ベネズエラ情勢緊迫! 2026年、あなたは「金」とどう向き合う?
年始早々、大きなニュースが飛び込んできた。米国によるベネズエラ攻撃と同国大統領夫妻の拘束だ。国際情勢の緊迫感が増す中で、安全資産とされる金(ゴールド)に対する注目度がより強まっている。ニューヨーク金先物価格は1トロイオンス当たり4600ドルを超え最高値圏で推移している。
2025年のニューヨーク金先物価格は60%超上昇!
ここ数年、値上がりが目立っていた金。特に2025年1年間のニューヨーク金先物価格の上昇率は60%を超え、好調だった株式などと比べても群を抜いて高いパフォーマンスを残した。「ここまで上がればどこかで調整が…」と考えていたところ、ここにきて、「有事の金」の性格が際立ち始めたように思える。
金価格に与える影響を簡単に4つにまとめてみた。
① 無国籍通貨の顔があり、基軸通貨である米ドルの代替の役割も担う
② 「有事の金」として地政学リスクが高まる局面や金融危機の時に選ばれる
③ 実物資産でありインフレに強い
④ キャッシュフローを生まない資産であり、金利低下局面で相対的な魅力度が増す
金価格上昇の要因は米国という存在を軸に考えると、理解しやすい。例えば、上記の中で、長期的なトレンドに大きな影響を与えているのは①および②だろう。無国籍通貨である金は米国および米ドルの信認と表裏一体の関係にある。連邦準備理事会(FRB)の独立性を蔑ろにするようなトランプ大統領の姿勢は米ドルの信認低下に直結する。
そして、「有事の金」である。国際社会の分断や対立の根っこにあるのは、詰まるところ、世界の警察としての役割を米国が果たせなくなっていることと無縁ではないだろう。多少、大げさな話をすれば、唯一の覇権国である米国、覇権通貨である米ドルの強さに陰りが見えてきていることの表れとも受け止められる。中国、インド、トルコそしてブラジルといった新興国の中央銀行が外貨準備として米ドルではなく金を保有する動きを強めている、そのような時代の大きなうねりが絡み合った結果でもある。
「地政学リスク指数」は上昇傾向
地政学的な緊張の高まりを示す指標が「地政学リスク指数(GPR指数)」だ。主要な新聞において、戦争やテロなどに関わる記事の割合を指数化したもので、米連邦準備理事会(FRB)エコノミストが作成に関わっている。下のグラフは2020年以降のGPR指数とその30日移動平均線の推移だ。
同指数は新聞記事をベースに算出したものであるため、日次でみると「一時的な騒ぎ」といったノイズが入り込む。移動平均を長くとってみると、浮き彫りになる傾向があるかもしれない。そこで、GPR指数の365日(1年)移動平均線を2000年以降でみてみた。
上のグラフをみると、2001年9月の同時多発テロで、いったん急上昇した後、2000年代後半から2010年代後半にかけて低位で安定していたのが、2022年のウクライナ侵攻以降、明らかに上昇傾向であり、地政学リスクのベースラインが切りあがっているようにもみえる。近年の金の長期上昇トレンドの一因が説明できるだろう。
しかし、そもそも、なぜ地政学リスクが高まる局面で金は選ばれるのか。金は原油や他の貴金属と同じコモディティ資産の一種だが、実用性はそこまで高くない。何が金の価値の源泉にあるかと言えば、その希少性と普遍性だ。有史以来、人類が発掘した金の量はオリンピックプール4杯分程度に過ぎない。刷れば増える通貨とは異なる所以だ。加えて、基本的に自然界に存在するものでは溶かすことができず、永遠に輝きを放ち続ける。
通貨や株式、債券に対する価値はあくまで、多くの人が認めているから、成立する。その根底には人間同士の信頼や約束が存在している。もしも、1万円札に1万円の価値がないと国が宣言してしまえば、ただの紙切れになるし、企業の経営者が利益を追い求めず、株主に配当などで還元することすら考えなくなってしまえば、その企業の株式の価値はなくなる。そもそも、投資家の権利を保護する法制度が独裁者の横暴で覆されてしまったら元も子もない。
戦争や社会的な混乱はしばしば、信頼や約束によって人間が築き上げてきたシステムが壊す。そんな時、人間は自らの能力を超越した存在である金を求めるのだろう。以上は筆者の解釈も混じっているが、地政学リスクと金価格の関係の説明として、概ね誤りはないと思う。
2025年に金投信の規模は3倍強に
ベネズエラの問題は主権の侵害という近代国家のあり方に関わる、極めて根深い問題であるため、国際社会に大きな禍根を残すだろう。同時に、投資対象としての金の存在感も一層強める可能性がある。日本の公募投信においても、金関連の投信の残高は2025年以降、急速に拡大している。国内でも多くの人が「値上がりが期待できる資産」として金に注目し始めている証左だ。
一方で、「そもそも投資とは何か」を考えた場合、金を資産運用の「主役」にまで据えてしまうことについては、違和感を覚える。信頼や約束を前提に、人々がより多くの付加価値を求めていくことで経済は成長する。その果実を得るのが投資の本来の目的だろう。そして、リターンはリスクをとった対価として得られるものだ。金は信用リスクとは無縁である半面、配当や利息といったキャッシュフローを生まない。つまり成長とも無縁である。そう考えると、投資の主役はやはり、株式や債券になるのではないか。
決して主役ではないが、安心感がある。金はそんな存在だ。様々な映画やドラマに引っ張りだこの小日向文世さんのような「名脇役」として、ポートフォリオの一部に、置いておくのがよいだろう。