窪田朋一郎のウィークリーマーケットトーク ~今週の振り返りと来週のポイント~
今週の東京株式市場:地政学リスクの変化と半導体銘柄の変動
今週の東京株式市場は、引き続き中東情勢の動向に大きく影響を受けました。
週初めの4月6日は、イランへの軍事攻撃懸念と停戦観測が交錯し、日経平均は一時5万4000円台を回復しましたが、後場は伸び悩みました。7日も同様の展開が続き、トランプ大統領の発言を受けて積極的な買いは手控えられました。
しかし、8日には東京市場の寄付き前に発表された米国とイランの即時停戦合意を受けて、日経平均が歴代3位の上昇幅を記録。キオクシアホールディングスや古河電気工業など半導体関連銘柄が大きく買われました。
9日には上昇が一服して反落。イスラエルのレバノン攻撃により中東情勢が再び不透明になったことで、主力株を中心に売りが優勢となりました。
個別銘柄では、キオクシアホールディングス、古河電気工業、アドバンテスト、レーザーテックなどの半導体関連銘柄の動きが注目を集めました。また、防衛関連株や海運株なども情勢の変化に敏感に反応しました。
引き続き地政学リスクの変化に応じて相場が大きく変動する展開となりました。今後も中東情勢や半導体業界の動向、さらには原油価格の変動に注目が集まりそうです。
今週の個別銘柄解説:成長産業と株主還元強化
キオクシアホールディングス(285A):
株価が上場来高値を更新し、大幅な上昇を見せています。上場来初の配当実施検討の報道を受けたものです。AI向けサーバー需要拡大によるNAND型フラッシュメモリーの価格高騰が業績急拡大の見通しを支えており、投資家の期待が高まっています。
今後の注目点は、6月の投資家向け説明会での中長期資本配分方針の発表です。配当実施は会社側の業績拡大への自信の表れと見られ、市場からの評価も高いです。ただし、NANDフラッシュメモリーの需給バランスを崩す大規模投資には慎重な姿勢を示しており、今後の設備投資計画と長期契約の動向にも注視が必要です。
古河電気工業(5801):
8日に一時16%を超える急騰を見せ、上場来高値を大幅に更新しました。AIデータセンター向け光ファイバーなどの部材メーカーとして注目を集め、業績も飛躍的に成長する見通しです。売買代金でもキオクシアホールディングスに次ぐ2位の座を占めることが多く、AIデータセンター関連銘柄の象徴的存在となっています。
同業のフジクラと比較すると、古河電気工業の株価上昇は後発ですが、売上高ではフジクラを上回っており、海外投資家からの見直し買いが入っているようです。また、同社が注力するデータセンター向け次世代冷却システムのシェア拡大への期待も高まっています。
今後も、AIデータセンター需要の拡大に伴い、古河電気工業の業績と株価動向に注目が集まりそうです。
JX金属(5016):
8日急伸し、一時14.11%高の4253円まで上昇しました。東証株価指数(TOPIX)の浮動株比率(FFW)定期見直しによる影響です。JX金属のFFWが0.4125から0.5500に上昇する見込みで、これによりTOPIXにおける構成ウエートが増加すると予想されています。パッシブ運用資金からJX金属に約1000億円の買い需要が発生する可能性があります。機関投資家の動きに先回りする形での買いが集まっているようです。
FFW見直しの適用は4月30日に予定されており、28日終値ベースでパッシブ連動資金のリバランスによる影響が見込まれます。今後も、この制度変更に伴う需給変化が予想されます。
エービーシー・マート(2670):
9日年初来高値を更新し、一時10.44%高の2955円まで上昇しました。2026年2月期の年間配当を5円増額し75円とする発表し、2027年2月期もさらなる増配の方針を示しました。合わせて2026年2月期の連結決算では堅調な業績(売上高2%増、純利益2%増)を発表。インバウンド需要や付加価値の高い製品販売が好調で、2027年2月期の増収増益(売上高6%増、純利益微増)を見込んでいます。
市場では、株主還元の強化策と堅調な業績見通しが好感されており、配当を意識した買いに加えて、業績に対する安心感が広がっています。
ファーストリテイリング (9983):
2026年8月期の業績予想を上方修正し、連結最終利益を4800億円(前期比10.9%増)に引き上げました。6期連続で過去最高益を更新する見込みです。好調な業績を受け、年間配当も540円から640円に増額。第2四半期累計の最終利益は19.6%増、第2四半期単独では29.8%増と堅調な成長を示しています。売上営業利益率も改善し、グローバル展開の成功と収益性向上が鮮明になっています。
上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を4/10(金)21:00に
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。
下記リンクから是非ご覧ください。
来週の注目トピック
米企業決算
米国企業の2026年第1四半期(1〜3月期)の決算発表が本格化します。特に週前半の大手金融機関の発表はマーケット全体のトーンを決める先行指標として見られています。業績の伸びが期待に応えられているかはもちろんのこと、経営陣が景気の先行きにどのような見解を示すかに注目です。中でもプライベートクレジットの問題や中東情勢の影響をどう捉えているか、業界のリーダー的存在であるJPモルガンのダイモンCEOによるコメントは市場全体のセンチメントを左右する可能性もあります。ダイモンCEOはこれまで、プライベートクレジットの損失拡大に警告を発する一方で、システム全体への波及は限定的としています。このトーンに変化が出るのかに注目しています。
国内企業決算
4月下旬から本格化するため、来週は小売・消費関連の銘柄が中心となります。14日にJ.フロント リテイリング (3086)と東宝 (9602)などが発表予定となっております。百貨店やレジャー関連銘柄において、訪日客の支出増加が人件費や物流コストの上昇をどの程度カバーできているかがチェックされます。新年度入りに伴い、増配や自己株買いなど、株主還元策の強化が示されるかにも投資家の関心が集まりそうです。今週決算を発表したファーストリテイリングの柳井会長兼社長は、中東情勢の悪化による原材料高を受けて「うちだけが値上げを避けることはできない」と発言しました。他の企業も足元の原材料高にどう対応するのかに注目が集まります。