為替ヘッジとは?「あり」「なし」どっちがいい?初心者向けの判断基準を解説

2025/11/28(更新)

為替ヘッジとは、為替レートの変動によって外貨建て資産の価値が変わってしまうリスクを避けるための手法です。海外の株式や債券に投資する投資信託(ファンド)などでは、「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」のコースが用意されている場合があります。

為替ヘッジ「あり」と「なし」では、それぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、投資目的やリスク許容度に合わせて選びましょう。

本記事では、投資信託における為替ヘッジとは何か、また為替ヘッジ「あり」と「なし」はそれぞれどのような人に向いているのかなどを、初心者向けに解説します。

為替ヘッジとは?

為替ヘッジとは、外貨建て資産に投資するときに、為替変動によるリスクを回避する方法のことを指します。

外国株式や外国債を投資対象資産とする投資信託では、米ドルやユーロなどの外貨を通じて運用を行うのが一般的です。そのため、投資対象の価格変動がなくても、為替変動によって投資信託の価値自体が変わることもあります。

例えば、1ドル=150円のときに1,000ドルの米ドル建て資産(日本円で15万円相当)を購入したとしましょう。その後、資産の価格は変わらないまま、為替レートが1ドル=160円になった場合、資産を円に戻すと16万円になり、1万円の利益を得られます。反対に、為替レートが1ドル=140円の円高になった場合、資産を円に戻すと14万円になり、1万円の損失(為替差損)が発生します。

為替ヘッジでは将来の為替レートをあらかじめ決めておく「為替予約」という取引が用いられます。先程の例で言えば、1年後に1ドル=150円で交換する」と約束をしておくことで、1年後も投資信託の基準価額は150万円となり、為替変動による基準価額の下落を抑えることができるというイメージです。

ただし、為替ヘッジをしたからといって為替のリスクをゼロにできる訳ではありません。為替ヘッジのデメリットについても後ほど解説します。

為替変動リスクとは

為替変動リスクとは、円と外貨を交換する際の為替レートが変動することで、外貨建て資産の円換算での価値が変動するリスクのことです。

例えば、1ドル=150円のときに1,000ドルの米ドル建て資産(日本円で15万円相当)を購入したとしましょう。その後、資産の価格は変わらないまま、為替レートが1ドル=160円になった場合、資産を円に戻すと16万円になり、1万円の利益を得られます。反対に、為替レートが1ドル=140円の円高になった場合、資産を円に戻すと14万円になり、1万円の損失(為替差損)が発生します。

このように、外貨建ての資産に投資する場合、投資の成果は投資対象である株式や債券そのものの値動きだけでなく、為替相場の動きにも左右されます。

【関連リンク】投信運用で為替リスクはどう考えるべきか?| 海老澤界の投信コラム

為替ヘッジ「あり」と「なし」どっちがいい?

それぞれのメリット・デメリットなどを把握した上で、自分の投資目的やリスク許容度に合わせて為替ヘッジの有無を選びましょう。

ヘッジあり ヘッジなし
メリット ・円高でも資産が減りにくい
・投資先の値動きに集中できる
・円安になればリターン増
・ヘッジコストがかからない
デメリット ・ヘッジコストが発生する
・円安メリットを得られない
・円高になると資産価値が下がる
・運用成績が為替変動の影響を受ける
向いている人 ・為替変動の影響を抑えたい人
・安定的に資産を増やしたい人
・円安を期待している人
・為替変動リスクを許容してリターンを狙う人

為替ヘッジ「あり」のメリットとデメリット

メリット

為替ヘッジ「あり」のメリットは、為替変動による損失を抑えられることです。為替相場の影響を抑えられるため、主に投資資産の価格変動によって損益が決まります。結果として、安定的な運用ができ、運用の目標を達成しやすくなるでしょう。

デメリット

為替ヘッジ「あり」には、主に2つのデメリットがあります。

一つは、「ヘッジコスト」と呼ばれる費用(購入時や保有中にかかる信託報酬等とは別にかかるコスト)が発生する点です。為替ヘッジを行うためにはコストがかかるため、為替ヘッジ「なし」の場合と比べて運用成績が下がる可能性があります。

このヘッジコストは、主に2国間の短期金利差によって決まります。例えば、日本よりも短期金利の高い米国などの国の資産に対して為替ヘッジをする場合、日本と米国の金利差分をヘッジコストとして支払う必要があります。

反対に、投資先の国の短期金利が日本を下回る場合は、その差分を収益(ヘッジプレミアム)として受け取れます。しかし、日本円は他国の通貨よりも低金利であるケースが多いため、為替ヘッジ「あり」にした場合は、費用が発生することが多いと考えておくのが良いでしょう。

ヘッジコストは金利差によって変動するため、日本や諸外国の金利動向には注目しておく必要があります。また、このコストは信託財産(投資信託が保有している資産のこと)から差し引かれます。そのため、ヘッジコストが高くなると基準価額や将来受け取る分配金にマイナスの影響を与える点も考慮しなくてはなりません。

【関連リンク】信託報酬の目安はどのくらい?低いほうがいい理由や計算方法

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もう一つのデメリットは、円安が進んだ際の利益を得られない点です。為替ヘッジは円高ドル安などの円高方向の為替相場の変動リスクを抑えられる反面、円安方向に為替が変動した際の利益を放棄することになります。為替ヘッジ「なし」を選んだ場合と比べてみると、円安の際にリターンが少なくなる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。

為替ヘッジ「あり」の投資信託がおすすめのケース

為替ヘッジ「あり」の投資信託は、為替変動によるリスクを抑えたい方にはおすすめです。ヘッジコストを支払ってでも、運用の安定性を高めたい場合に向いているでしょう。円高による資産の目減りを抑えつつ海外資産に投資できるため、これから為替相場が円高に振れると考えている場合にも適しています。

また短期的な運用が中心であれば、為替ヘッジをしてもヘッジコストが積み上がりにくいため、為替ヘッジ「あり」を選んでも良いかもしれません。

為替ヘッジ「なし」のメリットとデメリット

メリット

ヘッジコストがかからない点が、為替ヘッジ「なし」を選ぶメリットです。為替ヘッジをしなければ、不要なコストを抑えながら、外国資産の価格変動と為替変動によるリターンの両方を受け取れる可能性があるため、為替ヘッジ「あり」と比べて大きなリターンを得られる場合もあるでしょう。

デメリット

為替ヘッジをしていない分、為替変動による損失が発生する可能性が高まる点がデメリットです。予想に反して円高が進んだ場合は、投資信託の基準価額に影響が出る可能性があるでしょう。

為替ヘッジ「なし」の投資信託がおすすめのケース

為替ヘッジ「なし」の投資信託は、為替変動によるリスクを許容できる方や、これから円安になると考えている場合に向いています。為替ヘッジ「あり」と比べると為替変動によるリスクは大きくなりますが、その分大きなリターンを得られる可能性が大きくなります。

また、長期的な運用をする予定なら、為替ヘッジ「なし」を選んでも良いでしょう。長期投資におけるヘッジコストの積み重ねを避けるという理由や、円安・円高は長期間で平均化(ならし効果)されるとの考え方もあるからです。

NISA(少額投資非課税制度)を活用した資産形成では、為替ヘッジ「なし」の商品が積立設定金額の上位に入ることもあり、低コストかつ、短期的な為替の影響を受けながらも長期的なリターンを取りにいく、為替ヘッジ「なし」が選ばれている面もあると考えられます。

ただし、NISAであっても、老後資金を堅実に積み立てたい人や、大きな価格変動リスクを避けたい人は、為替ヘッジ「あり」を検討するのも一つの方法ですので、ご自身の投資戦略に合った商品を選択してください。

【関連リンク】NISAの始め方は?口座開設から投資商品の選び方、投資金額の決め方など基本を解説

どんな投資信託が人気か、NISAではどの商品が選ばれているかなどについては、以下ページよりランキングをチェックしてみてください。

【関連リンク】NISA銘柄ランキング(投資信託)

為替ヘッジの有無は相場の見通しや投資スタイル次第で決めよう

為替ヘッジ「あり」の投資信託を選べば、円高や円安の影響を抑えながら、海外資産を投資対象とする銘柄に投資できます。一方、為替ヘッジ「なし」を選択すれば、ヘッジコストを避けられ、円安局面では為替差益も期待できます。

どちらを選ぶかは、投資家個人の相場見通しや投資スタイル、リスク許容度、資産運用の目標額などによって異なります。自身の投資方針や目標をよく考慮したうえで、為替ヘッジの有無を決定し、長期的な視点で投資を行いましょう。

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松井証券WEBサイト編集チーム

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