NISAで税金がかかることはある?課税対象になる条件やよくある質問

2023/10/27

NISAは投資で得た利益が非課税となる制度です。手元により多くの利益を残すことができ、効率的に資産形成できるのが魅力といえるでしょう。

しかし、税金面で具体的にどのくらいのメリットがある制度なのか、本当に課税されることはないのか、気になっている人もいるのではないでしょうか。

本記事ではNISAにおける税金の扱いや、税金がかかるケースなどを詳しく解説します。

NISAを使った投資に税金はかかる?

通常、株式や投資信託などから得られた売却益や分配金・配当金には20.315%(内訳は所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税金がかかります。

しかしNISA制度を使えば、制度の範囲内での取引については利益や配当金が非課税になります。現行のNISA制度では一般NISAなら毎年120万円、つみたてNISAなら毎年40万円といった「非課税投資枠」が設けられており、この金額の範囲内であれば、購入した金融商品の売却益や分配金・配当金は課税されません。例えば100万円で購入した株式を売却して10万円の利益を得た場合、課税口座での取引であればおおよそ2万円の税金を支払う必要があります。しかし一般NISAでの取引であれば、100万円で購入した金融商品の売却益に対しては課税されないため、利益分の10万円をそのまま手元に残すことができるのです。

非課税で運用できる期間は、一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間、ジュニアNISAは5年間とそれぞれ決められています。

  • ジュニアNISA新規申込の書類請求手続きは9/19(火)に受付を終了しました。

2024年以降は新しい制度に変わり、成長投資枠(現行NISAの一般NISA相当)では毎年240万円、つみたて投資枠(現行NISAのつみたてNISA相当)では120万円まで投資が可能となります。非課税で運用できる期間も無期限となるため、長く運用を続けるほど非課税のメリットは大きく感じられるでしょう。

NISA口座の取引で課税対象となるケース

原則として、NISA口座で購入した金融商品から得た利益に対しては課税されません。ただし、以下のケースに当てはまる場合は、課税対象となるため注意しましょう。

配当金を株式数比例配分方式以外で受け取った場合

NISA口座で購入した株式の配当金や投資信託・ETFの分配金の受取方式は自分で選択しなければなりません。受け取り方法によっては課税されることがあるため注意しましょう。

NISA口座で非課税となるのは、株式数比例配分方式を選択した場合のみです。株式数比例配分方式とは、NISA口座を開設している証券会社の口座で配当金を受け取る方法のことを指します。

一方、登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式(配当金振込指定)・配当金領収書受領方式を選択した場合は、課税対象となることを覚えておきましょう。登録配当金受領口座方式は、保有する全ての株式の配当金を指定した1箇所の預金口座で受け取る方法です。個別銘柄指定方式(配当金振込指定)は、届け出をした銘柄の配当金のみを指定した金融機関の口座で受け取る方法を指します。配当金領収書受領方式とは、指定金融機関の窓口で配当金領収書と引き換えに配当金を受け取る方法です。

詳しくは以下の記事からご確認ください。

NISAの配当金は非課税になる?非課税で受け取るための方法

非課税期間が終了し、課税口座へ払い出した場合

保有銘柄の非課税期間が終了する際に課税口座への払い出しを選択した場合は、移管後の取引が課税対象となります。 この時に注意しなければならないのは、課税口座に払出しされた時点の時価で取得価格が計算される点です。損失が出ている状態で非課税期間が終了し、課税口座に払い出された場合を例に挙げましょう。

NISA口座で、1000円で購入した株式が800円に値下がりしたタイミングで課税口座に払い出されたとします。その後に900円で売却すると、もともと900円(売却額)-1000円(買付金額)で100円損をしているにもかかわらず、800円が買付金額として計算されるため、100円の利益が出ていることとなり課税されてしまうのです。

現行NISAでの運用を続ける人は、非課税期間の終了を待つのではなく、ある程度値上がりしたタイミングでの売却も視野に入れておくと良いでしょう。

【よくあるご質問】【NISA】ロールオーバーや課税口座へ移管した銘柄の平均取得単価や評価損益が変わっています。

ジュニアNISAの18歳未満の払い出し

ジュニアNISAは、子供や孫の将来に向けて着実な資産形成を目的として作られた制度です、そのため、原則として口座開設者が18歳になるまでは、親権者であっても口座内の資金を自由に引き出せない仕組みになっています。もし18歳未満で払い出しを希望する場合には、過去の利益に対してもさかのぼって課税されるうえ、ジュニアNISA口座が廃止になるため、注意しましょう。

ただし災害などやむを得ない事情がある場合は、例外的に非課税での払い出しが可能になります。また、2024年以降はジュニアNISAが廃止されることに伴い、18歳未満での払い出しも非課税となります。

【よくあるご質問】ジュニアNISA口座の払出し制限とは何ですか。

NISAと税金に関するよくある質問

NISAと税金に関して、疑問が生じやすいポイントをまとめました。気になる点があれば、口座開設する前に解消しておきましょう。

NISAは確定申告が必要となる?

NISAで購入した金融商品から得た利益については、原則確定申告する必要はありません。確定申告は税金が発生する場合に必要な手続きだからです。

NISA以外の課税口座で購入した金融商品から得た利益は、確定申告が必要な場合があります。また、2023年中に口座開設者が18歳未満でジュニアNISAの口座から資金を引き出す場合や、配当金の受取方法として株式数比例配分方式以外を選択した場合も課税対象となります。

【関連ページ】NISAは確定申告が必要?非課税となる条件や気を付けるべきポイント

NISAで非課税になる利益に上限はある?

非課税投資枠の範囲内で購入した金融商品から得た利益については、その金額にかかわらず非課税となります。

例えば、一般NISAで100万円分の商品を購入し、200万円の利益を得たとしましょう。その場合、利益は非課税投資枠の上限120万円を超えていますが、買付金額は非課税投資枠の範囲内に収まっているので課税されません。

NISAは税金対策になる?

NISAは非課税投資枠の範囲内での投資に留まる限り、そこから得た利益については課税されません。本来、投資で得た利益には20.315%の税金が発生するため、税金面でとても魅力的な仕組みといえるでしょう。

ただし、iDeCo(個人型確定拠出年金)のように、拠出した金額が所得から控除されることはありません。 また、NISA口座で生じた損失は税務上ないものとされるため、損益通算(同一年の利益と損失を相殺し、課税対象額を減らすこと)や繰越控除(その年の譲渡益から控除しきれなかった損失を最大3年間にわたって繰り越すことで課税対象額を減らすこと)の対象外です。

運用状況によっては税制上の優遇を受けられない可能性もあるため、課税口座と併用することも視野に入れると良いでしょう。

NISAは非課税期間(5年)が終了したらどうなる?

先述のとおり、現行NISAは非課税期間終了時に、課税口座へ移行して運用を継続するか、売却するかを選択する必要があります。課税口座へ移管した後に発生した売却益や配当金(分配金)については課税対象となるため、注意しましょう。

非課税で運用できるのは一般NISAなら5年、つみたてNISAなら20年です。その期間を超えても運用を続ける場合は課税口座に移管して運用を続けることになるため、実際に買付けた金額ではなく取得価格で再計算されます。前述のように価格の動きによっては課税される可能性がありますので注意してください。

なお、2024年以降は非課税期間が無期限になるため、購入した商品の合計が非課税保有限度額の1,800万円以下であれば、NISA口座での運用を続けている限り、基本的に課税されることはありません。

【関連ページ】NISA制度が恒久化?旧NISAからの変更点と活用ポイント

【関連ページ】2024年度からの新しいNISA制度について

NISAは税金面で大きなメリットがある制度

NISAは一定範囲内であれば投資から得た利益に課税されないため、税金面で大きなメリットがある制度といえます。非課税投資枠の範囲内で投資していれば、利益を出していても課税されないので有効に活用しましょう。ただし非課税期間終了後も運用を継続する場合は課税口座へ払い出されるため、税金がかかる可能性があります。確定申告の必要があるか、忘れずに確認しましょう。

なお、2024年から始まる新NISAでは非課税期間が無制限となるため、NISA口座の非課税保有限度額の範囲内で保有していれば、課税されることはありません。年間の非課税投資枠自体も現行NISAから格段に広がるため、まだ口座開設が済んでいない人はこの機会に検討してみてください。

<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。