造業や運輸業などは、石油や天然ガスの価格が高騰すると、製造コストや輸送費が増大します。コスト増加を製品価格に転嫁しきれない場合、収益の減少につながります。

また、小売業や卸売業なども、スタグフレーションの影響を受けやすい業界です。物価の上昇により仕入れ価格が高騰する一方で、景気の停滞により消費者が節約志向になるため、売上が伸び悩むケースが増えます。

実質賃金が目減りし、家計への負担が増加する

顕著な影響の一つとして、家計の負担増加が挙げられます。物価が上昇する一方で、賃金は上がらないため、実質的な生活水準の低下につながりやすくなります。特に、食料品やエネルギーといった必需品の価格高騰は、家計のやりくりに直結するでしょう。

企業の業績が悪化し、雇用環境が不安定になる

企業の業績悪化は、雇用環境にも影響を及ぼします。収益が減少した企業は、新規採用を控えるほか、人員削減に踏み切る場合が少なくありません。その結果、失業率が上昇し、さらに消費が冷え込む悪循環を引き起こします。

株式・債券・為替市場にも影響が波及する

スタグフレーション下では、物価高騰によるコスト増加が企業の収益を圧迫し、業績悪化が懸念されることで、株価の下落リスクが高まる企業がでてきます。また、インフレを抑えるために金利が引き上げられると、債券価格の下落につながることもあるでしょう。

さらにスタグフレーションは、為替市場にも不安定要素をもたらします。経済の不確実性が高まる中で、投資家は安定した通貨を求めて資金を移動させることで、為替レートの急激な変動が起こる可能性があります。


今後の日本経済の見通しは?

日本経済はスタグフレーションに近づいているか?

2022年以降、円安や輸入コストの増加を背景に、エネルギー・食料品を中心とした物価上昇が続いており、消費者物価指数(CPI)は高止まりの状態が続いています。

一方で、賃金の上昇は物価の上昇幅には追いつかず、実質賃金(物価上昇を差し引いた賃金の実力) は長らくマイナス圏での推移が続いていましたが、2026年に入り物価上昇率の鈍化を背景にプラスへ転じており、改善の兆しが見えてきています。

ただし個人消費の回復には至らず、GDP成長率は低水準での横ばいが続いています。

消費者物価指数(CPI)やGDPの詳細については、以下の関連記事をあわせてご参照ください。


アナリストから見た現状

この状況がスタグフレーションにあたるのか、近づいているのか、という点について、松井証券チーフマーケットアナリストの窪田朋一郎は2026年5月時点で次のように見通しています。

2026年以降、給与の伸びが物価上昇を上回り実質賃金がプラスに転じたことで、スタグフレーションへの懸念はいったん和らいでいました。しかし、2026年3月に発生したイラン戦争の影響による原油価格の急騰により、この先のインフレ率が急激に高まる可能性が高く、スタグフレーションに陥るリスクも再び高まっている状況です。


世界経済の動向と日本への影響

日本を取り巻く世界経済にも目を向けると、世界銀行の予測では2025年の世界経済の実質GDP成長率は2.7%と推計されており、2026年には2.6%へと鈍化する予測となっています。貿易障壁の拡大や政策の不確実性がその主な要因として挙げられています。世界経済および地域別の予測については世界銀行のWEBサイトで確認いただくことができます。

日本への影響を考える上では、米国の関税強化による輸出環境の悪化と、円安による輸入コストは企業業績や家計を圧迫する要因になりえるものです。


スタグフレーションに関するよくある質問

Q. スタグフレーションのとき、株価はどうなりますか?

一般に株式市場には逆風になりやすく、コスト増と景気低迷の同時進行が企業収益を圧迫します。ただし株価が一律に下がるとは限らず、エネルギーや生活必需品、価格転嫁力の強い業種は相対的に底堅いこともあります。

「株か現金か」の二択より、株式、債券、REIT(不動産)、コモディティなど、複数の資産クラスに投資先を分散することが、不安定な相場でのリスク管理につながります。

Q. スタグフレーションが終わるきっかけは何ですか?

資源価格の上昇・高止まりの落ち着きや、金融引き締めによる物価沈静化などが重なることで出口が見えやすくなります。ただし、物価抑制を優先すれば景気がさらに弱り、景気を支えれば物価が高止まりするジレンマがあります。

Q. スタグフレーションになると円安・円高どちらに進みやすいですか?

為替は景気・金利差・貿易収支・市場心理が同時に動くため、スタグフレーションだけで方向は決まりません。資源高で輸入額が膨らむ局面では円安圧力がかかりやすい一方、世界的に景気不安が高まると、安全資産とされる円が買われ、円高に振れるケースもあります。


投資家が個人でできるスタグフレーションへの対策

スタグフレーションが発生すると、投資環境は不安定になりやすいといえます。加えて、物価上昇率が預金金利を上回る局面では、預貯金の実質的な価値も目減りします。
こうした状況でも資産を守り、運用するためには、リスク管理が重要です。

スタグフレーションに強い資産に投資する

スタグフレーション下では、物価上昇に強いとされる資産への注目が高まります。代表的なものとして、不動産(REIT)や金・コモディティが挙げられます。

REITで不動産分野へ投資する

土地は有限の実物資産であるため物価上昇と価値が連動しやすく、家賃相場も物価に追随しやすい構造から、不動産はインフレに強い資産として知られています。ただし実物の不動産の購入には多額の資金や管理コストが伴うため、誰もが手軽に取り組める対策とは言えません。

REITを活用すれば、こうしたハードルを下げながら不動産分野への投資が可能です。REITとは、投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、賃料収入や売買益を投資家に還元する金融商品です。証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できることがメリットです。

ETF・投資信託で金・コモディティへ投資する

金・銀などの貴金属や穀物といったコモディティは、世界的に価値が認められた実物資産として、景気後退や通貨の信用低下局面でも価値を保ちやすいとされています。ただし現物の資産を購入・保管するには手間やコストがかかるため、こちらも気軽に取り組める対策とは言えません。

投資信託やETFを活用すれば、こうしたハードルを下げながらコモディティ分野への投資が可能です。投資信託は運用のプロが資産を管理・分散投資してくれる商品で、少額から始められます。ETFは投資信託の一種でありながら取引所に上場しており、株式と同じように市場でリアルタイムに売買できる点が特徴です。



国内外への地域分散も組み合わせる

資産の種類だけでなく、投資先の地域も分散することが重要です。国内資産だけに偏ると、日本経済の停滞がそのままポートフォリオ全体に影響します。

資産クラスとしては、例えば株式であれば国内株式と海外株式、さらに海外株式の中でも先進国株式と新興国株式に分けることができます。国内資産だけでなく、海外資産にも投資することで、特定地域の経済が停滞するリスクを分散することができるでしょう。

長期・積立・分散で備える

スタグフレーションのような不安定な経済環境では、一つの資産に集中して投資するリスクが高まります。値動きの異なる複数の資産に分散しながら、長期・積立で投資を続けることで、特定の資産が下落した際のダメージを抑えやすくなります。

特にスタグフレーションのような複雑な経済状況では、短期的な市場の動きを正確に予測するのは困難です。時間をかけて運用することで、一時的な相場の上下による影響を薄め、安定した資産成長を目指しやすくなります。

また、定期的に一定額を投資する「積立投資」を活用すれば、価格が高いときは少なく・安いときは多く購入することになり、購入価格を平準化する効果も期待できます。さらに、株式の配当金や債券の利息、不動産の家賃収入といった継続的な収入を得られる投資は、長期投資と特に相性の良い方法の一つです。


タマゴはひとつのカゴに盛るな

古くから伝えられてきた「タマゴはひとつのカゴに盛るな」という相場の格言。ひとつに盛ると、カゴを落としてしまった場合にタマゴが全部割れてしまいかねませんが、いくつかのカゴに分けてタマゴを盛っていれば、カゴを1つ落としてもすべてのタマゴを割ってしまうことは避けられます。集中投資を避け、リスクを分散させることの大切さを説く格言です。


スタグフレーションに備えて分散投資をするなら松井証券がおすすめ

スタグフレーションは、物価が上がる一方で経済が停滞する状況のことで、投資判断が難しい局面といえます。しかし、分散投資や長期投資を実践することで、リスクを軽減しながら安定した資産運用を目指すことが可能です。

とくに分散投資の効果を最大限に引き出すためには、さまざまな銘柄に投資できる環境が必要になります。松井証券では、1,800種類以上の投資信託を取り扱っており、購入時手数料はすべて無料です。毎月100円から積立投資も始められるので、初心者でも気軽に投資を始められます。

また、松井証券で投資信託を保有し、毎月エントリーをするだけで年間最大1%のポイントが貯まる投信残高ポイントサービスを提供しています。

これから投資を始める方は、松井証券での口座開設を検討してみてはいかがでしょうか。


著者プロフィール

松井証券WEBサイト編集チーム

松井証券WEBサイト編集チーム

「投資をまじめに、おもしろく」を目指して、株式投資(日本株・米国株)、投資信託、FX、NISA、先物・オプション取引などの用語解説や取引の魅力などについて発信し、皆さんの資産形成をサポートします。


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