iDeCoの給付について理解しよう

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iDeCoの給付について理解しよう

iDeCoの受け取り方法

iDeCoは個々人で老後資金を準備していく制度です。老後を迎えた時には、それまで運用した投資資金の受け取り(給付)を行うことになります。加入時に受け取り方法を決める必要はありませんが、どんな受け取り方法があるのか、知っておくことは大事です。また、これを読まれる方には50代後半など、真剣に老後を考えなければいけない人もいるはずです。そこでiDeCoを受け取る方法、並びにその受け取り方について最後に見ていくことにしましょう。以下では受け取りを「給付」と呼ばせていただきます。

iDeCoの受け取りには、加入者が老後に受け取る「老齢給付金」、運用中に障害者となった場合に受け取ることができる「障害給付金」、亡くなった場合に遺族が受け取る「死亡一時金」があります。順番が逆になりますが、死亡一時金は一時金(一括)での受け取りだけになります。死亡一時金は相続税の対象資産として扱われ、特別控除などの非課税措置はありません。障害給付金は一時金または年金で受け取ることができますが、共に非課税で受け取ることができます。死亡一時金、障害給付金は所定の状態になれば60歳未満で受け取ることができますが、老齢給付金は60歳以上にならないと受け取ることができません。ただし、60歳から受け取りができるのは、加入期間が10年以上あることが条件。10年未満の場合、たとえば5年だと63歳から、3年だと64歳からになります。

給付種類 給付開始時期 受取方法
老齢給付金 60歳以降75歳まで 一時金または年金
障害給付金 障害時 一時金または年金
死亡一時金 死亡時 一時金
  • 上記は「企業型」、「個人型」共通事項
  • 年金での受取は「確定年金」や「保証期間付終身年金」などがある
  • 加入者が死亡または障害の状態になった場合以外は60歳未満の引き出し不可

受け取り時にも税制優遇が受けられる

老齢給付金は、年金または一時金で受け取ることができます。年金で受け取った場合「公的年金等控除」が、一時金で受け取った場合「退職所得控除」を利用することができます。注意したいのがこれらの控除は、iDeCoのために別途用意されているわけではないということです。公的年金を受け取っているケースでは、公的年金とiDeCoの老齢給付金を合算して、公的年金等控除が計算されることになります。一時金で受け取るケースでも、勤務先からの退職金を受け取った年にiDeCoを一時金で受け取った場合、退職金で退職所得控除の枠を使用してしまえば、同控除を利用することができなくなります。控除の利用を考えるならば、受け取り時期をどうするかが鍵になります。老齢給付金は60歳から受け取ることができますが、受け取り開始時期は60歳から75歳の間で自由に決めることができるからです。公的年金は65歳未満でも部分年金を受け取れる人がいますが、部分年金だけで公的年金等控除の最低限の枠を使いきってしまう人もいるはずです。また、男性は1961年4月2日、女性の場合は1966年4月2日以降生まれの人は65歳以降でないと公的年金を受け取ることができません。このため60歳から受け取りを始めれば、60歳から公的年金の受け取り開始までの間、iDeCoからの受け取りは公的年金等控除の枠をしっかり利用することができるのです。

確定拠出年金の税制優遇

掛金
  • 個人型の場合は全額所得控除となる
  • 企業型の掛金(企業拠出分)は課税されません。個人で拠出した分(マッチング拠出分)は全額所得控除となる
運用益
  • 運用益は課税されることはありません
  • 何度売買を行っても運用益は非課税
給付 老齢給付金 年金 公的年金等控除が適用(雑所得)
一時金 退職所得控除が適用(退職所得)
障害給付金 年金 課税されません(非課税)
一時金 課税されません(非課税)
死亡一時金 一時金 相続税の課税対象
  • 上記は「企業型」、「個人型」共通事項

公的年金等控除を使うタイミングと、老後のお金の使い道を考えよう

65歳以降は公的年金の受け取りで公的年金等控除の最低限の枠は使ってしまうことになるため、公的年金の受け取り開始を遅らせる「繰下受給」を選択するのも1つの方法です。繰下受給を選択した場合、1カ月に付き年金額は0.7%増えることになるのです。65歳で受け取れる金額を100%とすれば、66歳は108.4%、68歳は125.4%、70歳は142%、75歳だと184%の受け取り額になるのです。75歳まで遅らせれば184%になるのですから、かなりの運用益が付いたことになります。これも立派は運用と言い換えることができ、亡くなる(=受け取りが終了する)までその割合が継続するのです。人生100年時代、言い換えれば長生きのリスクに備える受け取り方法といえるでしょう。

この受け取り方法は、公的年金等控除を効率的に利用する方法、かつ公的年金の受け取り額を増やすことに特化した方法です。公的年金等控除などの活用にこだわらない、言い換えれば老後のライフスタイル(過ごし方)にフォーカスするなら、たとえば公的年金の受け取りと同時にiDeCoも受け取りを開始するのです。元気なうちに多額のキャッシュフローを生みだし、老後にやりたいことを行うのです。歳を重ねてから多額のキャッシュフローを生みだしても体がついていかず(=お金を使うイベントがなく)、預金残高が積み上がってしまうことになりかねないからです。公的年金等控除の利用だけではなく、老後を豊かに過ごすことも念頭に実際の受け取り方法は考えるべきなのです。

深野 康彦(ふかの やすひこ)氏

執筆者

深野 康彦(ふかの やすひこ)氏

有限会社ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー