二極化が進んだ株式市場

二極化が進んだ株式市場

7月の株式市場は、引き続き米中間の貿易紛争に一喜一憂する展開となりました。当初は、ドナルド・トランプ大統領が交渉術の一環として、中国に対する制裁関税案を発表したと見る向きもありましたが、その後の貿易協議においても交渉がまとまることはなく、7月6日にはそれぞれ340億ドル相当の輸入品に対する追加関税を発動するに至りました。これにより、日経平均株価も前日の5日に一時21,500円を割り込むなど大きく下落しましたが、その後の中国側の対抗策が抑制的であったことや、景気減速を受けた中国政府が、流動性の拡大や財政出動の拡大など景気刺激策に動いたことで、月末にかけて株価は持ち直す動きとなっています。

投資部門別売買動向をみると、マーケットを大きく動かす海外投資家が、トランプ政権の貿易政策に合わせて売り買いが変わり、方向感が定まっていないことがわかります。今後も、米国で11月に行われる中間選挙に向けて、関税等で強硬な姿勢を示すことも考えられ、読み辛いマーケットが続く可能性が高いと言えそうです。

投資部門別売買動向推移(個人・海外投資家)

  • 東京証券取引所発表の投資部門別売買状況(株式)データから松井証券作成。2018年7月26日時点。

業種により大きく異なる値動き

改めて、米中貿易紛争がどのような経過をたどってきたのか、整理したものが下表になります。

【米中貿易紛争の推移】

3月22日 【米】中国の知的財産侵害に対する制裁措置の大統領令に署名
3月23日 【米】中国などの鉄鋼とアルミに輸入制限を発動
4月2日 【中】鉄鋼輸入制限に対する報復関税を発動
4月3日 【米】中国の知的財産侵害に対する制裁関税の原案発表
4月4日 【中】制裁関税案に対する報復を表明
6月15日 【米】中国の知的財産侵害に対する制裁関税を再表明
6月15日 【中】制裁関税案に対する報復を表明
6月18日 【米】制裁関税の対象が最大4,500億ドル規模と発表
7月6日 【米・中】340億ドル分の追加関税を発動

こうした状況を受け、今年の株式市場は業種間で値動きが大きく異なっています。下のグラフは東証1部の33業種別株価指数のうち、年初からのパフォーマンスが良好な「電気・ガス業」「医薬品」「水産」 業と、厳しい値動きが続いている「海運」「非鉄金属」「鉄鋼」業を比較したものです。

【業種別指数の推移(2018年1月以降)】

投資部門別売買動向推移(個人・海外投資家)

  • 市場データから松井証券作成。2018年7月26日時点。

米中の貿易紛争では、鉄鋼やアルミニウムといった分野が真っ先に槍玉に挙げられました。株式市場ではこのような動きを素直に反映し、関連する「海運」「非鉄金属」「鉄鋼」といった業種が大きく下落しています。

一方、米中貿易紛争とは直接的には影響を受けづらい「電気・ガス業」「医薬品」「水産」といった業種は堅調な値動きを続けています。こちらは、トランプ政権の貿易政策を警戒した資金が流れ込んでいることが、株価を支えているのです。

今後求められる投資戦略は?

このように株式市場にすでに大きく影響を与えているトランプ大統領の貿易政策ですが、前述したとおり米国では中間選挙が近づいており、中国との争いは政治的なパフォーマンスにつながるという側面があります。また、米国経済が好調なため、貿易戦争による悪影響を受けづらく、トランプ大統領がちらつかせている追加関税の影響を受ける業種は広がっていくものと予想されます。

最近では、中国のハイテク企業の競争力強化を狙った政策である「中国製造2025」の撤回を要求しましたが、これにより機械や電気機器といった業種が大きな影響を受け始める可能性があります。

一方で、中国側はアメリカ側の強硬姿勢を受け、これまで引き締め的であった金融政策の変更を図るなど、落ち込みが目立つ業種への刺激策を打ち出し始めており、これまで下落基調にあるセクターが持ち直す可能性もあります。

いずれにせよ、今後もトランプ政権の貿易政策の中身をよく確認し、買いから入る業種、売りから入る業種を見極める必要があるといえるでしょう。

松井証券シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎

2001年、松井証券に入社。マーケティング部を経て現職。
ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、投資家動向にも詳しい。

リスクおよび手数料などについて

  • 本レポートは、当社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、その情報の正確性および完全性を保証するものではありません。
  • 本レポートは、お客様への情報提供を唯一の目的としたものであり、投資勧誘を目的として作成したものではありません。また、個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。
  • 投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
  • 本レポートに掲載された情報の使用による結果について、当社が責任を負うものではありません。
  • 本レポートに掲載された意見や予測等は、レポート作成時点の判断であり、今後、予告なしに変更されることがあります。
  • 本レポートの一切の著作権は当社に帰属します。いかなる目的であれ、無断複製または配布等を行わないようにお願いいたします。