エリオット波動とは?基本原則から分析方法まで解説!

2022/8/12

チャート上の値動きに一定の規則性を見出す相場分析の手法が「エリオット波動理論」です。数あるチャート分析の理論の中でもポピュラーな手法のひとつですが、FX未経験者には聞き馴染みがないかもしれません。

エリオット波動とはどのような理論なのか、また、具体的な取引でどのように活用するのかまで理解することで、FXで利益を狙う上で重要な相場の予測やエントリーポイントの判断に役立てることができます。本記事では、エリオット波動の基本的な原則や実際の分析方法について詳しく解説しています。

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エリオット波動とは?

エリオット波動は相場の方向性を予測するのに役立つ指標です。理論の概要や、理論の核となる3つの原則について解説します。

エリオット波動はチャート理論の一つ

エリオット波動はアメリカの会計士であるラルフ・ネルソン・エリオットが確立した相場分析の理論です。元々は株式市場の分析から生まれ、世界恐慌やブラックマンデーを的中させたことでも注目を集めました。現在では為替市場の分析にも活用されています。

エリオット波動の理論は、一言で表すと「相場波動は5つの上昇波と3つの下降波を基本としてひとつの周期が成り立っている」とする考え方です。FXにおける相場分析の方法には、相場の方向性を探るのに役立つ「トレンド系」の指標や過熱感を分析するのに役立つ「オシレーター系」の指標があります。エリオット波動は、トレンド系の指標に分類できます。

波動の規模は「メヌエット」と呼ばれる数日単位のものから、「グランドスーパーサイクル」と呼ばれる100年単位のものや「ミレニアムサイクル」と呼ばれる1000年単位で形成されるものまで、幅広く存在しています。

波動はさまざまな時間軸で発見できるため、入れ子構造のような形でそれぞれの波の中に、さらに小さな5つの波や3つの波が存在しているのが特徴です。FXのチャートには「日足」「週足」といった時間軸がありますが、どのような時間軸で見ても波動を確認できる可能性があります。

【関連ページ】FXのテクニカル分析とは?代表的な6つの分析指標と注意点

エリオット波動の基本形は推進5波・修正3波

エリオット波動は、トレンド(相場の方向性)を押し上げる5つの「推進波」と、トレンドに逆らうように動く3つの「修正波」から成り立っています。「上げ→下げ→上げ→下げ→上げ」の順で上昇し、その後に「下げ→上げ→下げ」の順で下降する「上昇5波→下降3波」のパターンとなるのが特徴です。ただしFXでは、ある通貨の上昇は別の通貨の下落を意味するため、「下降5波→上昇3波」といった逆のパターンを示すこともあります。修正3波が終了すると、推進1波に戻ります。

1・3・5波は大きく動く「アクション波」、2・4波は流れを一時的に中断したり押し戻したりする「リアクション波」と呼ばれることもあります。3波が最も大きなトレンドを形成するというのが、エリオット波動の基本的な動きです。

また、エリオット波動には以下の3原則があります。これらの原則を満たしているときにはエリオット波動が成立する可能性があるため、注目しておきましょう。ただし原則を満たしていたとしても必ずエリオット波動が成立するとは限らないため、注意が必要です。

  • 推進波において3波は1波、3波、5波の中で最も短くはならない
  • 推進波の中で2波が1波よりも安値をつけることはない
  • 推進波の中で4波が1波の高値を下回ることはない

エリオット波動の「エクステンション」

実際のチャート上ではエリオット波動のパターンが崩れているものや、波の数が違うものがあります。この現象はエリオット波動の変形型として「エクステンション」と呼ばれています。

エクステンションの例で多いのは、第3波や第5波が長くなるケースです。いくつもの細かい波が連なっており、一見エリオット波動が成立していないように見える相場でも、3つの原則に照らし合わせて分析すると、エクステンションが成立しているという場合があります。

エリオット波動を用いた分析方法

エリオット波動を活用することで相場状況の的確な把握や、適切なエントリーポイントの発見につなげることが可能です。

エリオット波動理論の活用法

エリオット波動理論を活用したトレード方法の一つとして有効なのは「3波に乗る」ことです。3波は全5波の中で最も値幅が大きくなる傾向があるため、利益を狙いやすいとされています。2波の途中、1波の高値を超えたタイミングでエントリーし、3波の終盤で決済するといった手順をとります。

ただし、このような手法が有効なのは「2波が1波の安値を更新していない」というエリオット波動の基本原則を満たしていることが前提となるため注意が必要です。

また「4波の波に乗る」のも一つの方法です。4波で3波と逆サイドの注文を行い、5波の推進波が来る前に決済することで、相場の下落局面でも利益を狙うことができるようになります。ただし、4波は3波と比べると値幅が小さくなるため、素早い決済の判断が求められることになります。 

エリオット波動理論の応用

エリオット波動理論と組み合わせて活用すると相場予測の精度を高められる指標の一つとして「フィボナッチリトレースメント」と呼ばれるテクニカル指標があります。

「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55・・・」のように、どの数字も「前の2つの数字を足した数字」という規則で並ぶ数列を「フィボナッチ数列」といいます。フィボナッチ数列のそれぞれの数字を一つ後ろの数字で割り算すると、次のように途中から「0.618」という数値が並びます。

  • 1÷1=1
  • 1÷2=0.5
  • 2÷3=0.67
  • 3÷5=0.6
  • 5÷8=0.625
  • 8÷13=0.615
  • 13÷21=0.619
  • 21÷34=0.618
  • 34÷55=0.618
  • 55÷89=0.618

2つ後ろの数字で割った場合には、途中から「0.382」となり、3つ後ろの数字で割ると途中から「0.236」となります。1つ前の数字で割ったときには途中から「1.618」となる、これらの比率をフィボナッチ比率と呼びます。

フィボナッチリトレースメントは高値と安値の値幅にフォボナッチ比率をかけて表したものです。一般的にFX会社が提供している取引ツールを使用すると、「23.6%」、「38.2%」、「50.0%」、「61.8%」、「78.6%」の比率に合わせてチャート上に自動でラインが引かれます。

とくに「23.6%」、「38.2%」、「61.8%」のラインでは相場が反発や反落する可能性が高いとされています。そのため、フィボナッチリトレースメントとエリオット波動理論を合わせて用いれば、推進2波や推進4波の戻り幅を予測する際の判断材料が増えることになるのです。

ただし、これらのラインで必ず反発や反落するというわけではなく、一気にトレンドが変わるケースもあるため注意しましょう。

【関連ページ】フィボナッチリトレースメントとは?FXとフィボナッチ比率の関係と使い方を解説!

エリオット波動は一見シンプルだが奥が深い指標

上下するチャートと棒グラフ

エリオット波動は3つの原則に基づいて形成される指標です。仕組みを理解すれば、トレンドの予測やエントリーポイントの判断に役立ちます。大小さまざまな波動が存在するため、どのような時間軸でも分析できるのもメリットです。

ただし、エリオット波動には、理論のシンプルさゆえに、同じ根拠に基づいてさまざまなシナリオが作成できてしまうという難しさがあります。また、「エクステンション」と呼ばれる変則的な波動が形成されるケースや、原則を満たしていてもエリオット波動が成立しないケースもあります。

エリオット波動の提唱者、ラルフ・ネルソン・エリオット氏は1871年7月28日~1948年1月15日の時代を生きた人です。当時は現在のようなイノベーションによる機器はなかったため、波動の元となる価格展開においてはその点は考慮する必要があるでしょう。
しかし、投資する人の心理を知る手掛かりとして「波動」を参考にすることは有益です。

FX初心者の場合、チャートのどの部分が何波に当たるのかを即座に判断できないこともあると思います。FXで利益を狙うためには、エリオット波動だけではなく、他のテクニカル指標をいくつか組み合わせて、結果に結びついた相性の良いものを絞り込んでいくとよいでしょう。ぜひ、いろいろなテクニカル指標と合わせて用いてみてください。

<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。

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