日経平均2,000円超の急反発も中東リスクの影―来週はFOMC・日銀・決算の三重奏
今週の東京株式市場:2,000円超の急反発と急落、地政学リスクの交錯
今週の東京株式市場は、前週の急落に対する自律反発と、地政学リスクへの警戒感が入り混じる、極めてボラティリティの高い展開となりました。
週初21日は、米半導体株の下げ止まりを背景に、日経平均株価が2,000円を超える急反発を演じました。特に前週まで急落していたキオクシアの反発は投資家心理の改善を牽引しました。しかし、週半ばにかけては再び上値の重さが意識される値動きとなりました。
22日は円安や原油高に伴うインフレ懸念が重石となり小幅に反落。23日には米アルファベットのAI投資拡大方針を好感して一時900円超上昇したものの、紅海でのタンカー攻撃といった地政学リスクの高まりが嫌気され、引けにかけては伸び悩む動きとなりました。
24日の前場は一転、米ハイテク大手の決算を受けた米国株安の流れを引き継ぎ、日経平均は一時2,000円を超える急落となりました。節目となる6万5,000円を割り込み、主力株を中心に売りが先行しました。
個別では、原油相場の上昇を受けて石油関連株が買われたほか、日銀の早期利上げ観測を背景に三菱UFJなどの銀行株への資金シフトが鮮明となりました。
現在はAI投資拡大への期待と、中東情勢によるインフレリスクと金利上昇という強弱材料が拮抗しています。今後も主要企業の決算発表や日銀の政策動向を注視しつつ、銘柄選別が続く局面と言えるでしょう。
今週の個別銘柄解説:AI・半導体・インフレ対応
キオクシア大幅反発
キオクシアホールディングス(285A)の株価が、前週の3割超に及ぶ急落を経てようやく反発しています。米半導体株高や提携先サンディスクの急伸を受け、22日には一時11%超上昇しました。上場来高値から半値近くまで売り込まれた反動もあり、空売り勢の買い戻し「ショートスクイーズ」が上昇に拍車をかけています。TSMCの受託価格引き上げや、中国の最新AIモデルの登場でもメモリー需要は減速しないとの見方も追い風です。外部要因に加えて短期投資家の需給に揺さぶられつつも、AIインフラを支えるメモリーの不可欠性が市場で再認識されています。31日には決算発表が予定されており、引き続きボラティリティの高い展開が予想されます。
三菱商事、1000億円超投資
三菱商事(8058)の株価が21日に急反発しました。米穀物大手ADMと連携し再生航空燃料(SAF)など「食関連領域」に1000億円超を投じる方針が報じられ、買いが優勢となっています。世界的な脱炭素化の流れでSAFの需要拡大が見込まれる中、既存の穀物供給網を活かした先手のアクションが市場で高く評価されました。さらに、原油高を背景としたエネルギー部門の収益拡大期待も追い風です。先週は石油価格の高騰が収穫減につながるとの見方から小麦価格も高騰しました。食とエネルギーの両輪で成長を描く同社の戦略的な投資姿勢に、今後も注目が集まります。
NEC、米IBMの見通し受け続落
NEC(6701)は23日、一時3%安と続落しました。米IT大手IBMが、システム開発需要の鈍化を背景に売上高見通しを下方修正したことが要因です。大手SIがAIの影響で業績を下方修正したのはほぼ初めてで、AIによる業績への悪影響に対する懸念から国内の富士通(6702)や野村総研(4307)など、他のITサービス銘柄にも波及しています。背景には、企業のIT予算が従来の業務システムからAIサーバーへとシフトしている構造変化があります。主力のシステム開発事業への逆風が意識される中、NECの株価は方向感の乏しい値動きが続いています。投資家の期待をつなぎ止める新たな成長戦略が待たれる局面です。
東京エレクトロン、評価引き上げで反発
東京エレクトロン(8035)が23日、大幅反発しました。米国の主要な半導体株指数(SOX)の上昇に加え、一部証券会社が目標株価を従来の6万円から8万円へ大幅に引き上げたことが買い材料視されています。前工程製造装置(WFE)市場の成長率予想が上方修正され、同社のシェア拡大期待から投資判断「バイ」を継続とされました。7月30日の決算発表を控え、業績見通しの公表前であることから下方修正リスクが低く、安心感が強いことも追い風です。生成AI需要に伴う装置市場の成長を背景に、投資家の期待が改めて高まっています。
PayPay・セブン連合のデータ統合
PayPayとセブン&アイ・ホールディングス(3382)が顧客データを統合し、1億人超の国内最大級ポイント経済圏を構築する方向です。ソフトバンク(9434)とPayPayは計2000億円規模の出資を検討し、三井住友フィナンシャルグループ(8316)も参画する見通しです。セブンイレブンはこのところ1店舗当たりの売上高の伸び率で同業他社を下回っており、AIによる精緻な購買分析での売り上げ拡大や、全国約2万2000のセブン店舗を接点とした決済・送客の拡大が期待されます。楽天やドコモに匹敵する巨大勢力の誕生により、AI・小売・金融が融合した新たな競争局面が注目されます。
上記の銘柄などをサクッと動画で解説している動画を7/24(金)21:00までに
松井証券YouTubeマーケットナビで公開予定です。
下記リンクから是非ご覧ください。
来週の注目材料:日米の中央銀行動向、国内企業決算
日米の中央銀行動向
米FOMC(現地28~29日)では、ウォーシュ議長が将来の指針(フォワードガイダンス)を廃止する姿勢を打ち出しており、据え置き予想が大勢ながらサプライズ利上げへの警戒感があるほか、FRBのバランスシート縮小に対する警戒感も残ります。発言内容による市場変動に注意が必要です。
一方の日銀(30~31日)は、政策金利を1.0%で据え置く見通しです。注目は同時公表の「展望レポート」です。AI需要を背景としたGDP見通しの上方修正や、円安や資源高による原材料高を企業が積極的に価格転嫁する姿勢を受けた物価の上振れリスクへの言及があるかが焦点です。足元で「骨太の方針」を受けた円安も加速しており9月以降の追加利上げ時期を探る展開となりそうです。
国内企業決算
企業決算発表が本格化し、特にアドバンテストやキオクシアホールディングスといった半導体関連の主力銘柄に注目が集まります。AI関連需要が引き続き企業の受注や売上高を押し上げているか、また今後の設備投資計画に強気の見通しが示されるかが最大の焦点です。足元ではAI関連株への利益確定売りなどから株価のボラティリティが急拡大していますが、半導体セクター全体の押し目買いを誘う呼び水となるか注目されます。日米の金利政策発表と重なるため、為替の急変動がハイテク株の株価変動を一段と増幅させる可能性にも警戒が必要です。