【特集レポート】“踏み上げ”が期待できる銘柄とは?

日経平均株価は、9月以降大きく上昇しています。世界的に好調な景気指標に加えて、9月の重要イベントであったFRBによるバランスシートの圧縮開始が波乱なく通過し、NYダウが史上最高値を更新したことが追い風になっています。また、日本国内においても、9月18日に衆議院を解散し総選挙を行う方針であることが報じられましたが、選挙期間中の世論調査で与党が優勢であることが報じられると、アベノミクス継続期待から株価は一段と上昇し、10月13日には約21年ぶりとなる21,000円を回復しました。

投資部門別売買状況を見ると、9週連続で売り越しを続けていた外国人投資家が、9月4週目から買い越しに転じており、10月1週目の買い越し額は、6,575億円と今年に入って最大となっています。一方で、個人投資家は9月2週目から10月1週目まで4週連続で売り越しており、逆張り傾向が続いています。

○個人と海外投資家の買い越し金額の推移

  • 買い越し金額=買い金額-売り金額
  • 二市場合計の株式売買代金

(出典)東京証券取引所「投資部門別売買状況」

そのような中、東証が発表する信用売り残高を見てみると、9月22日時点で1兆1,077億円と、2008年8月以来約9年ぶりの高水準となっています。翌週の29日時点では9,928億円と若干減少していますが、これは9月末の株主優待権利付最終売買日を前に、価格変動リスクを回避しながら権利取りをする「つなぎ売り」の買い戻しによるものであり、直近の10月13日時点では1兆509億円に拡大しています。

また、信用倍率(信用買い残高 / 信用売り残高)で見ても、10月13日時点で2.46まで低下しており個人投資家の「売り」スタンスが強まっていると言えます。このような信用売り残高は、株高基調が続けば損失覚悟の買い戻しを誘発し更なる株高を招く可能性があるほか、株価が下落した際には利益確定の買い戻しにより株価を下支えする効果が期待できます。

○二市場合計の信用売り残高と信用倍率の推移

  • 信用倍率=信用買い残高 / 信用売り残高

(出典)東京証券取引所「信用取引現在残高」

今回、注目したいのは「信用売り残が多い銘柄」です。日経平均株価が上昇する中で、信用取引の売り残高が膨らんでいる銘柄をランキングにしてみました。下の表は、信用売り残が株価に及ぼすインパクトが大きい銘柄を探す目的で「(信用売り残高-信用買い残高)÷直近10日間の平均売買代金」という計算式で算出した数の大きい順に並べています。

○信用売り残の影響が大きいと考えられる銘柄

順位 コード 銘柄名 業種 この企業の特徴
1 8346 東邦銀行 銀行業 福島県福島市に本店を置く地方銀行。地域に密着した営業活動を展開する福島県のリーディングバンク。
2 7161 じもとホールディングス 銀行業 宮城・山形地盤の金融グループ。傘下のきらやか銀行と仙台銀行を中心に、銀行業務やクレジットカード業務等を行う。
3 8550 栃木銀行 銀行業 栃木地盤の地銀、埼玉などでも展開。2017年4月から3ヵ年の中期経営計画で、顧客基盤拡大や収益力強化に繋げるよう取り組んでいく。
4 8600 トモニホールディングス 銀行業 東部瀬戸内海圏に展開する広域金融グループ。傘下の3銀行が主力の銀行業務を行う。
5 7640 トップカルチャー 小売業 書籍等販売とCD・DVDレンタルショップを運営。書籍、文具、CD・DVDなどの販売とCD・DVDなどのレンタルをひとつの店舗内で扱う大規模複合店「蔦屋書店」を経営。
6 8544 京葉銀行 銀行業 千葉市に本店を置くトップクラスの第二地銀。千葉県千葉市に本店を置き、千葉県内を中心に100店舗以上の支店。預金量では第二地銀のトップクラス。
7 8613 丸三証券 証券商品先物 兜町発祥の中堅証券会社。現在は全国に約30店舗を展開する中堅証券会社。預かり資産は約2兆円。
8 3313 ブックオフコーポレーション 小売業 中古本などの総合リユース事業を運営。中古本・CD等の販売・買取を行う「BOOKOFF」を中心とする総合リユース事業を運営する。
9 8338 筑波銀行 銀行業 茨城県下第2位のリージョナルバンク。顧客が最初に相談したい銀行「First Call Bank(ファースト・コール・バンク)」を目指す。整理回収機構がトップの株主。
10 4617 中国塗料 化学 船舶用塗料大手。国内でトップシェアを持ち、世界でも大手4社に入る船舶用塗料を主力に、工業用塗料、コンテナ用塗料にも展開。
11 8207 テンアライド 小売業 天狗ブランドで外食事業を展開。セントラルキッチンの全面導入を始め、業界初の株式公開など、多方面で業界の新しい道を切り開いてきた居酒屋チェーンのパイオニア。
12 7955 クリナップ その他製造 厨房機器を中心とする住設機器メーカー大手。ステンレス流し台の製造販売から発展し、日本で初めてシステムキッチンを開発。
13 8388 阿波銀行 銀行業 徳島県徳島市に本店を置く、第一地銀の中位行で、徳島県内を中心に100店舗前後の支店と、100カ所を超える店舗外CD・ATMを展開する。
14 8360 山梨中央銀行 銀行業 山梨県内唯一の地方銀行。預金・貸出金残高は山梨県内で圧倒的なシェアを占める。自己資本比率は地銀の中で上位。 
15 8095 イワキ 卸売業 医薬品原料や化粧品原料などがメインの商社。医薬・FC(Fine Chemical)事業、HBC(Health & Beauty Care)事業、化学品事業、食品事業の4つの事業を展開。
16 9310 日本トランスシティ 倉庫運輸関連 愛知県四日市市に本社を置く倉庫運輸関連業者。物流関連事業として倉庫業、港湾運送業、国際複合輸送業等を営む。その他事業として不動産業などを営む。
17 8386 百十四銀行 銀行業 香川県高松市に本店を置く広域地方銀行。香川県内を中心に四国、本州等、広い地域に支店を展開する。
18 3608 TSIホールディングス 繊維製品 アパレル事業を運営する持株会社。アパレル事業を運営しており、主力ブランドは「ナノ・ユニバース」、「ナチュラルビューティーベーシック」など。
19 7105 三菱ロジスネクスト 輸送用機器 日本輸送機と三菱重工のフォークリフト事業部門が事業を統合して出来た、物流システムまで揃えたフォークリフトのフルラインメーカー。
20 8563 大東銀行 銀行業 福島県郡山市に本店を置く第二地銀。福島県を中心に50を超える店舗を展開。ブラジルのブラデスコ銀行と提携し、ブラジル向け送金サービスを提供。
  • 10月6日時点の「(信用売り残高-信用買い残高)÷直近10日間の平均売買代金」で算出
  • 直近10日間の平均売買代金が1,000万円以上
  • ETF、REITは除く
  • Quickリサーチネットのデータを元に松井証券作成

ランキングを見渡してみると、1位の東邦銀行、2位のじもとホールディングス、3位の栃木銀行、4位のトモニホールディングスといった地銀が多く入っており、上位20位のうち半数を占めています。多くの投資家は、地銀に対して悲観的な見方をしているのかもしれません。
また、5位の大型複合書店 『蔦屋書店』 を関東・信越地域で展開しているトップカルチャー、8位に書籍の販売や総合リユース事業を運営しているブックオフコーポレーション、11位に天狗ブランドで外食事業を展開しているテンアライドといった小売業もランクインしています。これらの銘柄には、株主優待目的で足元の業績からは割高な水準まで買われている銘柄もあり、信用売りが膨らんでいる可能性があります。

これらの銘柄は、今の株価が「高過ぎる」とみていることが多いことを示していますが、足元の流動性と比較して信用売り残が多いことから、将来的な買い戻しが株価にプラスの影響を与える可能性が高いと言えます。今回取り上げた銘柄以外にも、同様の効果が期待できる銘柄があると思いますので、個別銘柄の信用倍率など様々な切り口で銘柄を探してみてはいかがでしょうか。

結論!

① 信用売り残高の積み上がりで買い戻しによる一段の株高期待も
② 株価が調整した際にも買い戻しによる下支え効果が期待できる
③ 地銀に信用売り残が多い銘柄が目立つ

松井証券シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎

2001年、松井証券に入社。マーケティング部を経て現職。
ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、投資家動向にも詳しい。

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